2011 Fiscal Year Research-status Report
二層グラフェンを用いたハイブリッドメタマテリアルの創製
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23710160
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石川 篤 独立行政法人理化学研究所, 田中メタマテリアル研究室, 基礎科学特別研究員 (90585994)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | プラズモン / メタマテリアル / グラフェン / 量子エレクトロニクス / マイクロ・ナノデバイス |
Research Abstract |
二層グラフェンを用いたハイブリッドメタマテリアルの実現を目的に、グラフェン成膜技術の確立とそれを用いたデバイス作製、およびその電磁気応答解析に取り組んだ。具体的にはまず、基板である熱酸化膜付シリコン基板に対して、高配向熱分解黒鉛からの機械的剥離法を用いたグラフェン成膜技術の検討を行った。その際、基板表面にヘキサメチルジシラザンの自己組織化単分子膜を作製し、疎水処理を施すことで、得られるグラフェンの大きさと数が大幅に改善できることを見いだした。次に、成膜したグラフェンに対して顕微ラマン分光法を用いた層数分析を経て、所望の二層グラフェンをチャネル層とするデュアルゲート電界効果トランジスタの作製を行った。作製したトランジスタ構造をモデルとする、自己無撞着強束縛理論に基づく解析を行った結果、ゲート電圧を変化させることで、最大300 meVまでのバンドギャップと3 x 10の13乗 1/平方センチメートルまでのキャリア注入が実現できることがわかった。さらに、ハイブリッドメタマテリアルの光応答を明らかにするため、有限要素法に基づく電磁場数値解析を行った。まず、入力パラメータであるグラフェンの誘電率を求めるために、線形応答理論に基づく光学伝導の計算を行った。その結果、100 THz以下の赤外領域においてグラフェンは、従来の貴金属と比べて100倍程度低損失なプラズモニック材料として振る舞うことがわかった。これに基づき、幅0.5 ~ 3マイクロメートルの短冊形状を有するグラフェン構造を設計し、その光応答を計算した結果、1 ~ 10 THzの周波数領域における強い吸収スペクトルを確認した。モード解析の結果、これらの特徴的な吸収スペクトルは、グラフェン構造に励起される局在プラズモンモードに起因することがわかり、ハイブリッドメタマテリアルの構造設計に必要な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二層グラフェンを用いたデバイス作製では、一連の作製行程における作製手法および条件の確立が完了し、再現性のあるデバイス作製が予定通り実現できるに至った。また、ハイブリッドメタマテリアルに対する理論および数値解析を通して、グラフェンを用いた構造において特異的に発現する電磁界応答の知見を得ることができ、今後の構造設計と実験的評価手法の検討を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
理論および数値解析において実証した、ハイブリッドメタマテリアルの特徴的な電磁気応答の実験的評価に取り組む。具体的にはまず、二層グラフェンの赤外特性を評価するため、作製した二層グラフェンデュアルゲートFETデバイスに対し、赤外顕微分光およびTHz時間領域分光を行うことで、そのバンド構造および電子状態の解明を行う。次に、二層グラフェンに対して、メタマテリアル共振器構造を導入することで、グラフェンの電子系と局在プラズモンが結合したハイブリッドメタマテリアルを構築する。赤外顕微分光を用いたメタマテリアルの赤外特性の評価を行うとともに、二層グラフェンのバンド構造および電子状態を電気的あるいは光学的に変化させることで、能動デバイスへの応用を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度当初に行われた3割減額の予算配賦に対応した予算執行を進めた結果、年度始めに導入予定であった設備備品の購入ができず、1,198,975円を次年度に繰り越すこととなった。これらは、当初の使用計画に基づき、次年度の研究費と合わせて、作製したデバイスの実験的評価に必要な装置、および消耗品などの物品費として使用することを計画している。具体的には、デバイスの赤外特性の評価に必要な非冷却マイクロボロメータ赤外線検出器や、金ミラーやシリコンレンズなどの赤外用光学部品の購入に充てる。また、次年度の旅費およびその他の使用計画として、得られた研究成果を実験・理論の両面から系統的に整理、論文発表するとともに、国内外への学会発表に積極的に取り組むことを計画している。
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