2012 Fiscal Year Annual Research Report
閉じ込め液体の光化学反応挙動の解明とナノ反応場としての応用
Project/Area Number |
23710106
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
粕谷 素洋 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00582040)
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Keywords | 共振ずり測定 / 表面力装置 / 閉じ込め液体 / 光化学反応 / 蛍光寿命 / ツインパス法 / ピレン |
Research Abstract |
本研究の目的は,閉じ込め液体における表面間距離をナノメートルオーダーで制御しながら蛍光寿命・スペクトルを測定できる蛍光分光表面力装置を用いて,閉じ込め液体中の光化学反応挙動を評価し,さらに表面力・共振ずり測定によって評価した閉じ込めによる溶液の構造化や粘性と反応挙動との相関を明らかにし,閉じ込め液体中における化学反応制御の指針を得ることである. 閉じ込め液体中における化学反応特性の理解を目的として,ヘキサデカン中において典型的な2分子反応であるピレンのエキシマー形成・消滅反応のダイナミクスを,蛍光分光表面力装置を用いた寿命測定により観測した.結果として,雲母表面間に閉じ込められたヘキサデカン溶液中におけるピレンエキシマーの生成反応のダイナミクスが,80 ps以内とバルクよりかなり速くなることを明らかにした.また消滅反応についてもバルクより一桁程度速い数 ns程度で起こることを確かめた.さらに蛍光測定に用いたピレンのヘキサデカン溶液の共振ずり測定において,ヘキサデカンのみの場合と比べて構造化が長距離で起こることから,ピレンが表面近傍に濃縮されて構造化を誘起していると考えた.このピレンの濃縮によりダイマーが形成されて,ピレンエキシマーの反応速度が速くなる原因となると考えられる. また本研究ではさらにピレンの濃度を変化させ,1 mM以上の濃度では同様のダイナミクスの変化が生じるが,その挙動は色素濃度に依存することを見出した.また100μMの濃度では,反応挙動の変化が起こらず,これは色素の界面における濃縮が起こらないことが原因と考えられる. 以上の結果から,本研究では閉じ込め環境における液体の構造化と色素の濃縮が化学反応の制御因子として重要であることを示すことができた.この成果は,閉じ込め液体の反応場として利用に貢献するものである。
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Research Products
(7 results)