2012 Fiscal Year Research-status Report
「あなたのための」地震防災・災害対策支援システムの開発
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23710193
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 真紀(田原真紀) 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70462942)
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Keywords | スマートフォン / 拡張現実 / 災害対策支援 / 世帯 / 人間行動 / パーソントリップ |
Research Abstract |
平成24年度には,主として個人の属性や,発災後の時間フェーズに応じて必要な情報に関する分析とモデル地域である京都府および京都市行政との連携強化を行った. 考慮すべき個人属性や情報ニーズの検討を行うために,東北地方太平洋沖地震における死者発生状況に関する調査分析,サーベイリサーチセンター社が2011年4月に実施したアンケート調査に基づく回答者の属性別ニーズの分析,2011年3月12日から2011年12月31日までの朝日新聞の記事に対して,テキストマイニングと呼ばれる手法を用いて解析を行った.さらに,アンケートや新聞記事といったデータ上で見て取れる状況が被災地での実際の状況とどれほど合致しているのかや,他に考慮すべき個人属性や情報ニーズが無いかの検討を行うため,2012年11月に宮城県名取市において被災者を対象とした聞き取り調査を行った.これらを通じて各個人属性と関連のある情報や物資のニーズを体系的に示すモデルを構築することができた.個人属性に応じた状況やニーズの推移は,研究目的である「カスタムメイドされた「あなたのための」地震防災対策支援」を実現するために不可欠な情報である.今年度得られたモデルは多様な事情を持つ人々の状況をすべて網羅したものには至っていないが,個人属性を大枠に捉えることで,個人情報が利用できない場合でもある程度カスタマイズされた情報提供を可能にすることができると考える. また,モデル地域である京都府において,地域住民の災害に対する認識がどのようなものであるか,支援情報としてどのようなものを抽出することが適切であるかを検討するため,京都府職員との勉強会および京都市職員との勉強会の中でディスカッションを重ねており,協力関係を強化している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には京阪神都市圏交通計画協議会による近畿圏パーソントリップ調査に基づく属性に応じた移動の分析を予定していたが,近畿圏パーソントリップ調査のデータ公開が遅れたため,平成24年度に実施することは困難であった.そこで移動分析については平成25年度に実施する予定である. 東北地方太平洋沖地震における人間行動に関する調査分析については,「研究実績の概要」で述べたとおり,①死者発生状況の分析,②サーベイリサーチセンターによるアンケートの分析,③朝日新聞記事データによる属性別・時系列別分析,④住民ヒアリングを実施した.これらの結果から,大まかではあるものの,各個人属性と関連のある情報や物資のニーズを体系的に示すモデルを構築することができた.これは,裏を返せば,個人情報が利用できない場合でもある程度カスタマイズされた情報提供を可能にすることが可能になる事を意味する. スマートフォンなどのデバイスによる拡張現実技術を用いた防災ツールの有用性を検証するため,国際航業株式会社の浸水深を表示するARアプリを用いた実験を行った.その結果,約80%の協力者が浸水想定ARシステムの有用性を認めており,災害前に災害時にどのような状況になるかを視覚的に示す事が有効である事が認められた. 京都府および京都市の職員とも引き続き勉強会を進めてきており,協力体制の強化を進めており,住民や職員等を対象とした講演会等において,災害時に各参加者の周りで生じるであろう事例やそれぞれの属性についてヒアリングを行うなど,システムの仕様について検討を進めている.併せて災害前の利用を前提とした,システムの試作を進めている. 以上より,移動分析については当初予定より遅れているものの,個人属性に応じたカスタマイズの具体的仕様の設計に関しては当初予定より順調に進んでおり,全体としてはおおむね順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
1)平成25年度には,京阪神都市圏交通計画協議会による近畿圏パーソントリップ調査に基づく属性に応じた移動の分析,パーソントリップ調査では把握できない観光客等に関する情報の収集から,発災時間における地域の人的分布の把握や属性別の情報ニーズ等に関する検討を行う.また,平成24年度に実施した2011年東北地方太平洋沖地震の新聞記事データ分析と同様,1995年兵庫県南部地震時の新聞記事データに基づく個人属性に応じた時系列別の状況の推移に関する分析を行い,災害の違いによる状況やニーズの違いについて検討する.さらに,京都府住民を対象とした,災害時に各人が置かれる状況等に関するアンケート調査を実施し,新聞記事などでは把握できない,より個人的な事情の抽出とそれによって生じるであろう個別の問題等の抽出,検討を行う. 2)京都府および京都市との勉強会を通じて,自助・共助・公助の役割分担を考慮した直後対応支援の枠組みについて検討する. 3)平成24年度までに,システムの事前対策支援部分の試作を進めてきているが,現在までに大部分が完成してきている.平成25年度にはこのシステムの利用実験を行い,システムの改訂を行う. 1)の結果を3)のシステムに組み込み,事前対策支援部分を完成させ,1)および2)の結果を3)のシステムに組み込むことで直後対応支援部分を完成させる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
パーソントリップ調査の利用に係わる経費,京都府下におけるアンケート調査に係わる経費,東北地方太平洋沖地震における人間行動調査などに関する経費および旅費,1995年兵庫県南部地震における新聞記事分析のための新聞記事データベース購入費,関連する文献購入費,解析に必要なデータ及び地図等の購入費,試作用スマートフォンの通信費,学会発表旅費,成果発表に係わる経費の支出を予定している.
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Research Products
(5 results)