2011 Fiscal Year Research-status Report
リソグラフィを用いた分子フィルタ創製と分子動力学による細孔解析
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23710148
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平井 義和 京都大学, 先端医工学研究ユニット, 助教 (40452271)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マイクロマシン / マイクロ・ナノデバイス / 高分子構造・物性 / シミュレーション工学 / 先端機能デバイス / リソグラフィ / 粗視化分子動力学 / フィルタ |
Research Abstract |
本研究はトップダウンプロセスである紫外線リソグラフィ技術とMEMS構造材料であるフォトレジスト(感光性樹脂,以下レジスト)に関する科学的知識の融合によって,細孔径数nm~数十nmオーダーのフィルタ機能を発現する分子フィルタ創製技術の確立を目標にしている.本年度はその目標に対して,1.フィルタ細孔径の評価手法の確立と細孔径の見積もり,2.レジストの分子透過特性を評価するための新規の粗視化分子動力学モデルの構築,をほぼ研究実施計画どおりに完了した.1.フィルタ細孔径の評価:レジストの分子構造を規定する因子である架橋度を制御したフィルタ構造を三次元立体加工法によって作製し,分子透過特性を定量的に評価するためのシステムを構築した.フィルタ細孔径を見積もるために,蛍光分子Rhodamine-6Gをシリンジポンプで送液速度と圧力を制御しながらシステムに送液し,フィルタ透過前後のRhodamine-6Gの濃度変化を蛍光分光光度計で測定して拡散係数を求めた.その結果,フィルタの拡散係数は架橋度に依存し10E-8~10E-6mm2/sであることを確認した.この拡散係数は先行研究を参考にすると細孔径数nm~数十nmオーダーに値する.2.粗視化分子動力学モデルの構築:実験的アプローチでは解明できない分子透過現象を解析するために,ビーズスプリングモデルによる粗視化分子動力学モデルを検討した.その結果,架橋構造に依存した材料特性を分子レベルで議論するためには,通常の高分子材料で考慮されるFENEポテンシャル,Lenard-Jonesポテンシャルに加え,Angleポテンシャルを考慮することが必要であることを明らかにした.さらにレジストの機械的特性である弾性率の架橋度依存性の解析結果とナノインデンテーション法で測定した実測値を比較することで,シミュレーションにおける設定パラメータの妥当性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィルタ細孔径評価については当初の研究計画では阻止率を用いた方法でアプローチする予定であった.しかし実験を進めて行く中で評価方法を再検討した結果,超微量蛍光分光光度計を用いて拡散係数から細孔径を評価する方法で実施した.測定結果と文献値から研究計画に掲げたフィルタ細孔径が架橋度に依存して数nm~数十nmオーダーにあることが確認できた.一方で力学特性(伸張解析)による粗視化分子動力学法の妥当性評価は研究計画通りに進展した.弾性率の架橋度依存性について,解析結果とナノインデンテーション法による実測値で定量的な比較ができ,かつ粗視化分子動力学モデルや設定パラメータの妥当性を確認した.比較的早い時期に目標を達成できたため,5件の国際学会発表(内,3件査読付)と2件の国内学会発表を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は申請書の記載通り,実験的なフィルタリング機能の評価を継続して行うとともに,粗視化分子動力学モデルについては細孔径形成メカニズムに関する解析をして分子透過特性に関する基礎的な現象を裏付ける予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費についてはマイクロ流体デバイスを作製するためのプロセス材料や送液用試薬を購入予定である.また国際学会・国内学会に参加するための旅費や論文投稿料に充て,研究成果を国内外に幅広くアピールする.
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