2012 Fiscal Year Research-status Report
主観的認知ゲーム理論に基づく重要インフラの防護戦略と情報公開に関する研究
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23710192
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉田 護 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (60539550)
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Keywords | テロリスク / 情報開示 / 重要インフラ / 安心感 / 主観的認知ゲーム |
Research Abstract |
近年、政府は、重要インフラのリスク管理状況について国民に対して説明責任を果たすことが求められている。しかし、不適切なリスク管理に関する情報開示はテロリスクを増加させることにつながりかねない。また同様に、国民に不適切に不安感を与えることにつながりかねない。本研究では、テロリスクを想定したうえでの重要インフラの政府の情報開示戦略に関して、安全性を確保しつつ、国民の安心感を醸成するような総合的情報開示政策を構築することを目的としている。 今年度は、住民の視点からテロリスクをとらえることが、住民の安心感の醸成を行ううえで重要であると捉え、住民に適切な意識と行動を促すための意思決定の仕組みについて検討を行った。これまで実施してきた政府、テロリストの間のゲームではなく、住民の視点からテロリスクを捉えることを試みている。このとき,住民にとってテロリスクは、種々ある関心事の一つであり、関心を示さない住民もいることを前提とした意思決定モデルを構築し、住民の相互作用行動モデルを作成し、関心のあるグループと関心のない(他の事柄に関心がある)グループに分ける、分科会のような仕組みを設けることが、より適切な住民行動を促すことができることを示した。 なお、この成果は、第46回土木計画学会の中で発表を行い、社会基盤の安全性のみでなく、国民の観点からリスクを捉えることが、安心感の醸成を行う上でも重要であることを、多くの研究者との間で共有化することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、平成23年度は、リスク評価の主観性を考慮した複数インフラの情報開示戦略に関する分析、平成24年度は、警戒政府、無警戒政府の想定を考慮した重要インフラの情報開示戦略に関する分析、を計画しており、これらの研究はおおむね完了しており、既に学術論文として掲載され、研究発表を行っている。そのため、現在までの達成度としては、「おおむね順調に進展している」と判断する。 ただし、今年度は、次年度の研究計画として掲げていた課題、国民の安心感の醸成を考慮した重要インフラの情報開示戦略に関する分析、に取り組みはじめた年度であったが、十分な成果があがっていない。この課題については次年度も継続して実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、当初の計画通り、国民の安心感の醸成を考慮した重要インフラの情報開示戦略に関する分析に取り組む予定である。具体的には、政府、テロリスト、国民の三者間のゲームを考え、重要インフラ防護のための情報開示戦略に関する総合的な政策的知見を得ることを目指す。 また、現在、「人間安全保障工学への挑戦」という題目の本を執筆中であり、その中に本科研の研究成果を取り入れることを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、これまでの行政、テロリストに加えて、住民への情報開示の観点から分析を行う。そのため、住民の安全・安心に関する心理学関係の図書を購入することを予定している。 研究発表については、英国で開かれる国際会議Integrated Disaster Risk Management(IDRiM)で発表予定であり、その渡航費、また各種国内の学会参加のための渡航費や論文投稿料を計上している。 さらに、最終年度として、テロリスク下における社会基盤施設の防護のための総合的な政策的知見を冊子としてとりまとめることを予定している。その印刷費についても計上している。
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