2012 Fiscal Year Research-status Report
デンドリマーの大量合成法の確立とそれを利用した機能性ナノマテリアルの調製
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23710134
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
青木 健一 東京理科大学, 理学部, 講師 (40385943)
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Keywords | デンドリマー / 分子集積 / 光反応 / フォトポリマー |
Research Abstract |
本申請では、デンドリマーの新規な大量合成法を開拓し、それらを利用した機能性ナノマテリアルを創製することが主たる目的である。昨年度は、多段階交互付加(AMA)法という新規な手法を用いることにより、ポリオール/ポリアクリレートデンドリマーを100グラムスケールで大量合成可能であることを見出すことができた。本年度は、新たに以下の2項目の成果を見出すことができた。 (1)デンドリマー合成のワンポット化 昨年度、AMA法の合成条件の最適化を行ったが、得られた知見を利用してさらに検討を行うことにより、デンドリマーのワンポット合成法(各段階で単離せず、1つの容器内で世代拡張を行う方法)を確立することができた。 (2)新規な光応答性を示すポリケイ皮酸デンドリマーの開発 AMA法により得られたポリアクリレートデンドリマーの末端に、ケイ皮酸部位をエステル結合させた新規なデンドリマーを合成した。本デンドリマーの3次元構造は、顕著な溶媒効果を示し、THF溶媒中では末端ケイ皮酸がデンドリマーの外側に孤立して存在する一方、クロロホルム溶媒中では、末端基がデンドリマー内部にバックホールディングして存在することがわかった。結果として、THF中では分子間二量化反応を優先的に、クロロホルム中では光異性化反応のみを進行させることができるようになった。有機溶媒の種類を選択することより、分子内二量化反応を優先的に進行させることも可能となった。このように、分子のコンフォメーションを変化させることにより、ケイ皮酸の光反応性を制御できるという、これまでに例を見ない知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度得られた知見に基づき、さらに簡便なデンドリマーの大量合成法を提案することができた。また、得られたデンドリマーを用いて、新規な光反応性デンドリマーを合成し、これまでにない光反応挙動を見出すことができた。以上の結果より、現在までの研究進捗状況は、おおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
デンドリマーの新規な大量合成法は順調に開拓できているが、デンドリマー構造にバリエーションを持たすという観点では、若干の遅れがみられる。今後は、新たなビルディングブロックの検討も視野に入れ、検討を進めていく予定である。 デンドリマーを利用した機能性ナノマテリアルの創製という観点では、多くの新規化合物の合成と、これまでに例のない示唆に富む現象を見出すことができており、今後は、そのメカニズムの推定とさらなる応用展開に重点を置きたい。 なお、平成24年度の予算で8万円程度が次年度繰り越しとなっている。これは、当初、学会発表のための旅費として利用予定だった予算を、学内の別の研究費で支払ったためである。この残額については、次年度の学会参加費や旅費として利用するとともに、一部は消耗品購入に充てる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の直接経費の利用可能額は58万円程度である。そのため、大半は試薬類やガラス器具類などの消耗品購入に利用することを想定している。また次年度は、本申請の最終年度であるため、積極的に対外的な成果報告(学会報告)を行う必要があり、そのための参加費、旅費等への利用も予定している。
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