2012 Fiscal Year Research-status Report
ベイジアンネットを応用した操作者スキル適応型動的フィードバック生産システムの開発
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23710186
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
片岡 隆之 近畿大学, 工学部, 准教授 (40411649)
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Keywords | ベイジアン / スキル / 生産 / システム |
Research Abstract |
平成24年度に実施した研究の成果については,交付申請書に記載した「研究実施計画」のとおり,以下の2点について研究を進めることができた. 1: ベイジアンネット技術と生産システムの動的フィードバック管理方式の確立 平成23年度成果にて分類・再抽出された環境要因・操作プロセス・定量評価値に基づくベイジアンネットワークモデルと既存の対話型生産システムを半同期化させ,どのレベルの操作者が作業しても,常に表示される次の操作に対するシナリオが作業者のレベルに適するように,その値を指示するフィードバック管理方式を構築できた. なおベイジアンネットワークモデルは,Amazon.comにおける書籍購入に際し,検索した書籍を購入したユーザが他の書籍を購入する条件付確率を%表示させる技術として利用されていることでも有名であることから,本研究においても引き続きリアルタイムなシステムの構築を目指す. 2: ジョブ・ショップ・スケジューリング方式等への展開 個別生産方式の日程計画を支えるもう1つのジョブ・ショップ・スケジューリング方式について,新たに実験用生産システムのプロトタイプを構築し,各種投入順序ルールについて実験を行い,その特性をまとめることができた.さらにライン生産方式における要素作業規模,サイクルタイム,追加要素作業数の3要素を評価軸として,ベイズ推定を利用したロバスト性の高い生産計画システムのプロトタイプも構築した.要素作業の割り当てルールには,要素作業数が大規模化してもリアルタイムに処理可能な「位置付け重み付け法」を用い,要素作業時間の平均値が1つの工程に約5個まで割り付けられる程度のサイクルタイムが小さい生産計画への提案法の有効性を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的としては,近年,経営工学分野である科学的・工学的アプローチや管理技術ノウハウが再注目されている中,国内産業を支える製造分野における熟練技術者による管理技術ノウハウに関するモデリング研究がなされておらず,具体的事例が散見される程度でしかなかった.しかしながら,特に技術伝承の研究分野における知識工学や画像工学の分野では,膨大なデータから熟練者の暗黙知を計量的手法で解析する危機管理モデリングや,熟練技能者の動作スキルを画像処理技術によって分析・抽出する方法等が中心となっている.そこで本研究では,近年,確率推論の一つとして注目を浴びているベイジアンネット推論技術を応用することにより,操作者スキル適応型動的フィードバック生産システムの開発を目指している.特に本年度の研究では,「研究の目的」に記載された以下の研究課題に取り組み,次の成果を出すことができた. (目標2) ベイジアンネット技術を応用した動的フィードバック管理方式の確立 申請者のこれまでの研究成果に基づき開発された対話型生産システム(プロジェクト・スケジューリング版)の目的別(負荷平準化,メイクスパン最小化等)の操作履歴に基づき,ベイジアンネット構築支援ソフトによる条件付確率の変動に対する検知・調整方式を分析し,計画スキル抽出法のモデル化を達成できた.さらに,新規に開発する対話型生産システム(ジョブ・ショップ・スケジューリング版)に加え,ライン生産方式おいても,既に同様の方法で分析・モデル化を試み始めており,その一端は学会等で発表することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度もほぼ計画通りの研究成果がでているため,平成25年度は当初計画の通り,以下の内容について研究を進めていく. 1: ジョブ・ショップ・スケジューリング方式等への展開 個別生産方式の日程計画を支えるもう1つのジョブ・ショップ・スケジューリング方式について,さらなる追加実験を試みる.また,ライン生産方式における生産計画のロバスト性をベイジアンネット技術により推論することで,頑強性の高い生産計画法の提案ができるかどうかも試みる. 2: 生産システムの無償提供実験 個別生産方式における日程計画操作全体を包含した対話型生産システムを開発することになり,一般に無償提供(企業内実験用)することが可能となる.なお,本研究の生産システムは,全てJava言語で構築されていることから,Windows上のみならず,Linuxなどのプラットフォームに依存することなく利用できることから,様々な業界で活用が検討されると期待できる.なお具体的な実証実験先としては,山口県内にある鉄鋼業系企業を想定している.鉄鋼業は個別生産方式を適用しており,本研究の実証実験先として適しているものと思われる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は,東日本大震災の影響により,当初,交付額と支出日が未確定な状況が続いたため,国際会議(ICPR2011)への参加を学内独自予算で賄ったことにより,379千円を未使用金として計上しました. そのため,平成24年度では,平成23年度実施状況報告書にも記載した通り,アジア・太平洋圏国際会議(APIEMS2012)の外国旅費と学会発表費用に当該未使用金を充当しましたが,記録的な円高と格安航空運賃の有効活用により,平成24年度も約150千円の未使用金が発生しました.そのため,大学事務と相談し,無理に予算を使用するよりは,本制度の趣旨に基づき,平成25年度計画の外国旅費と学会発表費用分として繰り越した方が良いとの結論に至りました. 平成25年度の研究費使用計画については,繰越金を含む直接経費550千円を予定しており,内訳としては,6月にアイスランドで開催される国際会議への外国旅費350千円とその他学会発表費用50千円,連携研究者との打ち合わせに必要な国内旅費100千円,シミュレーション実験補助として謝金50千円を予定しています.
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