2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノ超格子水素貯蔵デバイスの機能発現メカニズムの解明と耐久性向上
Project/Area Number |
23710120
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関場 大一郎 筑波大学, 数理物質系, 講師 (20396807)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 水素貯蔵 / ナノ超格子 / 高分解能RBS |
Research Abstract |
筑波大学1 MVタンデトロンに専用ビームラインを整備し、高分解能RBS-ERDAの装置開発を行った。また、共用スパッタ成膜装置を用いてPd/Mg/Ti/Mg/Ti/Siナノ超格子作成の条件出しを行った。高分解能RBS-ERDA装置の開発としては90度偏向マグネットの設計・製作、安定電流源の準備を行った。粒子検出部として検出器チェンバー一式を整備し、位置敏感検出器の設置および高圧電源、プリアンプ、ADコンバーターの準備を行った。また、キネマティック・ブロードニングを補正するための4重極静電レンズおよびそれに用いる500 V電源も2つ作製した。これにより高分解能RBSに必要な部品の製作、機器の準備は終了した。試料への入射ビームのエネルギーとして、1 MVタンデトロンで簡便に使える1.6 MeVを用いてシグナル検出のテストを行った。その結果、MCPを用いた位置敏感検出器ではバックグラウンド・ノイズが大きく、アンプによる増幅がうまくできなかった。そのため通常のRBS測定で実績のあるシリコン表面障壁型検出器に置き換えてテストを行った。その結果90度偏向マグネットにかける電流値に対応したエネルギーの粒子が到達していることが確認できた。よってMCPの電気系のノイズを改善すれば装置の分解能を議論できるようになる。一方、試料作製においては2つのMg層の間のTi層の厚みを定量的に検討した。各層の水素濃度を窒素ビームを用いた共鳴核反応法で調べることを想定し、ビームのストラグリングによる深さ分解能をシミュレーションにより決定した。その結果、2つのMg層を分離して観察するためには間のTi層が少なくとも30 nm必要であることが分かり、その成膜のためのパラメータ出しを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mg系ナノ超格子に対する高分解能RBSに向けて、予定通り装置開発を行ったほか、試料の作製にもめどがたった。震災の影響によりビームライン開発は遅れ気味であったが、年度の後半は想定していたよりも開発がスムーズに進み、初年度内にシグナル検出のテストを行うところまで到達した。試料の作製も条件出しが終わり、申請者により開発された実環境下共鳴核反応法により水素雰囲気中での水素化観察のテスト実験も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
高分解能RBSにおいて90度偏向マグネットはおおむね設計通りに機能していることが確認できた。現時点での問題点として位置敏感検出器のバックグラウンドノイズが挙げられる。製作した電気回路系を細かくチェックし、通常のパフォーマンスが出るように改善する。その後、Siウエハの表面端スペクトルを用いて所定の分解能が出るように4重極静電レンズのパラメータ出しを行っていく。その後、Mg系ナノ超格子の劣化原因を高分解能RBSによる界面探査により行っていく。並行して実環境下共鳴核反応法によりMg系ナノ超格子の水素化における弾性応力依存性を調べていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料作製のためのスパッタ成膜装置の消耗品、真空消耗品、電気回路などの購入の他、成果発表、共用加速器使用のための旅費として用いる。次年度に繰り越しとなった約46万円は当初上に挙げたような試料作製および測定に用いる予定だったが、震災による偏向マグネットの破損等で開発が半年程度遅れたため使用することができなかった。24年度に実験成果を出して成果報告を行っていく。
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