2011 Fiscal Year Research-status Report
「あなたのための」地震防災・災害対策支援システムの開発
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23710193
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 真紀 (田原 真紀) 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70462942)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スマートフォン / 拡張現実 / 災害対策支援 / 個人 / 世帯 / 人間行動 / パーソントリップ |
Research Abstract |
平成23年度は(1)位置情報およびカメラ画像から得られた情報に基づいて被害状況をAR技術を用いて視覚化する手法を開発すること,(2)個人特性および家族構成の違いに応じた行動特性に関する調査を行うこと,(3)モデル地域における災害対策の調査および協力体制の確立の3つを計画していた.以下にそれぞれの課題について説明する. (1)については,スマートフォン用のARアプリケーション開発用SDKであるQualcomm社のQCARを用いたARテスト用アプリの開発を行った.地震ハザードステーションで公開されているハザード情報をダウンロードし,指定した断層による現在地の想定震度の取得とスマートフォンのカメラによって得られた画像に重ね合わせてハザード情報の表示を可能とした. (2)については,東北地方太平洋沖地震の発生を受け,被災時の死傷者軽減と人間行動,個人属性等との関係を明らかにするため,本年は東北地方太平洋沖地震における死傷者発生状況に係わる調査を実施した.また,被災時の人間行動に係わる文献調査を行った.東北地方太平洋沖地震における人間行動や死傷者発生状況を明らかにすることは,次なる災害の死傷者軽減のために不可欠な情報であり,すなわち開発するシステムにも不可欠な情報となる.当初予定していたパーソントリップデータの活用であるが,平成22年に実施された近畿圏パーソントリップ調査のデータがまだデータの精査のプロセスに留まっているため,最新のパーソントリップデータが利用できる環境が整い次第解析に着手する予定である. (3)については,京都府をモデル地域として設定した.京都府における災害対策支援に活用できるアプリに関する勉強会を立ち上げ,定期的に議論できる環境を実現した.また,防災情報の活用についても協力体制を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度計画していた次の3点に分けてまとめる.(1)位置情報およびカメラ画像から得られた情報に基づいて被害状況をAR技術を用いて視覚化する手法を開発する (2)個人特性および家族構成の違いに応じた行動特性に関する調査を行う (3)モデル地域における災害対策の調査および協力体制の確立 (1)については,当初予定していたARを活用したアプリの試作を実現できたため,おおむね順調に進展していると考える. (2)については,東北地方太平洋沖地震の発生および近畿圏パーソントリップ調査のデータ整備が終わっていないことから,東北地方太平洋沖地震における調査を中心として行った.災害対応支援策の構築に当たっては,被災事例に学ぶということが不可欠であることから死傷者発生状況に係わる調査を実施した.また,被災時の人間行動に係わる文献調査を行った.このように当初計画からの変更はあったものの,それぞれの調査はおおむね順調に進展しており,個人を対象とした支援システム構築という目的を達成するための方向性としては適切であると考える. (3)については,モデル地区である京都府との協力体制を確立し,関係者と勉強会を開催するなど協働に向けた体制作りが進んでおり,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には,京阪神都市圏交通計画協議会による近畿圏パーソントリップ調査のデータが利用できるように整備される予定である.整備が完了し,利用できる環境が整えばパーソントリップ調査データを用いた近畿圏における人の移動等に係わる分析を行う.また,東北地方太平洋沖地震の事例から,個人・世帯属性によって被災時の行動パターンが異なる事が明らかとなってきていることから,引き続き東北地方太平洋沖地震における人間行動に関する調査を進める.これらの調査は東北地方における避難にかかわる事例と関東地域における帰宅困難状況における事例を主たる対象とする. 東北地方太平洋沖地震の調査で得られた知見がそのままモデル地域である京都府に反映できるかどうかを明らかにするために,必要に応じて補足のアンケート調査を実施することを予定している.調査を実施する場合,京都府との協議の上で共同で行う予定である.近畿圏パーソントリップ調査,東北地方太平洋沖地震における人間行動調査,京都府における補足調査などを通じて,システムに必要な機能の設計を行い,システムの試作と改良を行う. 京都府との協力体制の中で,京都府の防災資源やハザード情報を組み込んだ形の試作システムの構築を進める.また,試作したシステムのテストと評価についても京都府との協力体制の下で実施し,システムの改善を行う.なお,開発するシステムは地域を越えて共通のモジュールと地域性が反映されたモジュールに分けられ,地域性が反映された部分については他の地域のデータを入力することで他の地域でも利用できるような形態を想定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
パーソントリップ調査の利用に係わる経費,京都府下におけるアンケート調査に係わる経費,東北地方太平洋沖地震における人間行動調査などに関する旅費および文献購入費,解析に必要なデータ及び地図等の購入費,試作用スマートフォンの通信費,WCEE等の学会発表旅費,成果発表に係わる経費の支出を予定している.
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