2011 Fiscal Year Research-status Report
極低温収差補正STEM法による強相関電子秩序のサブナノスケール状態解析
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23710115
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
長井 拓郎 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主任エンジニア (90531567)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 透過型電子顕微鏡 / 強相関電子系 / ローレンツ顕微鏡法 / 磁気バブル |
Research Abstract |
強相関電子系酸化物として代表的なペロブスカイト型マンガン酸化物La1-xSrxMnO3および銅酸化物高温超伝導体 (Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu3Ox(Bi,Pb-2223相)について、それらの電子自由度の秩序状態を収差補正走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いてサブナノスケール状態解析することを試みた。それぞれ合成された多結晶試料をイオンミリング装置により薄板化し、電子回折法により結晶方位の調整を行った後、電顕観察を行った。ペロブスカイト型マンガン酸化物La1-xSrxMnO3に対しては、液体窒素冷却ホルダーを用い100K-290Kの温度領域で試料面に対する垂直磁場の強度を制御しながらローレンツ法によりスピン状態を解析した(加速電圧300kV)。その結果、x=1/8, 100Kにおける強磁性絶縁相に対して~3.6kOeの磁場を印加すると直径~200nmのナノスケール磁気バブルが形成されることを見出した。このバブル形成は強磁性絶縁相における軌道秩序に関連する巨大な磁気異方性を示唆している。また、銅酸化物高温超伝導体Bi,Pb-2223相に対しては、室温において低加速収差補正STEM法によりHAADF(高角度環状暗視野)像及びBF(明視野)像観察を行った(加速電圧80kV)。その結果、ホールがドープされたCuO2面の結晶粒界における連続性・不連続性がサブナノスケールで観察された。これは多結晶材料における結晶粒界と超伝導特性との相関を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ペロブスカイト型マンガン酸化物等の強相関電子系遷移金属酸化物における電子自由度の秩序状態を極低温収差補正透過型電子顕微鏡を用いて解明することを目的としている。現在までに、今まで報告されていなかったペロブスカイト型マンガン酸化物系におけるナノスケール磁気バブルの形成を見出しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ペロブスカイト型マンガン酸化物等の電荷軌道秩序相、強磁性金属相、強磁性絶縁相、反強磁性絶縁相およびそれらの電子相分離・電子相競合について電子状態のサブナノスケール解析を行う。また、銅酸化物高温超伝導体の常磁性金属相、擬ギャップ相、超伝導相についても解析を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
投稿論文の審査が本年度内に終了しなかったため、その論文掲載費用を次年度に使用する。また、設備備品としてスピン状態の解析のための強度輸送方程式法解析プログラムを購入し、消耗品として試料作製用試薬を購入する。
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