2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ流路のプラグ流集積による脂質二分子膜アレイの形成と計測
Project/Area Number |
23710146
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西迫 貴志 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (10431983)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ナノバイオ / マイクロ・ナノデバイス / 脂質 / 流体工学 |
Research Abstract |
脂質二分子膜を隔てた物質輸送の計測はさまざまな病気のメカニズムの解明や創薬において重要とされているが,そうした計測をハイスループットに行える汎用的手法は未だ確立されていない.そこで本研究では,マイクロ流路を用いた微小液滴生成法を利用し,マイクロ流路内で多数の脂質単分子膜を互いに接触させることで,多数の脂質二分子膜をハイスループットに作製できる装置を開発する.さらに,作製した脂質二分子膜を隔てた物質透過を,電気的あるいは光学的にハイスループットに計測できる装置を開発する.以上を踏まえ,平成23年度は以下の研究を実施した.(1)疑似ポーラス構造を有するマイクロ流路の製作:脂質二分子平面膜アレイの作製および膜を隔てた物質輸送の計測を行うためのマイクロ流路として,既存の合成石英流路に加え,新たにアクリル樹脂(PMMA)にレーザ加工を適用し,主流路幅100-200um, 副流路幅20-50um,深さを全域一様に50-100um程度とした微細溝を作製した.電気計測用に,Ag/AgClワイヤ電極を流路内に挿入した装置の検討を行った. (2) 脂質二分子平面膜アレイの作製:マイクロ流路内にて約5nLの水相液滴を生成して互いに接触させ,脂質二分子膜の作製を行った.水相として電解質バッファ(例:350mM KCl, 10mM HEPES, pH 7.4),脂質溶液としてデカンあるいはヘキサデカンにリン脂質(DOPCあるいはDPhPC)を添加して用いた.(3) 脂質二分子平面膜への膜蛋白質の組込と電気計測:イオンチャネルとしてα-ヘモリシンを組み込んだ脂質二分子平面膜アレイを作製し,脂質膜を隔てた蛍光分子(カルセイン)の輸送を光学的に確認した.また,流路外において液滴同士を接触させて脂質膜を作製し,電気生理計測を行い,チャネルの挿入による電気応答および脂質依存の応答を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロ流路に組み込んだ微細電極を用いた電気計測はやや遅れているものの,流路外における液滴接触による脂質二分子膜形成および電気計測を並行して実施し,脂質膜およびチャネルの電気応答の計測を行えている.また,蛍光分子を用いた膜透過の光学的計測は当初の見込み以上に成果が挙げられている.全体として,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,前年度に得られた結果を基にして,脂質二分子平面膜の作製と電気・光学計測の両方のHT化の実証試験を行う.さらに解析対象の膜蛋白質・輸送物質を拡張するために,膜蛋白質の組込方法やデバイスの改良について検討する.(1)ハイスループット計測の試験:流路内電気計測用の微小電極配置の検討を進める.その上で,マイクロ流路内での電気および光学計測に関し,流路内で静止した脂質平面膜に対して行う計測と,流路内で二分子平面膜を緩やかに流動させた状態での計測(シーケンシャル処理)が可能かについて検討を行う.また膜の形成と計測の基本サイクルの所要時間を短縮するための諸条件の最適化を検討する.単分子膜形成および二分子膜の形成・安定化に要する時間の短縮,マイクロ流路の長さと断面サイズ,水相と脂質溶液の体積比率の最適化を行う. 以上の試験を,1サイクルに作製および電気計測を行う膜数を(1)単一,(2)2-10個,(3)10個以上と順に増加させて実施する.流路の圧力損失や有機溶媒による壁面の膨潤のため多数の脂質膜を単一流路に直列配置することが困難な場合,チップ上に分岐・並列化した構造の利用を検討する.(2) 取り扱い対象の膜蛋白質および輸送物質の拡張:前年度に用いたバクテリア由来の膜蛋白質に加え,解析ターゲットとして有望な他の膜蛋白質を取り扱えるように各種検討を行う.そのために,脂質二分子膜への膜蛋白質の組込手法として,直接挿入法以外の手法(例えばリポソームを用いた膜融合法)の利用を検討する.また,膜透過物質として,蛍光分子以外の利用を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は,Ag/AgCl微細平面電極の作製等を翌年度に持ち越したことを受け,スパッタリング用Agターゲットや各種チャネル試薬等の高額消耗品の購入費用を次年度に持ち越しとした.最終年度の平成24年度は,これらの費用および平成24年度請求額を順次,主に物品費,旅費に使用の予定.
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