2012 Fiscal Year Research-status Report
無線ネットワークを利用したスケーラブルなデマンド型交通のシミュレーションと評価
Project/Area Number |
23710177
|
Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
向 直人 椙山女学園大学, 文化情報学部, 講師 (30453822)
|
Keywords | 交通システム / デマンド交通 |
Research Abstract |
本年度は、利用者の輸送計画として「複数顧客の相乗り」「複数車両の乗継ぎ」を円滑に運用するための研究を実施した。これは、車両・利用者からネットワークを介して集約した要求(デマンド)に加え、過去の乗降車履歴を活用することにより実現することが可能となる。本研究では、車両・利用者の情報を収集するノード(中継機)をサービスエリア内に分散配置することを想定している。そこで、分散ネットワーク環境において、集約した情報をリアルタイムに分析するために、大規模データの分散処理技術である「Hadoop MapReduce」を導入し、実運用を想定したシステムの構築を行なった。タクシーなどの輸送車両から収集できる情報には、「車両ID」、「時刻」、「緯度・経度」、「速度」、「方向」、「状態(空車または実車)」がある。最初に、これらの情報をMapReduceのフレームワークに従って、キー・バリュー・ストア(KVS)型の形式でノードに保存する。次に、分散配置された情報を統合処理し、車両の「経路履歴」や「OD表(Origin-Destination Table)」として抽出する。抽出した情報から、サービスエリア内において、利用者の交差が頻繁に発生する地域を検出することで、効果的な相乗りや乗継ぎポイントをリアルタイムに設定することができる。本研究の成果は、2013年10月に東京で開催される「第20回ITS世界会議東京2013」に、技術論文としてまとめ投稿した。また、東京23区間の顧客傾向と天候や曜日などの因果関係をニューラルネットワークを用いて逆誤差伝播法で学習することにより需要予測を行う手法を、2012年5月に岐阜で開催された「IIMSS2012」において発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的で挙げた無線ネットワークを利用した実環境における検証が達成できていない。無線ノードとして「Zigbee」を利用することを想定していたが、「開発キット」のドライバが研究環境で正常に動作しないなどのハードウェアの問題が発生した。また、当初の計画では、アプリケーション層におけるプロトコルの開発を目指していたが、開発キットを利用する場合、物理層やデータリンク層なども考慮に入れて開発する必要がある事が判明した。上記が本研究の目標達成が遅れた主な原因である。現在は、上記の問題を避けて分散ネットワーク環境を構築するため、「Zigbee」などの端末を想定したバーチャル・マシンによる仮想のネットワークを構築している。ただし、バーチャル・マシンは同一ネットワークで動作するため、実環境における電波障害などの影響を反映することができない。実用化のためには、実環境における検証・評価が必須であるため今後の課題としたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
無線ネットワークの構築は一端中断し、本年度に注力した分散ネットワーク環境における輸送計画の最適化を中心に研究を進める。これまでに、「Hadoop MapReduce」により車両情報をリアルタイムに分析し交通流の特徴量を抽出することに成功している。今後は、抽出された特徴量をどのように活かすかを検討する必要がある。「相乗り」や「乗継ぎ」に加え、配備車両の数や位置などのパラメータを考慮することで、利便性や採算性に対してどのような効果が期待できるか、まずはシミュレーションを用いて評価したい。また、これまで、シミュレーションには、主にartisocなどのエージェント・シミュレータを利用してきた。しかし、エージェント・シミュレータでは都市環境の再現には限界があるため、マクロ交通モデルを組み込んだ既存のシミュレータの利用を視野にいれるなどして、本研究の信頼性を高める必要があると考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年10月に東京で開催される「第20回ITS世界会議東京2013」への出張旅費や参加登録費として使用する予定である。
|