2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710118
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 健太郎 仙台高等専門学校, 総合科学系, 助教 (90583550)
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Keywords | グラフェン / 共鳴ラマン分光 |
Research Abstract |
2層グラフェンの一方のグラフェン層を、グラフェン層に垂直な軸に対してある角度(ねじれ角)だけ回転させた2層グラフェンのことを積層構造がねじれた2層グラフェンという。積層構造がねじれた2層グラフェンの物性はねじれ角に依存することが知られているため、基礎・応用研究においてはねじれ角と物性の関係の解明、また試料のねじれ角の評価は重要である。共鳴ラマン分光はグラフェンの試料評価や物性探究に広く使われている手法であり、共鳴ラマンスペクトルからは理論的な解析により様々な物理的知見を得られる。積層構造がねじれた2層グラフェンの共鳴ラマンスペクトルはねじれ角により変化するため、共鳴ラマンスペクトルの解析からねじれ角の評価とグラフェン層間の相互作用などの物理的知見が得られると期待される。 佐藤健太郎は積層構造がねじれた2層グラフェンにおけるラマンピークの強度とラマンシフト、ねじれ角、励起光エネルギーとの関係を定量的に評価するための計算プログラム群の開発と改良をおこなった。共同研究者らによるねじれ角が異なる積層構造がねじれた2層グラフェンの100を超える試料からの共鳴ラマンスペクトルの実験データとの比較をおこなうために、佐藤健太郎は作成した計算プログラムを利用し、積層構造がねじれた2層グラフェンのGバンド強度増強が起こる励起光エネルギーやGバンド強度を様々なねじれ角について計算した。また計算と実験との比較をおこない、積層構造がねじれた2層グラフェンのGバンド強度増強のねじれ角と励起光エネルギー依存性を議論した。本研究は共鳴ラマン分光を利用した積層構造がねじれた2層グラフェンの試料評価の指針形成が進展した点において重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は「多層グラフェンにおける共鳴ラマン強度とラマンシフト(G'バンドやMバンドなど)の励起光エネルギー依存性、また多層グラフェンの層数との関係」と「欠陥に起因する共鳴ラマンピーク(Dバンドなど)の共鳴ラマン強度とラマンシフトの励起光エネルギー依存性、多層グラフェンの層数、また欠陥との関係」を明らかにすることである。平成25年度における研究推進方策では「共鳴ラマン強度を計算するプログラムの改良」と「作成したプログラムによる共鳴ラマンピークのラマン強度と励起光エネルギーと積層構造の関係の導出」が計画されていた。 佐藤健太郎は、研究推進方策に基づき、積層構造がねじれた2層グラフェンにおける励起光エネルギー、Gバンドのラマン強度、またねじれ角との関係を定量的に評価するために計算プログラム群の改良を引き続きおこなった。また共同研究者らによる100を超える積層構造がねじれた2層グラフェンのサンプルからの実験データとの比較を開始した。 さらに佐藤健太郎は、1層グラフェンのG'バンドのラマンシフトの励起光エネルギー依存性を示し、また佐藤健太郎は共同研究者らと1層と2層グラフェンの共鳴ラマンピークのフェルミエネルギー依存性について報告した。 本研究の目的、研究推進方策と平成25年度における研究成果を比べると、これまでの研究成果は本研究課題の推進方策におおむね基づいており、また本研究課題の目的を達成するために必要である。したがって、本研究の現在までの達成度はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的である「多層グラフェンにおける共鳴ラマン強度とラマンシフト(G'バンドやMバンドなど)の励起光エネルギー依存性、また多層グラフェンの層数、また欠陥との関係を明らかにする」を達成するために、今後の研究は次のように推進する予定である。 平成26年度は、平成25年度までに得られた成果を基にして、グラフェンの共鳴ラマン強度を計算するためのプログラム群の開発と改良をおこないながら、積層構造がねじれた2層グラフェンにおける励起光エネルギーと共鳴ラマンピークの強度とラマンシフト、また積層構造との関係を数値計算により明らかにする。さらに実験との比較をおこなうことにより、数値計算結果についての定量的な検討をおこなう。また欠陥による電子の散乱をあらわす行列要素を計算するプログラム群の開発と改良をおこない、数値計算からグラフェンのDバンドにおける励起光エネルギー、ラマンシフトと層数の関係を明らかにする。 なお国内外の研究グループが理論または実験における重要な研究成果を発表した場合や本研究の進捗状況によっては、研究期間内により良い研究成果を出すため、また本研究を滞りなく進めるために研究推進方策を変更する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年4月に東北大学大学院理学研究科物理学専攻から仙台高等専門学校に移動したことにより研究環境が急激に変化したため、当初予定していた海外での国際学会への参加や共同研究先への短期滞在といった短期出張、また数値計算機の増強を2013年度はおこなわなかった。そのために次年度使用額が生じた。 2014年度は本研究課題の最終年度であり、また現在の研究環境も落ち着いてきたため、2014年度分として請求した助成金と合わせて早期に数値計算機環境の増強をおこない、また研究成果の発表と情報収集のために国内外での学会・シンポジウムへの参加または共同研究先への短期滞在をおこなう。
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Research Products
(8 results)