2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノスケール秩序構造に着目した炭素のアモルファス・粒界構造の解明
Project/Area Number |
23710135
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
伊藤 篤史 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (10581051)
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Keywords | アモルファス炭素 / 炭素 / ナノ物質 / ナノ材料 / 分子動力学法 / シミュレーション / 密度半関数法 / ポテンシャルモデル |
Research Abstract |
本プロジェクトの目的は、アモルファス炭素のナノスケールの構造に着目し、様々な種類が存在するアモルファス炭素の特性をミクロな視点から理論・シミュレーションによって解明することである。その結果として新しい分類法の提唱や、新たな機能を持つアモルファス炭素構造の提案などを目的としており、同時にそれらを可能にする理論・シミュレーション技術の開発とそのナノカーボン研究分野・プラズマ応用ナノサイエンス分野への普及に努めている。 H23年度にはダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜堆積形成の機構を分子動力学(MD)シミュレーションによって解明するとともに、そのMDを行うために必要な理論手法として原子間相互作用ポテンシャルモデルの開発を行った。H24年度においては、そのポテンシャルモデルの普及のため、様々な分野へ向けた学会発表・講演を行い、共同研究としての欧州(ポーランド)グループへの本モデルの提供も行った。また、本モデルを炭素以外の元素へ拡張するための開発を継続中である。さらに、本ポテンシャルの開発時には密度汎関数法(DFT)によって参照エネルギーを揃えるが、昨年導入したDFT計算コードOpenMXの改良(主に高速化)に努め、電子状態計算としては大規模な1000原子程度のアモルファス炭素の電子状態密度(DOS)計算を試み、国際会議で報告した。また本高速化の一部はOpenMXの正式バージョンに採用され、「京」コンピューターをはじめとしてOpenMXの利用される多くの研究分野へ貢献したものと認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H23年度分の報告時に計画したアモルファス構造と電子状態密度の関連に関しては、先に述べたOpenMXによって順調に進み、2013年1月の国際会議での発表を行うことができた。しかしながら、もう一つの目標であった炭素系ポテンシャルモデルを別元素へ拡張する取り組みに関しては、より良い関数形の提案に手間取り進行が遅れている。それによって、アモルファス炭素のミクロ構造の解析研究においても、炭素以外の不純物元素混入の効果を調べることができていない。これらはH25年度に再度精力的に取り組む。ところで本研究で行ったDFT計算を参照してMD用ポテンシャルモデルを開発する”Dowinfolding法”は、金属系のポテンシャル開発へも転用することができ、昨年度にはタングステン-ヘリウム系の新しいポテンシャルの開発に成功し、プラズマエレクトロニクス分野・核融合分野におけるタングステンナノ構造の研究へ応用することができた。この点は期待以上の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
ポテンシャルモデル開発における炭素以外の元素種への拡張を一刻も早く軌道に乗せ、実際のアモルファス炭素研究における不純物・添加物とミクロ構造の関係の解明に取り組む。また同時にMDシミュレーションから得たアモルファス構造をDFT計算によって電子状態密度解析を行う活動においても、窒素や金属などの不純物・添加物による効果を調査し、アモルファス炭素に電子デバイスとしての機能性を付け加える可能性を探求する。特に名古屋大学の実験グループと今以上に密な協力体制をとることで、研究の発展を目指す。 並行してMDコードの並列化による高速化を行い、サブマイクロスケールのアモルファス炭素シミュレーションを目指す。これにより空間スケール的にも実際のTEM解析と比較可能になり、実験との連携をより深めることが可能となる。 また、本研究活動は三年目を迎え、これらまで開発してきた理論シミュレーション手法のさらなる応用展開にも力を入れる。そこで、我々の学会発表などを通して活動状況の宣伝を進め、名古屋大学をはじめとして各大学の実験グループとの連携体制作りに力を入れる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
宣伝活動に力を入れるため研究成果の発表に力を入れる。同時に、本研究で開発した理論シミュレーション手法を他の現象へも応用を進めていきたい。よってこれらの発表費・出張旅費として前年度までよりも割合を多く取る。また、DFTの利用によってスーパーコンピューター(以下:スパコン)の利用頻度が増えてきたため、計算コードのスパコン向けの開発環境の整備にも状況に合わせて研究費を割く。
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Research Products
(10 results)