2012 Fiscal Year Research-status Report
ファクターモデルを用いた下方リスク制御のための罰則付き最適化アプローチ
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23710176
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
後藤 順哉 中央大学, 理工学部, 准教授 (40334031)
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Keywords | CVaR / コヒレントリスク尺度 / 正則化 |
Research Abstract |
平成24年度の実績は大きく3つに分類することができる。1つ目は過年度のCVaR最小化に対する分析を踏まえ、ファクターモデルのパラメータ推定から誘導されるノルムと経験分布に基づくCVaRの同時最小化を、コヒレントリスク尺度のそれへと拡張して議論した研究である。2つ目は決定係数最大化ポートフォリオに対するアルゴリズムの研究である。3つ目はコヒレントリスク尺度の概念を機会学習の1手法であるサポートベクターマシン(SVM)の文脈に取り込む研究である。 1つ目については、年度序盤に大幅な計算実験および論文の改訂を実施し、年度半ばにQuantitative Finance誌から採択の連絡を得た。また、8月にはベルリン(ドイツ)で行われたISMP(国際数理計画法シンポジウム)および11月にフェニックス(アメリカ)で行われたINFORMS annual meetingにて成果報告を行い、参加者と意見交換を行った。 2つ目については、7月頃大幅な計算実験の改訂を行った。具体的には、既存研究で扱われていた9つのデータセットでの実験に加え、疑似乱数に基づく様々なサイズのデータセットに基づく実験を行い、実用規模のポートフォリオ選択問題においても提案アルゴリズムの方が既存の方法に比べ優れていること、および、それらの優位性が変数の数や制約の数に応じてどのように変わるかを明確に示すことができた。その計算実験に基づき論文の改訂を行い、年度半ばにOptimization誌から採択の連絡を得た。 3つ目については、コヒレントリスク尺度の概念をSVMの文脈に取り入れることで、既存の方法を自然に一般化した方法が得られることを示した。また、ケーススタディとしてR&I者の格付けデータに適用し、有用な結果が得られることを示した。この論文については現在某国際学術論文誌にて査読(2回目の改訂)中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度初めに計画した通りの内容について概ね実施できたため、順調に推移していると評価している。より詳しく差異について述べるとすると、2点指摘することができる。1つは、ファクターモデルの不確実性をGoldfarb-Iyengarに倣って取り入れた場合のコヒレントリスク尺度最小化ポートフォリオ最適化問題が非凸最適化になるため、そのアルゴリズムの検討も予定していたが、計算複雑性および実用性の観点から魅力的でないこと、および、別の論理に基づき凸最適化の範囲で実験を行った結果、ある程度有効性を提示できたことなどから、非凸最適化アルゴリズムの実装は行わないことにした。一方で、コヒレントリスク尺度を取り入れたSVMへの展開は当初予定していなかったものであるが、SVM自体がノルム制約と経験的リスク尺度との組合せであることから、本年度以降展開が期待される。いずれの差異も研究の後退ではなく、前進と言えるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度まで、あるいは過年度の研究課題の進捗を踏まえ、コヒレントリスクとノルム制約(あるいは正則化項)との関係をより広い文脈で解析していくことが本年度の課題の中心となる。特に、11月まではCVaR最小化の権威であるフロリダ大学のUryasev教授のもとに滞在し、特にCVaR最小化について拡張を進める予定である。 また、6月末から7月初旬にローマ(イタリア)で開かれるEURO-INFORMS、同下旬から8月初めにリスボン(ポルトガル)で開かれるICCOPT、10月初旬にミネアポリス(アメリカ)で開かれるINFORMS年次総会に参加し、これまでに得られた研究成果の報告と、リスク最小化や凸最適化、機会学習などの最新の方法論について情報収集を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は理論的な検討と実装、実証研究のほか、研究成果の報告が主となっていく予定である。研究設備は現有のものを中心として使用する予定のため、10万円を超える物品の購入予定は現時点でない。主な研究費の使用計画としては、リスクマネジメントや数理最適化、機会学習などに関する資料収集、および、国際会議参加費の支出を中心に予定している。なお、本年度は在外研究期間中のため、当研究費から旅費の支出はない。
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