2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710204
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山崎 誠子 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究員 (90555236)
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Keywords | 国際研究者交流 / 年代測定 / 断層粘土 |
Research Abstract |
断層の活動時期の推定において,上載地層法や地形学的な手法の適用が困難な断層では,断層岩そのものを年代測定する必要があるが,従来,母岩の再説物の混入等が原因で,正確な断層活動時期を検出することが困難であった。そのため,本研究では,断層運動に伴う熱水活動により晶出した自生の粘土鉱物を断層岩から高純度で分離する手法を確立するとともに,感度法によるカリウム-アルゴン年代測定の適用を試みる。 平成24年度は感度法による粘土鉱物のK-Ar年代測定を実施した.アルゴン定量においては,細粒・微量の粘土鉱物からのガス抽出・精製条件を最適化し,測定手順を決定し,平成23年度に豪州連邦科学産業研究機構にて同位体希釈法による年代測定を実施した瑞浪超深地層研究所の試料を用いて,比較実験を行なった.その結果,計算法の違いから同位体希釈法より,誤差はやや大きくなったものの,誤算の範囲で一致する年代値が得られた. また,断層周辺の原岩の各種鉱物についての年代と閉鎖温度を組み合わせて,断層周辺の熱履歴を復元し,断層粘土の年代値の妥当性と解釈法を検討した.その結果,母岩である花崗岩が脆性破壊する300℃以下の温度まで冷えた後に断層および熱水活動が起こったと解釈でき,年代値は妥当であると考えられる.さらにX線回折による鉱物組成解析によると,より浅部で生成するスメクタイトも含まれることがわかった.スメクタイトにはカリウムが含まれないため原理的にK-Ar年代では生成時期を決定することができず,細粒粘土の年代値が断層の最終活動年代とは言いきれないことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は原子力機構から産総研へと所属が変更となったものの,東濃地科学センターに出張したり,豪州連邦科学産業研究機構のZwingmann博士とメールにより議論するなどして,当初の年度目的を達成することができた.得られた成果は国際学会で発表するとともに,国際誌(Chemical Geology)に投稿し,修正後に受理される予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで対象としてきた瑞浪超深地層研究所の断層は原岩が花崗岩であるため,混入粘土が含まれないという点で有利であったが,感度法によるK-Ar年代測定を適用するには古い地質断層であった.今後は花崗岩中の活断層について年代測定を実施し,適用範囲を検討する予定である. また,細粒粘土の年代値が断層の最終活動年代とは言いきれないことが明らかになったため,断層粘土の年代の解釈法として,何がどこまで言えるのか,を整理する.繰り返し活動して熱履歴が複雑な断層よりシンプルな,地滑りで一度に生成したようなガウジがあれば,妥当な年代値が得られるのかが確かめられるため,試料採取についても検討したい.得られた成果を取りまとめて発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は年代測定に係る消耗品費,成果発表のための国際学会参加費,論文投稿料を計上している.熱水を伴う大規模な地滑り露頭が見つかる可能性のある海外の火山周辺の巡検が国際学会に合わせて行なわれるため,調査を兼ねて巡検にも参加予定である.
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Research Products
(3 results)