2011 Fiscal Year Research-status Report
空間配列プローブ電極を包埋した3次元培養組織内の細胞応答シグナル計測
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23710151
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
殿村 渉 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (50581493)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 3次元培養組織 / 包埋計測 / 空間配列プローブ電極 |
Research Abstract |
本研究課題は、マイクロデバイス技術をボトムアップ的に展開することで、生体組織本来の性質により近づくと考えられる3次元培養組織内への埋め込み型計測を実現し、先端医療分野への応用に向けた基礎データの取得を目指す。これまで細胞吸引孔と電極を一体化したマイクロデバイスにより平面培養組織の電気生理計測を実施してきた経緯を踏まえ、空間配列プローブ電極を基本構造とするマイクロデバイスを3次元培養組織内部へ包埋することで、組織内への直接的な(1)電気刺激、(2)化学刺激、(3)光刺激を実現し、低侵襲かつ空間的な細胞応答シグナル計測を遂行する。当該年度では、まず基盤技術として、双方向(刺激・計測)に用いる空間配列プローブ電極の製作および特性評価を実施した。ワイヤーボンディング技術とレーザー加工技術を組み合わせた手法を用いることで1チップ上に高さの異なるプローブ電極を実現し、製作したプローブ電極について電気的特性評価およびゲル包埋培養に向けた機械的特性評価を行い、3次元培養組織内埋め込み型計測の実現可能性を確認した。製作した空間配列プローブ電極上でラット大脳神経細胞を用いた3次元ゲル包埋培養を28日間行い、電気生理シグナル計測をしたところ、神経細胞の成長過程に依存した活動シグナルの追跡を示唆されるデータを得ることができた。また、3次元培養組織の機能計測に必要と考えられる細胞位置制御機能や外部からの刺激システムに繋がる細胞位置計測機能についても研究開発を行った。細胞位置制御機能では、空間配列プローブ電極表面に強磁性材料を成膜することで電極先端部に磁場集中を創出し、磁気ラベル化した擬似細胞の電極先端部への磁気誘導に成功した。一方、細胞位置計測機能では、細胞の3次元位置情報を細胞のボケ画像から算出する観測システムを開発し、ゲル中に包埋した擬似細胞の3次元位置情報取得に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、マイクロデバイス技術をボトムアップ的に展開することで、生体組織本来の性質により近づくと考えられる3次元培養組織内への埋め込み型計測を実現し、(1)光刺激、(2)電気刺激、(3)化学刺激に対する空間的な細胞応答シグナル計測を遂行することで、先端医療分野への応用に向けた基礎データの取得を目指すことである。現在までに、マイクロデバイスの基本構造となる空間配列プローブ電極の製作および特性評価を実施し、ラット大脳神経細胞を用いた3次元ゲル包埋培養を空間配列プローブ電極上で行うことで、神経細胞の成長過程における電気生理シグナル計測に成功している。また、3次元培養組織の機能計測に必要である磁力を用いた細胞位置制御機能や外部からの刺激システムに繋がるボケ画像を応用した細胞位置計測機能についても成果を得ることができた。したがって、3次元培養組織の機能計測に向けた一定の基盤技術を構成することができたと考えられる。今後更なる要素技術の確立およびそれらの技術を統合することで、人為的に制御・模倣した3次元培養組織の創出および機能計測を実現することができ、先端医療分野に新しい展開をもたらすことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
柔軟な空間配列プローブ電極を基本構造とするマイクロデバイスを3次元培養組織内部へ包埋することで、3次元培養組織内への直接的な(1)光刺激、(2)電気刺激、(3)化学刺激を実現し、低侵襲かつ空間分布的な細胞応答シグナル計測を目指す。これまで得られた成果を踏まえ、まず、(1)光刺激、(3)化学刺激を実現する要素技術の確立を推進する。(1)光刺激では、これまで開発したイメージセンサを用いた細胞位置計測機能に光ファイバーを導入することで、細胞位置計測機能の更なる高精度化を図るとともに、細胞1個レベルでの光刺激システムの開発に取り組む。1チップ上に光刺激システムと細胞応答シグナル計測用の空間配列プローブ電極の集積化を行い、3次元培養組織に対する計測を実施する。(3)化学刺激では、中空マイクロニードルの製作手法・特性評価(強度・薬剤投与量)に取り組む。(a)生分解性ポリマーなどを導入した機能性マイクロニードルの実現、またはシリコン製もしくはガラス製のニードル構造とマイクロ流路の接合による実現を検討し、併せて、(b)コラーゲン・ゲル3次元包埋培養に向けた機械的特性や薬剤供給量の評価を行う。(a)、(b)の成果を踏まえた上で、1チップ上に薬剤投与用の中空マイクロニードルと細胞応答シグナル計測用の空間配列プローブ電極の集積化を行い、3次元培養組織に対する計測を実施する。最終的には、(1)光刺激、(2)電気刺激、(3)化学刺激の各要素技術を統合することで、人為的に制御・模倣した3次元培養組織の創出および機能計測を実現する。得られた研究成果については、積極的に学術論文・研究発表などを行い、随時、国内外へ発信していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費等に関しては、マイクロデバイス製作のための基板や薬品等、細胞培養実験のためのガラス・プラスチック器具や培養用試薬、蛍光染色用試薬等に使用する予定である。特に、培養細胞に対して光刺激を行うためのシステム構築に向けては、光ファイバーおよび光ファイバーを固定するための精密ステージ、イメージセンサ等を購入する予定である。また、旅費等については、最新の知見収集と研究成果を国内外に向けて発信するために、論文投稿、学会発表のための参加費、旅費、日当、英文校閲等に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)