2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノ細孔中における液相吸着現象の解明およびそれを利用した擬高圧有機合成反応の検証
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23710109
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊藤 努武 信州大学, エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト拠点, 助教 (40586822)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 表面・界面物性 / 擬高圧効果 / 分子吸着現象 / エネルギー効率化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ナノ細孔中への分子吸着現象について検討し、気相および固相中で既に確認されている、吸着相の密度がバルク相の密度よりも高くなる現象(擬高圧効果)が液相中でも発現することを確認することと、それを利用した実験室レベルでの高圧有機化学合成反応について、収率や反応速度が上昇することを実証することである。平成23年度は以下の2点についての実績を得た。(1)ナノ細孔性吸着剤の選定およびキャラクタリゼーションについてナノ細孔性吸着剤としては、構成元素ではなくナノ細孔のみの影響を考慮するため、細孔径・形状・次元性の変化に非常に富んだ炭素材料を選定した。各種炭素材料に対して77Kにおける窒素吸着等温線測定、透過型電子顕微鏡像観察、紫外可視近赤外分光光度測定を用いて各種キャラクタリゼーションを行った。その結果、本研究で検討するナノ細孔性吸着剤として、細孔径が約1nmであり2次元性の細孔を有する活性炭素繊維、広い細孔径分布と1次元性の細孔を有し透過型電子顕微鏡で細孔内部構造の観察が可能な単層カーボンナノチューブ、市販されているために多量の試料の試験的使用が可能な細孔径が約1nmの活性炭を選定した。(2)実験室レベルの高圧有機化学合成反応について上記で選定した市販されているナノ細孔性活性炭を使用して、液相中の高圧有機化学合成反応でもある銅フタロシアニン合成を試行した。その結果、ナノ細孔の効果として収率や反応速度の上昇を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
試行段階ではあるが、実験室レベルでの液相中高圧有機化学合成反応(銅フタロシアニン合成反応)について、ナノ細孔性炭素材料による収率や反応速度の上昇を示すことができた。この結果は、今後行われる他の系に対してのより精密な検討の際にも、非常に良い指針を与えてくれると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書には、平成24年度には溶液中におけるナノ細孔中への分子吸着現象の解明と擬高圧効果の発現についての基礎的研究、平成25年度にはナノ細孔中の擬高圧効果による高圧有機合成反応の検証を進めると記載した。今後の研究の推進は基本的にこの通りに進める方針ではあるが、平成23年度に行った実験室レベルでの液相中高圧有機化学合成反応(銅フタロシアニン合成反応)が試行段階でありながらも有望な結果が得られたため、平成25年度に行う予定の研究を一部前倒しして、平成24年度に行いたいとも考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の物品購入に関しては、前年度までに購入したものの転用や寄附金等の別の研究費の使用が可能であったため、69,000円の次年度使用額が生じた。この額を含めた平成24年度の研究費の使用計画は主に以下の3つで占められる予定である。(1)液相吸着測定のために必要な恒温振盪水槽の購入費(2)試料の厳密な真空加熱前処理に必要な真空乾燥機および真空ポンプの購入費(3)生成物等のキャラクタリゼーションに用いられる透過型電子顕微鏡観察・核磁気共鳴分光測定・X線結晶構造解析等にかかる諸経費
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Research Products
(5 results)