2012 Fiscal Year Research-status Report
動的相分離溶液を反応場として作製した金ナノ四角プレートの光学特性及び触媒能評価
Project/Area Number |
23710117
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梶本 真司 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (80463769)
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Keywords | 金ナノ粒子 / レーザー光化学 / 相分離 / ナノ反応場 |
Research Abstract |
24年度の研究では、動的に相分離過程にある2-ブトキシエタノール(2BE)と水の混合溶液を反応場として作製した金ナノ四角形について,その形成過程の解明を目指して,過渡吸収実験を行った。特に,温度ジャンプを誘起する近赤外光は用いず,スタティックな塩化金酸イオン2BE-水溶液中における紫外光照射に伴う金イオンの還元過程を過渡吸収スペクトルによって観測した。その結果から,金イオンの励起後,還元反応によって生成した金の2価イオンが不均化反応によってさらに還元が進むことが分かった。また,2BEの濃度を変えながらスタティックな混合溶液中で金イオンの光還元反応を誘起し,金ナノ構造体を作製した結果から,2BEの濃度によって作製されるナノ構造体の収率や形状が異なることが分かった。これらの結果と過渡吸収の結果から得られた反応速度の濃度依存性から,2BE濃度の変化に伴う溶液の粘度の変化によって金イオンの反応速度が変化し,ナノ粒子の収率や形状が変化したと考えられる。このことは2BE分子がキャッピング剤としてだけでなく,反応速度の決定においても重要な役割を果たしていたことを示している。また,動的に相分離過程にある溶液中での反応では,それぞれの相の2BE濃度から水相においてナノ粒子が生成されていると考えられる。また,パルスレーザーの繰り返し照射に伴う,ナノ粒子の成長過程と崩壊過程の様子から動的に相分離過程にある溶液中に形成されるナノメートルサイズの相に存在する時と静的な溶液中に存在する時で金ナノ四角形のパルスレーザーによる崩壊の強度閾値が異なることが分かった。これは,ナノサイズの相によってナノ四角形が離散しており,さらに光の伝達が制御されているからだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、パルスレーザー誘起相分離過程にある溶液を新規な反応場として金属ナノ構造体を作製し,動的に相分離過程にある溶液の反応場としての性質を調べ,さらに得られた物質の触媒能や光学的物性を評価することによって新規な物性を持った金属ナノ構造体を得ることである。2年目である24年度の研究では、これまでに報告している金ナノ四角形の生成・成長過程について,過渡吸収分光法を用いてその反応中間体の検出を行った。さらに,混合溶液中の2BEの濃度によって中間体の寿命と生成物である金ナノ構造体の形状がどのように変化するかを調べた。これらの結果から2BE分子は金(100)面を保護するキャッピング剤としてだけでなく,反応場の粘性を制御する面でも重要な役割を果たしていることが分かった。これらの結果と23年度の結果から,金ナノ四角形については,赤外光レーザーパルスによって誘起された相分離過程にある溶液を反応場として用い,紫外光レーザーパルスによって金イオンの還元反応を誘起することによって,パルスレーザー間の遅延時間や照射時間を制御することによってそのサイズを制御して作製することが可能となった。また,その成長メカニズムについても分かってきた。さらに,銀ナノ粒子や銅についても,遅延時間や照射時間を変化させることによって生成物のサイズが変化することが分かった。今後はこれらの生成物に対して,光学顕微鏡を用いた光学特性の評価や蛍光分子等を用いた触媒作用について考察する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究では、相分離過程にある溶液を反応場として作製した金属ナノ構造体について,その光学的性質を観測する。これまでに暗視野顕微鏡で観測することによって,一辺が数マイクロメートルまで成長した金四角形はその端において発光性の性質を示すことが分かっている。このスペクトル等を顕微鏡下で詳細に調べることによって発光の起源について調べる。制限視野電子線回折の結果からナノ四角形は金(100)面を持った単結晶と考えているが,数10原子で構成される金クラスターは発光することが知られていることから,ナノ四角形の中央部分と端において結晶性が異なり光学的な性質が異なっている可能性が考えられる。四角形の端と中央における結晶性や構造の違いについて,高分解能電子顕微鏡やSTMやAFMといった走査型プローブ顕微鏡を用いた測定も試みる。これらの測定には,試料をある程度強く基板に吸着させる必要があるが,遠心分離器を用いた圧着法により,測定が可能になると考えられる。また、触媒能の評価も行う。ナノ構造体の触媒能を正確に評価するために、蛍光顕微鏡を用いた単一ナノ構造体に対する触媒能評価を予定している。試料としては、光還元あるいは光酸化によって蛍光の量子収率が大きく変化するresazurin, resorufin等の分子を用い、光学顕微鏡上で金属ナノ構造体付近の蛍光強度の変化を評価することによって、金属ナノ構造体の酸化還元反応における触媒能の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)