2012 Fiscal Year Research-status Report
室内環境におけるリン系新規難燃剤の放散・暴露リスク評価に関する研究
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23710103
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
小瀬 知洋 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 助教 (60379823)
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Keywords | 電気・電子機器 / リン系難燃剤 / 放散量 / 発生源 |
Research Abstract |
企業オフィス、各種学校で一般的に使用されているデスクトップ型パソコンを使用して、各部位に難燃・可塑剤として添加されているリン酸トリエステル類(OPEs)に着目し、パソコンの動作時に放散される難燃剤の定性及び定量を行った。加えて、筐体内の各部位に本研究において試験作成したマイクロパッシブサンプラーを設置し、動作状態における部位ごとのOPEs放散ポテンシャルを評価し、パソコン全体からの放散量と比較評価した。 パソコン筐体全体を評価するチャンバー試験の結果から確認されたパソコン筐体から放散されるOPEsの放散挙動においては、全体で5台のパソコンについて評価を行い、主としてリン酸トリフェニル(TPhP)及びリン酸トリスクロロエチル(TCEP)の放散が確認された。一例としてこれらのパソコンを通常の家庭環境下において使用した際に想定される室内空気中濃度はそれぞれ8.7-14(ng/m3)及び15-29(ng/m3)であった。いずれのパソコンにおいても放散量はTCEP>TPhPであった。一方で、難燃剤用途での電子機器への使用が知られるTDCPP及びTCPは検出されなかった。 パソコン筐体内に設置したパッシブサンプラーによる評価においては、最も発熱の大きい中央演算装置(CPU)近傍に設置したパッシブサンプラーから、他部位と比較して1オーダー高い濃度でTCEPを主体とするOPEsが検出された。主記憶装置(HDD)および映像演算装置(GPU)近傍においても近い組成の放散が示唆されたが、その濃度はCPUと比較して低い水準であった。一方で電源ユニット内においては、TPhPが高い組成割合で捕集されており、TPhPぼ主たる放散源は電源からの廃棄であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の検討として予定していたパソコン筐体全体からのOPEsの放散量及び組成の評価結果を踏まえて、本年度は新生児の計画通り筐体内の各部位における放散組成の評価を試みた。 本検討を実施する上で最大の課題であったマイクロパッシブサンプラーの開発とその評価を年度の前半に完了し、それを実際のパソコン内に設置した実地試験を行い、パソコン全体からの放散組成と一定の整合性を持つ結果が得られたことからも、本パッシブサンプラーによる部位放散評価手法は十分な妥当性余裕することが確認できた。 マイクロパッシブサンプラーの評価にある程度時間を要した関係上、これを用いた検討を行ったパソコンの台数が現状1台のみであることにはやや課題を残したが、筐体全体からの放散量の評価については、昨年度に実施した3台に加えて、新たに2台、合計5台について評価を行うことができたため、一定の一般性を有する議論が可能なデータ数が得られたと言える。 マイクロパッシブサンプラーによる放散源の評価は、ローボリウムエアサンプラーやチャンバーなどの設備を必要としないため、複数台並列での試験が容易に可能であることが利点としてあげられる。次年度はこの利点を生かして、残る4台の評価を並行して実施し、3カ年内に目標とする到達点に達することが期待されるため、この点は研究全体の進捗には大きく影響しない。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、前述したようにマイクロパッシブサンプラーを用いた部位別放散量の評価を継続して実施する。加えて新規に実施する内容は、主としてパソコンからの放散源となっている各部位(例えば中央演算装置や電源部)の個別の含有量の評価を行う。具体的にはマイクロパッシブサンプラーによる評価を行った各部位を解体し、個別に含有量分析を行い、放散組成と比較検証することによって化合物毎の主たる放散源を明らかにする。 加えて部位毎の含有量と実際の放散濃度を比較検証することによって、放散係数を導出し、部位の形状や部位の動作時温度と対照することで放散速度の制御因子を明らかにし、パソコンをはじめとする電気・電子機器における難燃剤の放散制御手法の提案に繋げることを最終的な目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記のH25年度の検討において必要とされる経費は、分析前処理に使用する各種の試薬及び消耗品と分析機器の消耗品、交換部品が主となる。 加えて、副次的に検討を行っている臭素系難燃剤の測定においては本学の保有する機器では対応困難であるため、必要に応じて3-4回程度、本課題の遂行において協力関係にある国立環境研に出張し、機器を借用しての分析を予定しており、このための旅費を支出する。
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Research Products
(2 results)