2011 Fiscal Year Research-status Report
ファクターモデルを用いた下方リスク制御のための罰則付き最適化アプローチ
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23710176
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
後藤 順哉 中央大学, 理工学部, 准教授 (40334031)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ポートフォリオ選択 / 正則化 |
Research Abstract |
平成23年度は、過年度に助成を受けた研究課題の成果である「ノルム制約付きCVaR最小化ポートフォリオ選択モデル」を、実務性を高めたモデルへと拡張することを行った。具体的には、過年度助成を受けた課題では一般的に表現されていたポートフォリオのノルムを、ファクターモデルから誘導されるノルムへと置き換えるモデルについて一通り定式化を行い、計算機上での実装、実証実験を行った。実験により、経験分布に基づく通常のCVaR最小化モデルやKonno et al.(2002)の素朴なファクターモデルを用いたCVaRとの比較実証分析を行い、いずれに対しても事後パフォーマンス(事後CVaR、(修正した形での)事後的なシャープレシオ、ターンオーバー)の向上が観察された。また、Konno et al.のモデルがファクターモデルの適合度が低い場合にはほとんど意味をなさないことを実証すると同時に、その場合にこそ提案モデルが強みを発揮することがわかった。また、理論的な進展としては、Goldfarb-Iyengar(2003)が平均分散モデルに対して示したのと同じようなロバストモデリングを採用した場合、CVaR最小化にとっては非凸性を有する難しい問題となることがわかった。 2つ目の目標としていた大規模な決定係数最大化ポートフォリオ問題の予備的な数値実験については、所属組織で研究指導をしている大学院生の修士論文の一環として行った。Yamamoto et al.(2007)らの方法に対する優位がある程度予想していた範囲で確認できたが、実装の改善を踏まえた本格的な検証は本年度以降の課題である。 また、2011年11月にアメリカで開かれたINFORMSの年次会議に出席し、関連研究の著者と情報交換を行ったほか、2012年2月から3月にかけてINFORMSで情報交換した研究者を訪ね、さらなる情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度初めに計画した通りの内容について一通り実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の進捗を踏まえ、コヒレント尺度に対するGoldfarb-Iyengar流のロバストモデルの実装と検証が次のステップとなる。昨年度の実証実験では、ファクターモデルの適合度が低い場合のみを扱ったため、いわゆるファクターモデルの係数の推定誤差については考慮しないでも良いという論理を適用した。しかし、適合度がある程度あれば、提案モデルの優位性は明らかでない。その意味で、まずは適合度がある程度ある場合の推定誤差を考慮したモデルについて検証する。そのうえで問題となるのは、当該問題が非凸性を有した問題になるという点である。それを踏まえ、アルゴリズムについての検討から始めていく。それができた暁には、モデルのどの部分の推定誤差の影響が大きいのかなどを総合的に検証したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度夏までは理論的な検討と実装および実証研究が主となる予定である。研究設備は現有のものを利用するため、少なくとも前半は大きな物品の購入の予定はない。主な研究費の使用計画としては、8月にベルリンで行われる国際数理計画法シンポジウムおよび10月に米国で行われるINFORMSの年次会議に参加し、研究成果の報告を行うとともに情報収集を行うので、そのための旅費に充当する予定である。
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