2011 Fiscal Year Research-status Report
離散的制約を考慮した道路ネットワーク設計問題に対する最適化アルゴリズムの開発
Project/Area Number |
23710163
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
宮代 隆平 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50376860)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | OR / 数理工学 / 交通工学 / ネットワーク / 最適化 |
Research Abstract |
本研究は「離散的制約を考慮した道路ネットワーク設計問題に対する最適化アルゴリズムの開発」を目的とするものである.昨今の交通渋滞は時間的・経済的損失をもたらすだけでなく,地球環境にも大きなダメージを与え続けている.渋滞の改善策として道路の新規敷設や拡幅工事があるが,バイパス開通後に渋滞が増大してしまう事例のように,真に最適な道路ネットワークの設計は数理的最適化の観点からも難しい問題である.特に,道路ネットワーク設計最適化に対する既存研究では離散的制約を考慮できておらず,「ここに新規道路を0.17車線作れば渋滞が最小になる」というような不完全な答えしか得られていなかった.本研究では,現実的な道路ネットワーク設計に不可欠となる離散的制約を考慮した最適化アルゴリズムの開発を行い,効率の良い交通網実現への一里塚とする.研究計画は大きく二段階に分けられ「データ収集および数理的構造の解明」と,「得られた数理的構造を生かした最適化アルゴリズムの開発および検証」の部分からなる.平成23年度の研究計画においては,各種の道路ネットワーク設計問題について,データ収集および問題構造の解明を集中的に行う予定であった.平成23年度の研究成果として,コスト関数が非線形な関数となる問題の数理的構造について,解析および実験を行った.特に,先行研究では,単調増加な非線形関数を扱っているものがほとんどだったのに対して,本研究ではその枠を取り外し,一般的な非線形離散関数について解析を行った.結果として,従来の計算法より高速に計算が可能なモデル化を開発する事に成功し,国際会議においてこれを発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画段階では,平成23年度の研究ではデータ収集および問題の数理的構造の解明にあてる予定であった.道路ネットワーク設計の分野では非線形最適化による手法がこれまで盛んであり,離散的最適化の観点からの研究はほとんどされていなかった.今回の研究で,扱う関数を単調増加なもの以外に拡大したことにより,従来は高速に解けると考えられていた,比較的規模の小さな問題も非常に難しくなることが判明した.しかしながら,これはある意味予想していたことであり,その困難性を克服するのが本研究であるため,解くのが難しい研究データが得られたことは,予定通りの進捗である.また,もう一つの目的である,問題の数理的構造の解明についても,おおむね予定通り進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については,研究計画書に記載したとおり,主に以下の方針で進める.「高速に良い解を発見する手法の開発」:一般に最適化問題では,アルゴリズムの初期段階ではいかに良い解を発見できるかが高速化への鍵となる.これまでに様々な手法が提案されているが,そのいずれも道路ネットワーク設計問題に特化したものではないため,この部分で道路ネットワーク設計問題の特徴を生かした手法の提案を目標とし,アルゴリズムの高速性や安定性を確保する.「高速に最適性を証明する方法の開発」:最適化問題に対しては,最終的に得られた解が「最も良い」ということを証明できて計算が終了するが,これには長い計算時間がかかることが多い.しかし,解の分布などの特徴を把握することにより,この計算時間を短縮できることが知られている.また,非線形性を仮定した上でも探索範囲の削減につなげられるようなアルゴリズムも現在構想の段階にあり,平成24年度以降についてはこの部分に研究の主力を置く予定である.「アルゴリズムの適用および検証」:開発したアルゴリズムを実データに適用し,従来手法と比較し有用性を確認する.また,個々のデータに適用するのみではなく,道路ネットワーク設計問題全般に対して統一的・定性的な知見を導出することを目標とする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ワークステーションの廉価化に伴い,次年度使用額が18万円程度生じた.当該研究費については,本研究の副産物として生じた研究成果について,論文を投稿したところ採録が決定したため,当該論文の掲載料とする予定である.その他,翌年度以降に請求する研究費については,研究計画書に記載した使用計画と概ね同じである.
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