2011 Fiscal Year Research-status Report
磁性ナノ粒子自己組織化膜における超強磁性に関する研究
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23710140
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Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
山本 和生 (財)ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (80466292)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 超強磁性 / ナノ粒子アレイ / 電子線ホログラフィー / ローレンツ顕微鏡法 |
Research Abstract |
本研究は,磁性ナノ粒子を規則正しく配列させたアレイ膜中に出現する超強磁性現象をローレンツ顕微鏡法や電子線ホログラフィーを用いて直接観察し,超強磁性の特徴やメカニズムを解明することを目的としている. 直径15 nmのFe3O4ナノ粒子をカーボン膜上に自己組織化させ,単層のアレイ膜を作製した(粒子同士の間隔(edge to edge spacing)は約2 nm).この試料の超強磁性磁区構造を電子線ホログラフィーにより観察し,室温(300 K)と低温(124 K)でその構造を比較した.その結果,室温では,膜中に1~5ミクロンの渦状磁区構造が観察された.また,その磁化ベクトルの回転方向はいずれも反時計方向であった.これは,各粒子の磁気ダイポール相互作用が1~5ミクロンの領域で閉じ,集団挙動によって渦を形成し全体の磁気的エネルギーを下げているものと考えられる.また,渦状磁区の回転方向が同じであることは渦同士にもなんらかの磁気的相互作用が働いていることも考えられる.次に,TEM内で試料を無磁場中で124 Kまで冷却すると渦は無くなり,膜のエッジと平行な方向に一様な磁区が現れた.冷却することによってダイポール相互作用が及ぼす領域が広くなり,その結果として大きな磁区(40ミクロン以上)になったと考えられる. さらに,動的ローレンツ顕微鏡法により配列の乱れのあるアレイ膜を観察した結果,室温時は,100 ~300 nm領域で磁気ダイポールがある方向を向き,高速で磁化反転している様子が観察された.温度を高くするとその動きはTVレートでは捉えきれないほど速くなり,温度を下げると磁化反転が徐々に止まる様子が観察された. 以上の観察は,磁気ダイポール同士の相互作用が温度によってどのように変わるかを示しており,超強磁性のメカニズム解明に役立つ重要な結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,電子線ホログラフィーと動的ローレンツ顕微鏡法を用いて,1万倍以下の低倍率または中倍率で,磁性ナノ粒子アレイ膜に出現する超強磁性磁区の変化を捉えることが目的であった.超強磁性は温度によって大きく磁区構造が変化することが予想され,また,その変化を実験的に明らかにすることは,超強磁性の計算機シミュレーションなどに有用な情報を提供すると考えられるため,超強磁性磁区構造の温度に対する変化を直接観察することにした.その結果,冷却することによって渦状磁区がまとまり,大きな磁区になることが実験により証明できた。また、動的ローレンツ顕微鏡法により時間分解能1/30 secでの磁化反転を捉えることもできた.超強磁性の磁化反転を捉えることができたのは世界初と言え,計画通りに本研究を遂行できている.現在,論文の執筆に向けて実験データをまとめている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度で得られた実験結果を発表できる形にして,論文の執筆や新聞発表,学会発表などを通してプライオリティーを確保するのを優先する.平成24年度では,超強磁性の磁区構造をナノオーダーで評価することを予定している.ナノオーダーで磁化を検出するためには,これまで以上の計測感度を持つ位相シフト電子線ホログラフィーを用いる必要があり予備実験を含め実験の準備を進める。また、ナノ粒子のサイズや間隔なども変えて、試料の状態が変わったときの磁区構造の変化も観察する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ナノオーダーで磁化を検出するためには、位相シフト電子線ホログラフィーの使用が不可欠である。この手法は,電子線バイプリズムを用いて形成される干渉縞(ホログラム)を高精度にシフトする必要があるため,そのための高精度な電圧制御装置を購入する予定である.また,位相シフト法では多数枚のホログラムを同時に処理するため,高速な計算機も購入の予定である.これらの装置をできるだけ早く立ち上げ,ナノオーダーの磁化ベクトルを個々に捉え,平成23年度で得られた低倍率,中倍率のデータと比較し,計算機によるイメージシミュレーションを用いて,超強磁性現象の特徴やメカニズムを解明していきたい.イメージシミュレーション用の計算機も別途必要であれば、購入する計画である。
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