2011 Fiscal Year Research-status Report
走行車両および凍結防止剤散布の影響を考慮した路面すべり摩擦予測モデルの開発
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23710191
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
藤本 明宏 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (90456434)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 冬期道路管理 / 路面すべり摩擦係数 / 凍結防止剤 / 熱・水分移動 / 路面雪氷状態モデル / 車両飛散・付着 |
Research Abstract |
年々縮減される雪寒事業費の中で冬期道路の安全性を維持していくためには、凍結防止剤散布、機械除雪、ノーマルタイヤ規制、通行止め処置等の道路管理を今まで以上に適切かつ効率的に実施しなければならない。申請者らは、これまでに冬期道路の危険性を客観的に表す路面すべり摩擦係数μを熱・水分収支の観点から予測するモデル(μ予測モデル)を構築した。本研究では、μ予測モデルに道路上の塩移動のアルゴリズムを組み込んだ凍結防止剤(塩)の最適散布モデルの構築を最終目的として、本課題では道路上の塩移動を定量化する。本課題内容は研究1「道路勾配に伴う道路系外への排出塩量の定量化」、研究2「車両通過による飛散塩量の定量化」、研究3「車両への付着塩量の定量化」および研究4「μ予測モデルの妥当性の検証」に分けられる。以下に研究1~4の実施内容とその成果を記述する。研究1では、アスファルト混合物を床面に敷設した水路を作成し、路面水分移動実験を通して道路表流水の速度を明らかにした。研究2では、野外(福井県大野市六呂師高原駐車場)で人為的に湿潤路面を作成し、車両通過による飛散実験を実施した。飛散実験では、路面上の水膜厚、通過速度、車両のサイズを変えて繰り返し飛散量を測定した。この実験結果より、車両通過速度、水膜厚が飛散量に及ぼす影響を明らかにした。研究3では、凍結防止剤が散布された実道(福井県大野永平寺道路)でマグネットシートを貼り付けた車両を走行させ、走行後にマグネットシートに付着した塩量を測定した。同時に道路の水膜厚と塩濃度の計測を行い、道路の水分・塩状態と車両付着塩量の関係についてまとめた。研究4では、実道(兵庫県春日和田山道路)で計測車両を走行させ、μ、路面温度、気温、塩濃度の線的計測を実施した。路面温度およびμについて実測値とμ予測モデルによる計算値の比較を行い、モデルの妥当性を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1については、当初予定していた湿潤路面でのモデル化は完了した。しかしながら、実道での野外実験を通して路面上の水分移動(排出塩量)が雪氷状態によって大きく異なることが分かった。雪氷中の水分移動は雪氷層の毛管力や透水係数と関係し、そのメカニズムは複雑である。また道路の雪氷状態の時間的・空間的な変化はモデル化を難しくさせる。今年度は雪氷中の水分移動に関する基礎的な実験の実施も含めて、路面雪氷中の水分移動について研究を進める予定である。研究2および3については当初の計画どおり実験を行い、これらの定式化を図るためのデータを得ることができた。今年度は追加実験を実施し、データを蓄積することで本成果の信頼性を高める。研究4については、凍結防止剤散布路面で実施した野外実験結果との比較から路面温度とμに関してモデルの妥当性を得ることができた。しかしながら、対象とした道路が排水性舗装で路面上の水分が舗装内に浸透したため、大半の区間で塩濃度を計測できず、塩濃度についてモデルの検証を十分に行えなかった。今年度は研究3を行った大野永平寺道路に実施場所を移し、モデルの検証を行う予定である。なお、研究4では水位センサーと電気伝導率センサーを用いて道路系外への排出塩量を測定する予定であったが、事前調査結果、場所によって排出水量が大きく異なり、実測から排出塩量を評価することは実現的でないと判断した。本研究では排出塩量は道路の塩収支を満たすように決定される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1~3の実験を継続させて道路上の塩移動の定式化を行い、研究4で研究1~3の知見を組み込んだμ予測モデルの妥当性を検証する。以下に研究1~4の内容を具体的に述べる。研究1:雪氷中の水分移動を定式化するために、福井大学低温恒温室での水分移動実験を継続させる。研究2:当初の研究計画のとおり、車両通過による飛散実験を継続させ、飛散量と車両サイズ、走行速度、水膜厚の関係をとりまとめる。研究3:当初の研究計画のとおり、車両付着塩を調べる野外実験を継続させる。今年度は前方に車両が走行している場合(前方車両による水はねあり)を実験条件に加える。研究4:当初の研究計画のとおり、野外でのμおよび塩濃度の計測を実施し、実測値との比較からモデルの妥当性を検証する。ただし、野外観測の実施場所は、当初計画の北近畿豊岡自動車(排水性舗装)から大野永平寺道路(密粒度舗装)へ変更する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究1では、室内実験を実施するために、消耗品代(3万)、アルバイト代(6000円/日×10日=6万)として計9万円を使用する予定である。研究2では、野外実験を実施するために、消耗品代(3万)、旅費(1万×3回=3万)、散水車、中型車および普通車のレンタル代(5万×2回=10万)、アルバイト代(6000円/日×3人×2日≒5万)として計21万円を使用する予定である。研究3では、野外実験を実施するために、消耗品代(1万)、旅費(1万×2回=2万)、塩濃度測定車のレンタル代(19万×1回=19万)、アルバイト代(6000円/日×2人×2日≒5万)として計27万円を使用する予定である。研究4では、野外実験を実施するために、消耗品代(1万)、旅費(1万×2回=2万)、塩濃度測定車のレンタル代(19万×1回=19万)、アルバイト代(6000円/日×3人×4日≒7万)として計29万円を使用する予定である。上記以外に、土木学会(名古屋市)、雪氷研究大会(福山市)での研究発表代として10万円、豊岡河川国道事務所管内における凍結防止剤散布の実態調査代として4万円を使用する予定である。以上、次年度の研究を遂行するためには当初の計画とおり100万円の経費が必要となる。
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