2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710121
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂本 雅典 筑波大学, 数理物質系, 助教 (60419463)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 金クラスター / ポルフィリン / 金属-π相互作用 |
Research Abstract |
金属ナノ粒子に対して平面分子が"面"で配位したπ接合金属ナノ粒子は、光を用いた還元触媒反応や光電変換といった様々な用途において有望な材料である。本申請研究においては、様々なサイズの金属ナノ粒子に対してポルフィリン誘導体を平面的に配位させたポルフィリンπ接合金属ナノ粒子を合成し、その光機能及び機能発現の支配要素の調査を行うことを目標とする。最終的には、光触媒や光電変換といった機能を有するπ接合金属ナノ粒子の創製を目指す。 本年度の研究においては、金属ナノ粒子に平面的に配位する特殊なポルフィリン誘導体であるSC0P, SC1P, SC2P(tetrakis-5α,10α,15α,20α-(2-acetylthiophenyl)porphyrin (SC0P), tetrakis-5α,10α,15α,20α-(2-acetylthiomethylphenyl)porphyrin (SC1P), tetrakis-5α,10α,15α,20α-(2-acetylthioethylphenyl) porphyrin (SC2P))を合成し、これらを保護配位子としてπ接合金ナノ粒子の合成をおこなった。合成されたπ接合金ナノ粒子のうち、SC1PおよびSC2Pに保護されたπ接合金ナノ粒子の構造決定は終了しており、金ナノ粒子を内接球、ポルフィリンを面とする立方体状の構造をとることが、透過型電子顕微鏡観察、質量分析および走査型トンネル顕微鏡観察の結果から明らかになった。また、π接合金ナノ粒子の吸収スペクトル測定から、ポルフィリンと金ナノ粒子間に強い電子的な相互作用が働いていることが示唆された。これら一連の研究結果は論文としてまとめられ、国際的な学術誌であるJournal of American Chemical Societyに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画においては、研究を(i) ポルフィリンπ接合金ナノ粒子の合成と構造解析、(ii) ポルフィリンπ接合金ナノ粒子の光学特性および光反応性の調査の二つのテーマに分けた上で前者を平成23年度に後者を平成24年度に完了させる予定であった。しかしながら、本年度は東日本大震災により所属機関が大きな被害をこうむってしまい、実験の再開までに数カ月の時間を要したため、研究の進行に遅れが生じてしまった。そのため、当初の予定であるポルフィリンπ接合金ナノ粒子の合成と構造解析のうち、SC0P保護π接合金ナノ粒子の合成と構造解析を行うことができなかった。しかしながら、現在、SC0P保護π接合金ナノ粒子の合成と構造解析を急いで進めており、本年度に生じた遅れは十分に取り戻せる範囲内であると考えている。総合すると東日本大震災により研究の大幅な遅れが危惧されたが、迅速な復旧活動と精力的な研究の結果、おおむね予定通りの研究成果を上げることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、平成23年度に予定通り進まなかったポルフィリンπ接合金ナノ粒子の合成と構造解析を完了させた上で、当初の研究計画に沿ってπ接合金ナノ粒子の光学特性および光反応性の調査を行う予定である。 平成23年度に合成した三種類のポルフィリン誘導体に保護されたπ接合金ナノ粒子のうち、SC0P保護π接合金ナノ粒子は現時点で合成できておらず、構造が明らかになっていないため、まずはSC0P保護π接合金ナノ粒子の合成と構造解析を進める。その後一連のポルフィリン誘導体保護π接合金ナノ粒子の光学特性および光反応性の調査を行う。ポルフィリンと金ナノ粒子との相互作用の調査は、吸収スペクトル測定や蛍光測定、X線光電子分光(XPS),光電流測定などの電気化学測定を用いて行う予定である。三種類のポルフィリン誘導体保護π接合金ナノ粒子は、それぞれポルフィリンと金ナノ粒子間の距離が異なるため、相互作用の距離依存性を調査することができる。光反応性の調査に関しては、フェムト秒レーザーを用いたレーザーフラッシュフォトリシスによる時間分解過渡吸収測定を行う必要があるが、この測定は産業技術総合研究所の古部昭広主任研究員との共同研究により行う予定である。さらには、一連の研究によって得られた結果を電子移動理論をもとに解析し、ポルフィリン‐金ナノ粒子間の距離や、クラスターのサイズが電荷分離状態に及ぼす影響に関して検討を行い、より効率的な電荷分離の起こるπ接合金ナノ粒子や高い触媒活性を持つπ接合金ナノ粒子の設計を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、π接合金ナノ粒子の光学特性および光反応性を明らかにすることを目標に研究を進める予定である。光学特性および光反応性の調査に関しては大学の共通機器の利用や共同研究により推進するため、装置購入に関する費用はかからない。このため、平成24年度の予算は光学特性を調査するためのサンプルとしてSC0P、SC1P、SC2P保護金クラスターを追加合成するための試薬購入費、測定に必要な消耗品の購入費および研究で得られた成果を発表するための学会参加費として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)