2012 Fiscal Year Research-status Report
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23710118
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 健太郎 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90583550)
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Keywords | グラフェン / 共鳴ラマン分光 |
Research Abstract |
佐藤健太郎は積層構造がねじれた2層グラフェンのGバンド強度における励起光エネルギーとねじれ角の関係を計算から示した。ここで佐藤健太郎は強束縛法を利用し、電子光子行列要素と電子格子行列要素を求め、積層構造がねじれた2層グラフェンのGバンド強度を計算するプログラムを作成・発展させ、Gバンド強度の計算をおこなった。さらに佐藤健太郎は計算結果とC. CongとT. Yuらの実験との比較をおこなった。また佐藤健太郎は計算結果とM.A. Pimentaらの実験結果との比較と議論をおこなうために、ブラジルのミナスジェライス大学への短期滞在をおこなった。本研究では特に、あるねじれ角におけるGバンド強度と励起光エネルギーの関係を示したことによって、積層構造がねじれた2層グラフェンの基礎・応用研究の際の共鳴ラマン分光を用いたねじれ角の評価における指針を提示した点において重要である。 佐藤健太郎は1層グラフェンのG'バンド、G*バンド、また1700から2300cm-1の範囲にある複数のラマンピークのラマンシフトと線幅のフェルミエネルギー依存性、さらに2層グラフェンにおける1650から1800cm-1の範囲にある複数のラマンピークのラマンシフトと線幅のフェルミエネルギー依存性を、齋藤理一郎、P.T. Araujo、D.L. Mafra、J. Kong、M.S. Dresselhausらと共に示した。これらのラマンピークのラマンシフトと線幅のフェルミエネルギー依存性は、それぞれのラマンピークに対して異なる依存性があるため、ラマンシフトと線幅のフェルミエネルギー依存性からラマンピークの起源を同定できると期待される。本研究では特に、グラフェンの共鳴ラマン分光において、重なったラマンピークでもラマンシフトと線幅のフェルミエネルギー依存性からそれぞれの起源を同定できることを示した点において重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は「多層グラフェンにおける共鳴ラマン強度とラマンシフト(G'バンドやMバンドなど)の励起光エネルギー依存性、また多層グラフェンの層数との関係」と「欠陥に起因する共鳴ラマンピーク(Dバンドなど)の共鳴ラマン強度とラマンシフトの励起光エネルギー依存性、多層グラフェンの層数、また欠陥との関係」を明らかにすることである。平成24年度における研究推進方策では「共鳴ラマン強度を計算するプログラムの改良」と「作成したプログラムによる共鳴ラマンピークのラマン強度と励起光エネルギーと積層構造の関係の導出」が計画されていた。 佐藤健太郎は、研究推進方策に基づき、一種の欠陥だとも考えられる積層構造がねじれた2層グラフェンのGバンド強度における励起光エネルギーとねじれ角の関係を、強束縛法を使用して計算するためのプログラムを作成・改良し、あるねじれ角におけるGバンド強度と励起光エネルギーとの関係を示し、さらにC. Cong、T. Yu、M.A. Pimentaらの実験との比較をおこなった。 また佐藤健太郎は、1層グラフェンのG'バンド、G*バンド、1700から2300cm-1の範囲にある複数のラマンピークのラマンシフトと線幅のフェルミエネルギー依存性、さらに2層グラフェンにおける1650から1800cm-1の範囲にある複数のラマンピークのラマンシフトと線幅のフェルミエネルギー依存性を、齋藤理一郎、P.T. Araujo、D.L. Mafra、J. Kong、M.S. Dresselhausらと共に示した。 本研究の目的、研究推進方策と平成24年度における研究成果を照らし合わせると、これまでの研究成果は本研究の推進方策におおむね基づいており、また本研究の目的を達成するために必要である。したがって、本研究の現在までの達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的である「多層グラフェンにおける共鳴ラマン強度とラマンシフト(G'バンドやMバンドなど)の励起光エネルギー依存性、また多層グラフェンの層数との関係を明らかにする」と「欠陥に起因する共鳴ラマンピーク(Dバンドなど)の共鳴ラマン強度とラマンシフトの励起光エネルギー依存性、多層グラフェンの層数、また欠陥との関係を明らかにする」を達成するために、今後の研究は次のように推進する予定である。 平成25年度は、積層構造がねじれた2層グラフェンにおける共鳴ラマン強度や多層グラフェンのG'バンドなどの共鳴ラマン強度を計算するために、平成24年度までに開発した共鳴ラマン強度を計算するプログラムを改良する。また作成したプログラムを使用して、共鳴ラマンピークのラマン強度と励起光エネルギーと積層構造の関係を導出する。実験との比較から多層グラフェンの共鳴ラマン強度の特性を明らかにする。また欠陥による電子の散乱をあらわす行列要素を計算するプログラムを作成する。平成24年度に開発したグラフェンの共鳴ラマン強度を計算するプログラムと組み合わせて、欠陥に起因する共鳴ラマン強度を計算するプログラムを作成する。数値計算結果と実験との比較をおこないながら、プログラムの修正をおこなう。 平成26年度は、平成25年度に得られた成果をもとにして、数値計算からグラフェンのDバンドにおける励起光エネルギーと層数の関係を導出する。実験との比較から共鳴ラマン強度の特性を明らかにする。 なお国内外の研究グループが理論または実験における重要な研究成果を発表した場合や、本研究の進捗状況によっては、本研究を滞りなく進めるため、またより良い研究成果を出すために研究推進方策を柔軟に変更する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:本研究課題を推進するための参考図書を購入するための物品費が必要である。また今年度までの未使用額は、計画を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、今年度以降、さらに研究を推進するために大容量のメモリを搭載した並列計算機および関連機器、また計算結果を図示するためのソフトウェアを導入するための研究費として使用する予定である。共鳴ラマン強度を求めるためには、電子光子行列要素と電子格子行列要素を可能な全ての組み合わせについて計算しなければならない。共鳴ラマン強度、励起光エネルギー、ラマンシフトとグラフェンの積層構造の間の関係を明らかにするためには、励起光エネルギーなどの初期条件を数多く変更して計算する必要がある。積層構造がねじれた2層グラフェンなどの共鳴ラマン強度の計算には、実験値と比較できる有用な数値計算結果を得るためにギガバイトのオーダーのメモリが必要とされる。そのため、本研究課題を素早く推進し、かつこれまで出来なかった数値計算を可能にするためには、これらの物品が必要である。平成25年度以降の本研究課題においても、研究を推進するためにこれらの物品は使われる。 旅費:グラフェンなどの炭素関連物質の研究進展は速く、昨年度だけでもグラフェンに関する論文は7300本以上も出版されており、国内外でも会議やシンポジウムは多数開催されている。最新の研究情報を取得するため、また国内外の研究者に本研究課題の研究成果 を広めるためには、論文発表に加えて国内外の会議やシンポジウムで積極的に研究成果を発表し、さらに国内外の研究グループとの共同研究をおこなうことが重要である。そのため、国内外の会議やシンポジウムで研究成果を発表し、また共同研究をおこなうための旅費が必要である。 その他:旅費で述べた会議に参加するために会議参加費が必要である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Coherent Phonons in Carbon Nanotubes and Graphene2013
Author(s)
J.-H. Kim, A.R.T. Nugraha, L.G. Booshehri, E.H. Haroz, K. Sato, G.D. Sanders, K.-J. Yee, Y.-S. Lim, C.J. Stanton, R. Saito, J. Kono
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Journal Title
Chemical Physics
Volume: 413
Pages: 55-80
DOI
Peer Reviewed
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