2011 Fiscal Year Research-status Report
動的相分離溶液を反応場として作製した金ナノ四角プレートの光学特性及び触媒能評価
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23710117
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梶本 真司 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (80463769)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 相分離過程 / ナノ秒レーザー / ダイナミクス / レーザー誘起 / 金属ナノ構造体 |
Research Abstract |
23年度の研究では、動的に相分離過程にある溶液を反応場として作製した金ナノ四角形について、レーザー光照射時間に伴う形状・サイズの変化を調べることによってその成長過程について考察した。実験では、50℃付近に下部臨界温度を持つ2-Butoxyethanol-水の混合溶液を溶媒とし塩化金酸塩を溶解させ、試料とした。相分離過程はパルス幅8 nsの近赤外光パルスを照射することによって開始し、一定遅延時間後に紫外光パルスを照射して金イオンの光還元によって金ナノ構造体を作製した。遅延時間を5 μsとした時には、近赤外パルスと紫外光パルスの1組のレーザー照射によっておよそ100 nm程度の金ナノ四角形が得られた。また、試料を循環させながらパルス列を連続照射すると金ナノ四角形が250 nm, 375 nmと階段的に成長する様子が観測された。これらの結果は、紫外光パルスを照射した際の相分離初期過程にある相のサイズが生成物である金ナノ構造体のサイズを決定していることを示唆しており、さらにその成長過程も相のサイズによって決定されていると考えられる。また、このようにして得られた金ナノ粒子の光学的な性質を暗視野顕微鏡によって調べ、遅延時間や照射時間によって異なる散乱スペクトルを示すことを確認した。これらの結果から、遅延時間やレーザー照射時間を制御することによって、異なる光学的性質を持ったナノ構造体が作製可能であると考えられる。 さらに、硝酸銀溶液を試料として同様の実験を行うと、銀ナノ構造体が得られることが分かった。硝酸銀を溶かした2BE-水混合溶液には355 nm付近の紫外光領域にはほとんど吸収は無いが、塩化金酸塩溶液を試料とした場合と同様に355 nmの紫外光パルス放射によって銀ナノ構造体を得た。この結果から銀イオンの2光子励起によって還元反応が誘起され、銀ナノ構造体が得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、パルスレーザー誘起相分離過程にある溶液を反応場として新規な金属ナノ構造体を作製し、その触媒能や光学的物性を評価することによって新規な物性を持った金属ナノ構造体を得ることである。1年目である23年度の研究では、このうち金属ナノ構造体の作製について、すでに報告している金ナノ四角形についてその成長メカニズムの解明と結晶構造の観測に重点を置き、研究を行った。その結果からパルスレーザー間の遅延時間を変化させるだけでなく、レーザーを照射する時間を変化させることによっても光化学生成物であるナノ構造体の形状・サイズの制御ができることが解った。また、金だけでなく、試料溶液に銀イオンを加えると銀ナノ構造体が、銅イオンを加えると銅のナノ構造体が得られることが分かった。これらのナノ構造体についても、金ナノ構造体と同様に遅延時間や照射時間を変化させることによって、その形状やサイズを変化させることができると期待される。また、生成物の光学的性質の評価については、暗視野顕微鏡を用いることによってそれぞれの試料に対して、光学的性質を調べることができることを確認した。今後はさらに蛍光分子等を用いることによってそれぞれの試料の触媒作用について考察するよていである。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の研究でも引き続き、相分離過程にある溶液を反応場とした金属ナノ構造体の作製を行う。特に、金ナノ構造体だけでなく銀や銅、あるいはプラチナのナノ構造体の作製を試みる。また、遅延時間やレーザー照射時間を変化させる、あるいは混合溶液の比率を変化させることによって、生成物であるナノ構造体のサイズや形状の制御を試みる。得られたナノ構造体の評価には電子顕微鏡だけでなく、暗視野顕微鏡や蛍光顕微鏡を用いて形状の変化に伴う光学的性質の変化についても考察する。また、本年度からは触媒能の評価方法の構築についても行う。ナノ構造体の触媒能を正確に評価するために、蛍光顕微鏡を用いた単一ナノ構造体に対する触媒能評価を予定している。試料としては、光還元あるいは光酸化によって蛍光の量子収率が大きく変化する分子を用い、光学顕微鏡上で金属ナノ構造体付近の蛍光強度の変化を評価することによって、金属ナノ構造体の酸化還元反応における触媒能の評価を行う。本年度内に評価方法を確立し、特にこれまでにサイズ選択的に得られている金ナノ四角形の触媒能を評価する。その上で本年度の後半から25年度にかけて、あらたに得られた銀ナノ構造体や銅ナノ構造体についてその評価を行い、相分離過程にある溶液を反応場として用いて作製した新規ナノ材料を提案して行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度の研究費を用いてレーザー等の必要となる設備品は購入し、現在使用可能な状態にある。そのため24年度の研究費では、これらのレーザーの消耗品や光学部品、必要となる化学試料を購入する予定であり、大型の設備品を購入する予定は無い。特に、化学試料については種々の金属ナノ構造体を作製するために様々な金属塩を試料として実験を行う予定である。また、23年度の実験結果を含め、新しい研究成果の発表のための旅費や論文投稿料としての支出も予定している。
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Research Products
(7 results)