2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710162
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 省吾 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80516766)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 知識の構造化 / 標準化 / 暗黙知 / 固有技術 / QMS / PCAPS / 患者状態適応型パス |
Research Abstract |
平成23年度に(1)個別リハビリチャートの開発,(2)統合リハビリチャートの開発,(3)リハビリパス設計モデルの開発を行った.平成24年度に(4)システムプロトタイプの開発,(5)モデルの妥当性の検証を行う予定である.(1)個別リハビリチャートの開発:研究代表者らの整理した,「必要能力表」を材料として用いた.必要能力表とは,ADL(Activity of Daily Living)を構成する細分化された"要素動作"を行うために患者に求められる"必要能力"を集約した知識ベースである.必要能力表をベースとして,ADLを構成する細分化された各要素動作を行うために患者に必要とされる能力を分析し,能力が低下している状態から健常な状態に到達するまでの過程を数段階に切り分け,どのように能力を獲得していくのか,すなわち要素動作が達成可能になっていく過程をADL(移動,更衣,食事,整容,排泄,入浴)毎に可視化した.(2)統合リハビリチャートの開発:(1)で開発したADL毎のチャートを統合し,1つのリハビリチャートへの統合を試みた.同じく必要能力表を材料とし,要素動作を達成可能になる過程を,ADLを超えて可視化を行った.(3)リハビリパス設計モデルの開発:研究代表者らの提案する「訓練導出モデル」をベースとして開発を行った.訓練導出モデルは,現在の状態から目標状態に到達するために必要なリハビリ訓練の候補を導出するモデルである.訓練導出モデルをベースとして,"リハビリチャート上の2つの中間状態を「現在の状態」「目標状態」として訓練導出モデルにインプットし,訓練導出モデルによって必要な訓練を導出することを繰り返す"ことによって,リハビリパスを設計した.リハビリパスを設計するためのシステム機能を整理し,合理的な思考プロセスと必要な知識ベース構造を設計した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究期間内に,リハビリチャートを開発し,患者の回復過程に合わせたリハビリパスを設計するための方法論の確立を目指した研究を行っている.具体的には,以下の5点を課題としている.23年度には,このうち(1)~(3)を行った.成果物として,回復過程で患者が取り得る代表的な中間状態を網羅した「リハビリチャート」,リハビリチャートと訓練導出モデルを組み合わせて,リハビリパスを設計するための思考プロセス,およびプロセスを実施する際に必要となる知識構造を標準化した「リハビリパス設計モデル」が得られた.当初の予定に基づいておおむね順調に進行しているものと判断できる.開発は,主に大久野病院(東京都,150床規模,回復期病院)で行った.医学的な制約が多い急性期に比べて,回復期は患者状態と目標状態に合わせたリハビリを提供しやすく,モデル構築に適していたものと考えられる.(1)個別リハビリチャートの開発:食事,排泄といった個別のADL毎に,患者が回復過程に取り得る代表的な中間状態を網羅したリハビリチャートを構築する.(2)統合リハビリチャートの開発:(1)で構築したADL毎のチャートを統合し,患者が回復していく過程で取り得る代表的な中間状態を総合的に表現したチャートを構築する.(3)リハビリパス設計モデルの開発:(2)で構築したリハビリチャートと訓練導出モデルを組み合わせ,リハビリパス設計モデルを開発する.(4)システムプロトタイプの開発:(3)で開発したリハビリパス設計モデルに基づいて,モデルにおける方法論を実行可能とする具体的なシステムプロトタイプを開発する.(5)モデルの妥当性の検証:(4)の結果を用いて,実際のケースにリハビリパス設計モデルを適用し,その妥当性を検証する.
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は,残っている以下の2つの課題に取り組む.(4)システムプロトタイプの開発:(3)で開発したリハビリパス設計モデルに基づいて,モデルにおける方法論を実行可能とする具体的なシステムプロトタイプを開発する.必要な知識ベースをExcel上で構築し,VBAを用いて設計過程を実行可能にするアプリケーションを開発する.聖マリア病院,飯塚病院,大久野病院で実装するため,3台のノートパソコンを準備し,開発したアプリケーションを実行可能な環境を整える.(5)モデルの妥当性の検証:(4)の結果を用いて,実際のケースにリハビリパス設計モデルを適用し,その妥当性を検証する.まずは,パスの開発を行っている大久野病院(東京都,150床規模,回復期)において,担当療法士2~3人に対して,それぞれ5~10ケース程度をリストアップして適用し,妥当性の評価を行う.評価結果に基づいて,必要に応じてパスに修正を加える.その後,聖マリア病院(福岡県,1000床規模,急性期および回復期),飯塚病院(福岡県,1000床規模,急性期)において,それぞれ5~10ケース程度をリストアップして適用する.開発したリハビリパスに沿ってリハビリを実施できるか否か,およびリハビリパスを用いることによる効果を評価する.評価結果に基づいてリハビリパスに修正を加え,必要に応じて追加で評価を行う.これらの成果ついて,品質管理学会,医療の質・安全学会,ASQ,EOQなどの学会で発表する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究を進めるにあたって,システムプロトタイプの開発費用,システムプロタイプ実装用ノートパソコンの購入費用,研究遂行のための出張旅費,学会参加費,学会参加旅費として,合計130万円の研究費を使用する予定である.内訳を以下に示す.これらの費用は,いずれもこれまでの経験から計算したものであり,精度はかなり信頼できるものであると考えられる.システムプロトタイプの開発費用(謝金):20万円ノートパソコンの購入費:15万円×3台(大久野病院,聖マリア病院,飯塚病院に各1台ずつ設置する)出張旅費:40万円(福岡×10回,青梅×10回)学会参加費:5万円学会参加旅費:20万円
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Research Products
(18 results)