2012 Fiscal Year Research-status Report
有害物質の高効率除去と無害化に向けた有機ホスト無機複合触媒(人工金属酵素)の開発
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23710090
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松宮 弘明 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (10362287)
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Keywords | アドミセル / アルキルアンモニウム塩 / 環境汚染物質 / 捕集 / 反応促進 / 還元的脱塩素化 / 加水分解 |
Research Abstract |
天然の酵素や微生物を環境浄化に利用する試みは多いが、一般に生物分解は操作条件に敏感であり、また汚染物質との接触効率を高めることが難しく、長時間の処理を要するなどの問題点がある。本研究では、これらの諸問題をバイオ技術とは別のアプローチで解決することを考え、酵素様活性を示す新規有機ホスト無機複合体を調製し、これに水中の汚染物質を濃縮した後そのまま分解・低害化する高効率な環境浄化システムの構築を目指した。 昨年度は、汚染物質の分解促進に有機ホスト分子チアカリックスアレーンの金属ニ核錯体を利用しようと試みたが、その触媒効果は限定的であった。そこで本年度は、界面活性剤の分子集合体とFe/Ni粒子からなる有機ホスト無機複合体をあらたに検討した。アルキルアンモニウム塩系のカチオン界面活性剤をシリカゲルの細孔内部表面に吸着させて分子集合体(アドミセル)を形成させ、更にFe/Ni粒子を担持した。この複合体を試料水に添加して攪拌した。汚染物質としてパークロロエチレン(PCE)を取り上げたところ、試料水中のPCEは速やかに複合体に取り込まれ、その後1日で分解した。PCEは有機ホスト部位であるアドミセルに疎水相互作用により捕集され、細孔内部のFe/Ni粒子による電子供与を受け、還元的脱塩素化反応により低毒性のエチレンに分解したと考えられる。 一方、アルキルアンモニウム塩を反応媒体として利用し、非食糧系バイオマスである草本系バイオマスを資源化する際に重要なセルロースの加水分解を検討した。分子間水素結合の遮断によりセルロースはイオン液体に良く溶けるため、反応の促進には有利であるが、イオン液体は高価でありコスト面で問題がある。そこで、アルキルアンモニウム塩の共融混合物が類似構造をとり、室温付近の融点を示ことに着目し、これを安価な反応媒体としてセルロースの加水分解を試みたところ、反応の進行が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初候補としていたチアカリックスアレーン金属ニ核錯体では、汚染物質に対する分解促進効果が限定的であり、計画通りに研究を進展させることが困難であった。しかし、界面活性剤の分子集合体とシリカゲル、Fe/Ni粒子からなる有機ホスト無機複合体を別途あらたに検討したことにより、交付申請書に記載した目的である「有機ホスト無機複合体に水中の汚染物質を捕集した後そのまま分解・無害化する環境浄化システムの構築」に向けて有用な知見が得られ、完全に計画通りとは言えないものの、研究を進展させることができた。また、当該年度に検討予定であった「アルキルアンモニウム塩の共融混合物を利用するセルロースの加水分解」についても検討を開始し、今後の進展に繋がる有用な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
アルキルアンモニウム塩系界面活性剤の分子集合体とシリカゲル、Fe/Ni粒子からなる有機ホスト無機複合体を用いて、特に問題となっている汚染土壌の洗浄水や汚染地下水からパークロロエチレンを捕集して分解することをモデルケースにして、一連のプロセスをシステム化する。試料水にはフミン質などの天然有機成分が含まれていると想定されるので、その影響を検討する。また、アルキルアンモニウム塩の共融混合物を利用するセルロースの加水分解についても検討を進めるが、この場合もリグニンなどの共存物質の影響に留意する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が発生した主な理由は、購入を検討していたHPLC関連物品の選定が年度内に終わらなかったためである。次年度は、これと合わせて実験用物品(試薬、溶媒、器具装置など)の購入、そして学会発表に関する旅費に科学研究費補助金を充てる。
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Research Products
(4 results)