2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子により生成されるDNA損傷と変異誘発メカニズムの解析
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23710084
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
石野 孔祐 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (60584878)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | DNA付加体 / 突然変異 / ナノマテリアル / 酸化ストレス / LC-MS/MS |
Research Abstract |
ナノマテリアルの気管内への投与により誘発されるマウス肺の突然変異を引き起こす要因として、酸化ストレスの関与が疑われた。本研究では、ナノマテリアル(多層カーボンナノチューブ、マグネタイトなど)への曝露によりマウスの肺で酸化的DNA損傷が生成されるかどうか、液体クロマトグラフィー-タンデム型質量分析計(LC-MS/MS)を用いて検討した。その結果、8-オキソ-2’-デオキシグアノシン(8-oxo-dG)やヘプタノンエテノ付加体などのDNA付加体が、ナノマテリアル非投与群に比べて、投与群の肺で有意に増加していることがわかった。しかしながら、生体内で生成された8-oxo-dGは複数の修復機構によりすみやかに除去されることから突然変異にはほとんど関わらないと考えられている。一方、ナノマテリアルにより特異的にマウスの肺に誘発されるG:C->C:G変異スペクトルは、酸化ストレスによっても引き起こされるとの報告がなされている。そこで、in vitro でG:C->C:G変異を誘発する酸化的DNA損傷、グアニジノヒダントイン(Gh)およびスピロイミノジヒダントイン(Sp)が、ナノマテリアル投与マウスの肺において生成されるかどうかを、それぞれの標準物質を調製し、LC-MS/MSを用い検討したが、GhおよびSpともに検出されなかった。G:C->C:G変異を引き起こす酸化的DNA損傷は、他にもオキサゾロンなどがあるが、標準物質の合成が困難であったためにまずGhとSpについて調べた経緯がある。次年度以降は、in vivoでの抗酸化剤の変異スペクトルへの影響を検討することに加え、GhおよびSp以外のG:C->C:Gを誘発するDNA付加体の探索を続ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、LC-MS/MSを用いたGhおよびSpの分析系を確立でき、実際にin vivoのサンプルを解析するに至った。残念ながら、GhとSpはナノマテリアル投与マウスの肺から検出されなかったが、次の課題に向けて準備を進めているところであるため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画から大きな変更はない。一方、ナノマテリアルにより誘発される突然変異に関係する要因を探索する上で、特定のDNA付加体を標的にするだけでなく、未知の付加体も対象に含み、網羅的にDNA付加体を解析する手法を取り入れる必要性が感じられる。それについても、現在、分析系を確立しつつある。より多くの付加体を同時に検出し、その付加体を生成する要因を推定することで、ナノマテリアルの遺伝毒性の原因を突き止めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の使途については概ね研究計画調書の通りとなる予定である。成果発表に伴う旅費等も大きな変更は無い。
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Research Products
(4 results)