2012 Fiscal Year Research-status Report
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23710203
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
金丸 龍夫 日本大学, 文理学部, 助教 (40453865)
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Keywords | 火砕流 / 減災 / 岩石磁気 / 古地磁気 / 磁性 |
Research Abstract |
【研究成果の具体的内容】 平成24年度には,帯磁率や色などの火砕流堆積物の持ち帰り試料の性質の測定,古典的な古地磁気学的手法による実験と,本研究の核心部である加熱実験を行った.具体的結果は以下のようなものである.浅間吾妻火砕流堆積物の帯磁率と色は,高温酸化によるヘマタイトの生成との関連を示唆する予想の範囲内の結果を示した.すなわち,火砕流の一つのフローユニットの赤色酸化した部分は,非酸化部に比べて,より低帯磁率,高赤色度を示している.段階熱消磁実験を用いた古地磁気学的手法からは,対象とした浅間吾妻火砕流は,580度以上の高温で定置したことが示唆された.これらの検討結果を基づき,実験に最適な試料の選定を行い,常圧・酸化雰囲気下において,温度(600~1000度)と時間(30分~300分および徐冷)をコントロールした加熱実験を行った.600度で加熱した試料は,時間にかかわらず,開始物質よりも高帯磁率を示し,800度以上では,低帯磁率を示す,徐冷により帯磁率は上昇するという結果が得られた.色も同様に600度と800度の中間的な色調を示している. 【研究成果の意義・重要性】 天然試料の測定および古典的古地磁気学の手法による検討は,本研究テーマについての実験を行うにあたり選定した堆積物が妥当なものであったことを示している.加熱実験の結果は,天然の試料の示す物性が室内実験で再現可能な範囲にあることを示しており,今後の詳細な検討に期待が持てる.また,徐冷実験により帯磁率が上昇することはチタン磁鉄鉱がチタンにとむラメラと磁鉄鉱に分離した可能性を示しており,天然で期待される徐冷の効果が実験室内で再現できた可能性があることを示している.これにより,本調査法の妥当性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度に,東北地方太平洋沖地震への対応で,研究開始を一時保留し多少の混乱が生じたこと,調査対象とした浅間吾妻火砕流の分布地域の別荘開発により,野外調査が思うように進まなかったことから,出だしが遅れてしまった.堆積物試料を大量に採取することが出来なかったため,慎重な試料準備を行ったが,慎重になりすぎて,作業が間延びしてしまった感がある.しかしながら,実験結果が,予想を上回る明瞭な結果となっており,遅れを多少取り戻すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,天然の試料および実験生成物の構成鉱物を明らかにすることに主眼を置く. この方法としては,着磁・消磁実験により示される試料の磁気物性比較,分析電顕を用いた構成鉱物の化学組成分析などを用いる.これにより加熱実験の妥当性を評価する. 引き続く加熱実験は,還元的雰囲気下による実験を行う. 平成25年度は,本研究の計画最終年度に当たるため,データのまとめおよび研究報告の作成を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述の研究推進方策に基づき,還元的実験環境整備に約20万円,研究推進のための人件費として約10万円,報告書等の作成のために約10万円,これらのトータルで約40万円を支出する予定である.
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