2011 Fiscal Year Research-status Report
酸化分解反応を利用したグラフェン作製・加工技術の開発
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23710137
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
石田 暢之 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (10451444)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | グラフェン / 活性酸素 / 酸化分解 / 加工技術 |
Research Abstract |
本研究の目的は、活性酸素を用いた酸化分解によるグラフェン作製手法を確立することで、グラフェンのデバイス応用、特にプロセス技術に大きく貢献することである。これまでの研究成果から、プラズマによって生成された活性酸素を使用することでグラフェンを一層ずつエッチングできることが分かった。しかしながら、ラマン分光の結果では強いDピークが観察され、また2Dピークの減少が見られた。これは処理後のグラフェンが酸化したためと考えられる。そこで酸化した表面第一層のグラフェンを、再度別の方法を用いてエッチングすることで、清浄なグラフェン表面を作製することを考えた。グラファイトにZnを数nm堆積し、塩酸でZnを除去することで表面一層のグラフェンのみエッチングされるという報告があったため、同様の手法を用いてエッチングを試みた。その結果、酸素吸着に由来するDピークの減少が見られたものの、劇的な変化は見られなかった。つまり酸化は表面一層のみではなく、表面数層またはバルク全体に渡って進んでいると考えられる。活性酸素によるエッチングがlayer-by-layerで進んでいくことから、活性酸素は表面の炭素原子から順次反応していくと予想していたが、異なる結果が得られた。このことはグラファイトと活性酸素の反応が単純ではないことを示しており、新しい知見が得られたと言える。酸化分解を用いたグラフェンの加工技術は盛んに研究されており、今後は詳細な反応メカニズムの解明が必須である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グラファイトをlayer-by-layerでエッチングすることで、厚いグラファイトから一層のグラフェンを作製することが可能になった。しかし、ラマン分光の結果から作製されたグラフェンは酸化していることが分かった。当初、表面第一層のみが酸化され、表層はもとのグラファイトの状態であると予想し、酸化層の除去を試みたが、酸化はグラファイト内部まで進んでおり予想していたよりも、分解過程が複雑であることが分かった。そのため、活性酸素とグラファイトの反応過程のより詳細な評価が必要になった。活性酸素とグラファイト内部が反応するためには、表面から垂直方向に活性酸素が入っていく過程と、グラファイトシートのエッジ部分から層間へインターカレーションしていく過程が考えられるが、どちらの過程が生じているか特定する必要がある。この評価を行うためには、新しく実験をデザインする必要があり、そのための文献調査、装置の改良に時間を要した。実験計画は遅れてしまったが、グラファイトの酸化過程は本申請で提案しているグラフェンの加工技術の味噌となる重要な素過程であり、かつ大きな波及効果が期待される現象であるので時間をかけて評価を行うことが重要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
活性酸素とグラファイトの反応機構の詳細なメカニズムを明らかにする。特に、活性酸素がどのようにグラファイト内部に進入し、酸化が生じるかを調べる。具体的には、一層ずつグラフェンシートをはがす手法を用いて、これを行う。グラファイトシートのエッジ部分から酸化が進んでいるのであれば、何層グラフェンを除去しても表面は酸化しているはずであり、一方、表面から垂直方向に活性酸素が進んで行くのであれば、グラフェンシートをはがして行くと、どこかできれいなグラファイト表面が露出されるはずである。活性酸素のグラファイト内部への進入過程を明らかにした後、さらに酸化分解過程の動的観察を以下の方法で試みる。二酸化チタン表面にUV光を照射すると活性酸素が生成されることが知られている。そのため、グラファイトシートを二酸化チタン表面に作製し、UV光を照射しながらラマン分光計測を行うことで、グラファイトの酸化過程を動的に観察できる可能性がある。プラズマによる活性酸素生成よりもUV光による生成は効率が小さいため反応時間の制御が容易であると期待される。この実験は、活性酸素によるグラファイトの酸化過程のメカニズムの評価のみならず、二酸化チタンをコートしたAFM探針のよる、グラフェンのパターニングを行うための基礎データも提供する。当初、二酸化チタンコートAFM探針を用いたグラフェンパターニングに関する実験を計画していたが、酸化分解過程のメカニズムの詳細がまだ解明されていないため、これを継続して行うことにした。グラフェンの酸化を利用した加工技術は多く研究が行われているので、メカニズムの解明は波及効果がより大きいと考えている。研究の進捗の遅れ、また反応機構の解明に集中するように、実験計画の変更を行ったため、23年度に購入を予定していたいくつかの物品の購入を見合わせ、次年度に予算を計上することにした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
グラフェン表面の構造・電子物性評価に使用するAFMおよびKFM用探針、AFM測定用試料加熱ホルダを消耗品として計上する。二酸化チタン上でのグラフェンの光酸化分解観察用として、二酸化チタン基板、HOPG基板を消耗品として計上する。グラファイトシートを一層ずつ除去するために必要な、Znのスパッタターゲット、塩酸、ビーカー等を消耗品として計上する。研究成果の発表のため学会参加費および旅費、論文投稿費、英文添削費を計上する。
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Research Products
(3 results)