2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノ微粒子支援型質量分析による食品多成分評価法の開発
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23710124
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
平 修 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (30416672)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 食品 / 網羅的検出 / ナノ微粒子 / 質量分析 |
Research Abstract |
食品を構成する標品(脂質、ペプチド、配糖体、核酸など)をイオン化できるナノ微粒子を開発した。各金属酸化物(コア成分は、Ti, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Ag)をコアにしたナノ微粒子を一段階の合成法で合成した。Mnは、配糖体、脂質を、Feは核酸を高率にイオン化することを確認した。特に、統計学的手法を駆使したことで、ナノ微粒子と食品成分イオン化高率を関係が明らかにできた。その結果より、配糖体A,Bの食品成分に対し、それぞれイオン化に適した2種類のナノ微粒子を混合すると配糖体A、Bをより高率にイオン化することを発見した。ナノ微粒子の機能化に伴い、物質を選択的にイオン化する手法を開発した。ナノ微粒子表面に、アミノ基、カルボキシル基、フェニル基を修飾した。特に、フェニル基修飾Feナノ微粒子においては、芳香環物質と非芳香環物質が混在した溶液にフェニル基Feナノ微粒子を添加するとを芳香環物質のみを選択的に補足・回収することができた。本ナノ微粒子は、質量分析にかけることができ、回収ナノ微粒子にレーザーを照射すると、芳香環物質が検出された。つまり、π-π相互作用によりナノ微粒子が芳香環を捕捉したため、選択的検出が可能になった。食品成分にも応用ができるため本年は食品成分検出のためのナノ微粒子開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ナノ微粒子を用いた質量分析法(Nano-PALDI法)における食品の品質評価法の開発に必須の機能性ナノ微粒子の開発が当初の計画よりも順調に遂行された。ナノ微粒子の機能化については、3種類の官能基を高率に修飾する方法を修飾時の温度、時間を鋭意検討した結果スムーズに修飾することに成功した。また、ナノ微粒子の種類でイオン化できる物質に違いがあることが以前から示唆されていたが、どのように分類するかが鍵であった。コア成分の異なるナノ微粒子を8種合成し、それぞれの食品成分のイオン化の結果を統計学的手法を取り入れたことでナノ微粒子と食品成分イオン化効率との関係を明らかにできたことが進捗の一つの大きな要因となっている。また、ナノ微粒子が、食品成分の一つである核酸をイオン化する際に特異的な質量分析スペクトルを示すことを発見できた。これらの成果発表も順調に行うことができた。学会賞2件、論文発表6件(内1件は、Analyst誌の表紙として掲載された)と予想よりも進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
食品に含まれる成分の一斉検出を行う。H23年度の成果で、一種類のナノ微粒子を用いた食品成分の検出では、物質によってはイオン化が不十分なものも見受けられた。そこで、各成分(脂質、核酸、配糖体、タンパクなど)のイオン化に最適なナノ微粒子をそれぞれ決定する。 その後、それらのナノ微粒子を混合することで、イオン化効率を改善し、食品中に含まれる成分の網羅的検出をより高率なものとする。 また、イメージング質量分析を駆使することで食品成分の分布、または農薬などの汚染物質の局在なども本年度の成果より解明できる糸口が見えている。機能性ナノ微粒子を用いた食品機能の解明研究に重点を置き、さらなる研究の発展を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年は食品成分検出に適した機能性ナノ微粒子の開発が非常に順調に進んだ。その為、当初計画していたよりもナノ微粒子開発に経費を割くことを回避できた。 次年度の実サンプル、食品の機能解明については研究がシビアになることが予想される。食品サンプルの成分の可視化、特に、農作物を標的として、有効成分の他、残留農薬が農作物(野菜など)の何処に局在しているのかを明らかにする。有効成分の局在を示すことで、高率な摂取部位を特定でき、また、食品の品質を保証できる。残留農薬の可視化においては、それを示すことで食品の安全性に対して新規手法を示すことができる。 これらを実現するための試薬、物品費、実験補助員費、学会・論文での成果発表に充当する。
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Research Products
(8 results)