2011 Fiscal Year Research-status Report
都市資源である溶融灰に含まれる金属塩の形態解明と硫化物の高効率除去に関する研究
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23710099
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
野中 利瀬弘 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20400525)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | カーボクロリネーション反応 / 化学形態分析 |
Research Abstract |
本研究は,都市資源である溶融飛灰から亜鉛や鉛などの金属を高い選択性を持って分離し,同時に残渣の安全化を達成できる塩化揮発による分離プロセスの開発を目的とする.平成23年度は鉛の塩化反応と分離を阻害する灰中の硫黄に着目し,存在形態の種類と存在量比を明らかにすると共に,硫黄トラップ剤を添加したときの鉛の形態変化と転換挙動を詳細に調べ,最も効果的な添加剤を決定し,鉛分離率の向上を目指した.具体的な成果は以下の通りである.i-1)溶融飛灰試料の結晶構造解析と逐次抽出を組み合わせることにより,硫黄含有率が1.8~6.3%と幅広く高濃度で含まれていること,存在形態がZnSやFeSのほか,硫酸塩などで存在しており,溶融処理の種別や処理温度,原料種に関わらず,前述のような類似の形態で硫黄が含まれていることを明らかにした.i-2)含有硫黄化合物との接触により発生するPbS生成反応の抑制を目的として,灰中硫黄とCaCO3を所定量混合した試料を調製・加熱(当該申請の管状炉を使用)し,逐次抽出法を用いて鉛化合物の形態変化と揮発挙動を調べた.その結果,Metal/Sulfur比が小さい硫黄高含有試料において,熱処理時の固相中PbS量を0%に抑えることができ,顕著なPbSの生成抑制効果があることを見出した.これにより,従来の単独加熱処理に比べて鉛の揮発率を25.2%向上させ,1/6の加熱保持時間で97%以上の揮発率を達成することができた.ii)Caの存在形態の同定のため,CaOを灰試料へ混合し,前述と同様の実験条件で形態変化と揮発挙動を追跡した.炭酸塩の添加時とは異なり,酸化物添加によるPbS生成抑制効果は灰試料によって有無が別れることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の達成目標として,i)2種の溶融飛灰試料に含まれる硫黄形態(化学式,共存状態,存在比)を同定し,CaCO3などの添加量を変えて加熱したときの鉛形態変化を調べ,PbS生成抑制に及ぼす効果を確認すること,ii) 灰中に30%前後含まれる非晶質Caの存在形態の推定と反応機構の解明を行い,共存元素の影響を加味した灰組成に最適な添加比を求めることを挙げている.当該年度において,i)溶融飛灰試料中の硫黄形態がZnSやFeSのほか,硫酸塩などで存在しており,溶融処理の種別や処理温度,原料種に関わらず,前述のような類似の形態で硫黄が含まれていること,含有率が1.8~6.3%と幅広く高濃度で含まれていることを明らかにした.さらに,CaCO3を添加して加熱することにより,金属に対する硫黄濃度が高い飛灰中でのPbS量を著しく低下させ,含有Pbの全量を揮発性鉛化合物へと転換することに成功した.加えて,CaCO3添加によるPbS生成抑制の結果,鉛の揮発分離時間を1/6に抑えることができ,処理に要するエネルギーコストを大幅に削減し得ることを新たに見出した.ii)Caの存在形態の同定のため,カルシウム酸化物を灰試料へ混合し,前述と同様の実験条件で形態変化と揮発挙動を追跡した.構造解析や逐次抽出の結果から,CaCO3形態で存在することが明らかとなった.一方,CaO添加によるPbS生成抑制効果は,灰試料のCa含有量とPb化合物の比によって効果が大きく異なることが明らかとなった.今後は当該申請で購入した熱力学計算ソフトウェアを併用したメカニズム解明を継続して行っていく予定である.以上より,当該年度の目標i)に関して当初の計画以上の成果を達成し,ii)では,一部の目標達成と新たな課題を見出す事ができた.したがって,本研究はおおむね順調に親展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
【種々の形態で存在する灰中カルシウムの塩化揮発反応におけるメカニズム解明】平成23年度に得られた揮発挙動と形態変化の実験結果と合わせ,熱力学計算ソフトウェアを用いたメカニズム解明を継続して行う.【金属Fe共存下における鉛の形態別塩化揮発挙動の追跡,硫化物生成抑制効果の確認】硫黄との結合形態のほか,亜鉛などとフェライトを形成する鉄系化合物に着目し,金属Fe粉末を加えたときのPbの揮発挙動を追跡する.また,Fe共存下における硫化物形成メカニズムの解明(追加導入した熱力学計算ソフトウェアを利用した化学形態の推算)と,安定なPbSの生成抑制を試みる.【亜鉛の塩化揮発に及ぼす硫化物生成抑制剤の影響の解明】金属の選択的分離を行う上で,鉛硫化物生成抑制反応が亜鉛の塩化揮発に及ぼす影響を調べることが必要である.前述のCa系化合物を混合した試料の塩化実験で得られる固体加熱残渣および揮発物を回収し,その組成から亜鉛の分離挙動を併せ調べる.これらを達成できた場合,Fe系化合物についても亜鉛形態の変化および転換挙動への効果を詳細に調べる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述の項目について,共通して必要となる化学抽出工程のための薬剤,メンブレンフィルター,イオン交換樹脂,添加剤として用いるCa系化合物や金属Feなどの試薬・物品が必要である(消耗品費\200,000).また,塩化処理によって得られる揮発物やその分離状態の確認に必要な反応管(消耗品費\100,000),固体残渣の回収・分析に要するガラス器具類,分析用ガス(N2,Ar,CO2など)(消耗品費\300,000)を購入する.得られた成果について,化学工学会・年会(東京)等における発表を予定している(旅費\100,000)
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