2011 Fiscal Year Research-status Report
糸状性微生物の制御による廃水処理施設における固液分離障害とリン除去悪化の解消
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23710087
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
新田見 匡 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究教員 (20377089)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 環境技術 / 微生物 / 土木環境システム / バイオリアクター / 化学工学 / 国際情報交流 オーストラリア |
Research Abstract |
本研究は糸状性微生物群の増殖制御方法を明らかにし、固液分離障害とリン・窒素(栄養塩)除去悪化を解消する廃水処理技術の研究基盤を確立することが目的である。 計画した研究項目は、(1)糸状性微生物群が固液分離と栄養塩除去性能に及ぼす影響の定量的把握、(2)糸状性微生物群の代謝の解析、(3)代謝情報に基づき糸状性微生物群の増殖を一定量以下に制御する方法の確立、(4)固液分離に適した膜の開発、の4つであった。 糸状性微生物群の定量とその固液分離、栄養塩除去性能との関係の解明を目的として、都市下水処理施設4ヶ所を対象に、延べ30の反応槽から、夏と冬の2回にわたり活性汚泥のサンプルを採取した。14種類のDNAプローブを用いたFISH法により、採取した活性汚泥サンプル中の各種糸状性微生物量の多少を調べた。FISH実験の結果と活性汚泥を採取したときの各下水処理施設の固液分離性能のデータとを照合した結果、固液分離の悪化している反応槽では、Chloroflexi 門に属する糸状性微生物が多く生息する傾向があると分かった。 糸状性微生物群の増殖制御方法を確立するため、上記の下水処理施設4ヶ所の反応槽の構成と、FISH法で検出した各種糸状性微生物群の多少との関係を調べた。その結果、反応槽の構成により増殖を制御できる糸状性微生物(Proteobacteria門に属す糸状性微生物など)が多数存在することを確認した。しかし一方、固液分離障害との関係がみられたChloroflexi 門に属する糸状性微生物は、反応槽の構成のみでは増殖制御が困難であることが予想された。 糸状性微生物群の固液分離に適した膜の開発を目的として、PTFE平膜の開発を行った。膜の細孔径や表面の疎水性を変えて、活性汚泥の固液分離実験を行うことにより、固液分離に伴う汚染の少ない膜を開発することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初に計画した項目、「(1)糸状性微生物群が固液分離と栄養塩除去性能に及ぼす影響の定量的把握」においては、固液分離の悪化に影響を与える糸状性微生物の候補を特定するに至った。特定した糸状性微生物群の代謝の解析(研究項目(2))については、当初の計画より研究が遅れているものの、その増殖を一定量以下に制御する方法の確立(研究項目(3))については、研究実績の概要に示したとおり下水処理施設の反応槽の構成と糸状性微生物群の多少との関係について研究を進めている。また予定よりも早く、実験室規模の反応槽の運転を開始しており、槽内に生息する糸状性微生物量の増減から、増殖制御に有効な運転条件を明らかにするための実験を進めている。さらに活性汚泥の固液分離膜の開発(研究項目(4))においては、膜の細孔径や表面の親・疎水性を操作することにより、既存の膜よりも低ファウリング性に優れた膜の開発に既に成功している。以上4点の研究項目の進捗を総合的に判断した結果、おおむね計画通り順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
・下水処理施設において固液分離の悪化との関係がみられたChloroflexi 門に属する糸状性微生物、および栄養塩除去性能に影響を及ぼす糸状性微生物のDNA塩基配列情報を取得し、各種廃水処理施設における存在量を定量的に把握する手法の開発を行う。・Chloroflexi 門に属する糸状性微生物群および栄養塩除去性能に影響を及ぼす糸状性微生物について、種々の環境条件における増殖速度や代謝活性を調べる。得られた結果から同微生物群の増殖や代謝活性を制御するために必要な環境条件を明らかにする。・Chloroflexi 門に属する糸状性微生物および栄養塩除去性能に影響を及ぼす糸状性微生物の増殖抑制に効果のありそうな代謝情報や下水処理施設の運転条件に基づいて、実験室規模の廃水処理反応槽の運転を行い、糸状性微生物の増殖が制御可能となる条件を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は活性汚泥からChloroflexi 門に属する糸状性微生物群を単離・培養し、その増殖速度や代謝活性を調べるため、マイクロマニピュレーションによる単離、滅菌廃水を培地とした集積培養、を行う計画である。今年度に購入を予定していたマイクロマニピュレーションシステムおよび倒立型ルーチン顕微鏡(総額150-200万円程度)は、上記の実験計画の遂行の遅れにより、次年度に購入することに変更した。今年度の「収支状況報告書」において生じた残高(次年度使用額)は、主に上記の物品購入計画の変更によるものである。
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