2011 Fiscal Year Research-status Report
粒子-粒子間付着力を利用した連続再生式PM2.5除去装置に関する研究
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23710093
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 剛 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20321979)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | PM |
Research Abstract |
近年、燃焼技術の向上に伴い、排出されるPMが微小化し、既存のPM除去装置では捕集しきれないサブミクロンオーダーのPMが増加している。そこで本研究では、付着力支配によりサブミクロンオーダーのPMを除去可能な流動層をPM除去装置に適用し、PMの粒径を考慮したPM捕集特性に関する理論的・実験的研究を行った。 実験では、内径80.7 mm、高さ400 mmのステンレス製円筒容器に、粒径0.3-0.5 mmの焼結アルミナ粒子を100 mm堆積した装置を用い、装置下部より空等速度0.3-0.5 m/sの空気と粒径0.029, 0.2, 0.5, 2.25, 8.95, 19.02μmのPMを連続的に180分間流入させて付着実験を行った。その結果、30 mg/m3 程度のPMを投入した場合は、既存のPM除去装置では捕集しきれない0.029-2.25μmのPMを100 %捕集し、非常に高い濃度である100 mg/m3 の場合においても、0.029-2.25μmのPMを90 %以上の確率で除去可能であることを示した。 数値解析では、はじめに気相および粒子層を連続体とみなし、Euler-Euler法を用いた固気二相流解析プログラムを構築した。本解析コードにCliftらの付着モデルを組み込み、PMの付着解析を行った結果、粒径0.029-2.25μmのPMについては実験結果と概ね一致したが、粒径8.95および19.02μmのPMについては付着量を低く見積もった。そこで、上記実験結果よりPMの付着挙動をモデル化し、プログラムに組み込むことにより、流動層式PM除去装置の付着解析を行った。その結果、解析結果は実験結果を良好に再現しており、本研究で構築した数値解析モデルの妥当性が示された。これは、次年度に行うPMの燃焼反応を考慮した連続再生式PM除去装置の解析モデルの礎となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画は、流動層式PM除去装置における粒径を考慮したPMの付着・燃焼実験および流動層式PM除去装置を対象とした固気二相流解析における付着モデルの構築と、流動層式PM除去装置内におけるPMの燃焼速度測定とそのモデル化の一部である。前述の通り、流動層式PM除去装置における粒径を考慮したPMの付着実験と流動層式PM除去装置を対象とした固気二相流解析における付着モデルの構築については、ほぼ計画通りに進んだ。また、本装置の連続再生式としての可能性を探るため、PMの付着実験を300℃の加熱下で実施することにより、流動層式PM除去装置におけるPMの付着・燃焼実験もあわせて行っており、これも概ね計画通りに進んだ。このPM付着・燃焼実験の結果から、装置を300℃に加熱することでPMの除去効率が向上することが示された。これは、既存のPM除去装置ではPMを燃焼させるのに600℃程度の熱が必要であるのに対して、本装置では300℃という低温度域においても、PMの燃焼が可能であることを示している。このことから、これらの概念を基礎として、流動層式PM除去装置内におけるPMの燃焼挙動の把握とそのモデル化のため、重量変化を測定することにより反応速度を測定する実験装置を製作して、250-400℃という低温度域におけるPMの燃焼速度の測定を開始した。本実験では、ディーゼル機関や発電用石炭焚き燃焼ボイラー等、PMを排出する様々な燃焼機器の排ガス組成を考慮して、温度(250-400℃)、酸素濃度(5-21%)および水蒸気濃度(0-15%)を実験パラメーターとする。現在は、水蒸気0%の条件において、おおよそ1/3程度の実験が終了しており、これも概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、当該年度に引き続き、温度、酸素濃度および水蒸気濃度などのパラメーターを変化させながら、流動層式PM除去装置内におけるPMの燃焼速度を測定するとともに、重回帰分析法を用いて温度、酸素濃度および水蒸気濃度を考慮したPM燃焼反応速度のモデル化を行う。実験結果からモデル化したPM燃焼反応速度を、流動層式PM除去装置を対象とした固気二相流解析コードに組み込み、流動層式PM除去装置の解析を行う。流動層を用いたPM付着・燃焼実験の結果との比較から、プログラムの妥当性を検証後、空塔速度、流動層内温度、流動層高さなどの操作条件に加え、ベッド粒子の粒径や物性値といった操作が可能なパラメータを変化させながら、PMの付着率・捕集率に関わる因子について検討する。また、PMの粒径分布を組込み、粒径分布を考慮した解析を行うことにより、PMの粒径分布と装置の捕集性能の相関性を示すとともに、ここまでに行った実験および解析結果を踏まえ、PMの付着率および捕集効率に関わる因子を特定し、装置性能向上のための検討を行う。さらに、PMの付着量と燃焼速度の関係から、流動層式PM除去装置が連続再生式として動作可能なPMの濃度および温度範囲についても検討を行う。ここでは、必要に応じて当該年度に使用したラボスケールの流動層式PM除去装置を改良するとともに、最適な物性値を持つベッド粒子の選択およびその粒子径を変更して追加実験を行う。以上のデータをまとめて、流動層式PM除去装置内におけるPMの付着・燃焼挙動を含めたダイナミクスについて検証し、適切な流動層式PM除去装置の装置形状、操作条件およびベッド粒子の決定、また、PMの付着率および捕集効率がより高い流動層式PM除去装置の設計指針を示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策に記述した、流動層式PM除去装置内におけるPM燃焼速度の測定実験では、流動層内に試験用標準資料(PMモデル物質)、酸素濃度を調整したガスおよび濃度を調整した水蒸気を、それぞれ濃度を変化させながら供給する。本実験において、試験用標準資料(50,000円)を購入予定である。また、酸素濃度の調整はコンプレッサーにより供給される空気に不活性ガスである窒素を混ぜて行うことから、窒素ガス(50,000円)を購入予定である。さらに、水蒸気の供給はJIS規格に基づき、アントワン式を適用したバブリング法により供給する。水蒸気供給バブリング装置の部品として、恒温水槽、フローメーター、捕集瓶2セット、供給用チューブ、リボンヒーター2つ、合計400,000円を購入予定である。 一方、数値解析では、流動層式PM除去装置において、PMの付着・燃焼を考慮した固気二相流解析を行う。本解析は、非常に複雑であり解析に時間がかかることから、本来は並列計算プログラムを構築して解析を行う必要があるが、予算の都合上PCワークステーション(300,000円)を購入し、解析を行う予定である。 また、当該年度の成果および次年度の成果を国内の学会にて3回発表する予定である。具体的には、2012年9月に仙台で開催される化学工学会第44回秋季大会、2012年12月に名古屋で開催される第50回燃焼シンポジウム、2013年3月に大阪で開催される化学工学会第78年会にて発表予定である。この旅費および参加費として、それぞれ、2泊3日; 75,000円、2泊3日; 65,000円、2泊3日; 60,000円、合計200,000円使用予定である。 以上が次年度の研究費(1,000,000円)の使用計画である。
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Research Products
(1 results)