2011 Fiscal Year Research-status Report
海溝型巨大地震の事前検知能力を高める観測点配置と対策:十勝沖・宮城沖の事後検証
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23710212
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
有吉 慶介 独立行政法人海洋研究開発機構, 地震津波・防災研究プロジェクト, 技術研究副主任 (20436075)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 東北地方太平洋沖地震 / アスペリティモデル / 連鎖破壊 / 海底地殻変動 |
Research Abstract |
2011年東北地方太平洋沖地震の発生を受けて,従来のアスペリティモデルの観点から考察を行うと,東北地方太平洋沖地震では,M7クラスのアスペリティが連鎖的に破壊したというモデルを提唱した.また,大規模な余効すべりによって,房総半島沖や十勝沖でM8クラスの地震が発生する可能性があることを指摘した. また,東北地方太平洋沖地震と同規模の巨大地震である2004年Sumatra-Andaman地震について,3つの主要断層のうち,Sumatra-Nicobar セグメント間は地震時のすべり量が断層サイズに比例するのに対し,Nicobar-Andamanセグメント間では地震時すべり量が,連動しないで単独で破壊した時 (M8クラス) とほぼ同じであることが分かった.これらの違いは地震の規模に比べてセグメント間にある摩擦安定域が大きいほど,地震時すべり量が固有化しやすいことを数値シミュレーションから示した. 連鎖破壊の場合,巨大地震発生前に期待される地殻変動や応力変化は,M7の単独地震が発生する場合とほとんど変わらないことが数値シミュレーションから示されており,今回の東北地方太平洋沖地震でも,震源域が宮城沖で観測点が稠密な陸域から遠いため,事前検知することが困難だった可能性がある.従って,海溝付近における地殻変動観測が重要であることを指摘した. さらに,海溝付近の応力変化は,深さ30km付近の深部側よりも前駆的な変化が大きくなることを数値シミュレーションから示し,それにより"ゆっくり地震"の活動が活発化し,伝播速度が速くなるという変化の特徴について,現在,東南海地震震源域付近で展開されている地震・津波観測監視システム (DONET) などを活用することで事前検知に役立てることも議論した. これらの結果は,学会発表,研究集会,国際ワークショップの招待講演,査読付きの論文2編の誌上で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,2003年十勝沖地震と2005年宮城沖地震のモデル化を行い,観測データとの比較をする予定であったが,2011年東北地方太平洋沖地震で発生した大規模なすべり現象こそが,東北地方の海溝型巨大地震における本質的なイベントであると判断し,現段階までの数値シミュレーションと地震発生モデルについて,どこまで海溝型巨大地震に伴う現象を説明できるのか/できないのかについて,従来のアスペリティモデルに関する問題点の整理を行った. さらに,最近になって日本の研究者が中心となって提唱され始めている階層構造モデルについて,アスペリティモデルとの共通点と相違点を明確にするために,同じような地震サイクルをもつ,双方のモデルが比較できる数値シミュレーション研究に着手した. また,海底観測網の設置によって海溝付近で発生する"ゆっくり地震"が検知できる場合には,その活動度が活発化すると共に伝播速度が増大する現象が巨大地震発生前に期待されることを示した. 従って,予定の修正があったものの, 観測データと数値シミュレーションを比較した議論ができるようになってきたことから,計画はほぼ順調に進んでいると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
東北地方太平洋沖地震をモデル化する場合,2003年十勝沖地震や2005年宮城県沖地震よりも対象領域がはるかに広いため,大規模数値シミュレーションに対応したコードを開発する必要がある.そこで,東北大学との共同研究によって,ベクトル化率を高めた高速化を進める.また,プレートの形状については,構造探査などの解析結果を基に東北地方~十勝沖にかけて3次元プレート形状の数値化を行う. 特に,十勝沖付近では,プレートが大きく屈曲しているため,その効果によるすべりの伝播過程および連動性を調べる予定である.また,2003年十勝沖地震発生直後に陸域の地震計で観測されたゆっくり地震について,余効すべりの観点から説明が可能なのかを調べる.説明可能な場合,その震源付近で海底観測点を設置することを想定し,十勝沖地震発生前に期待される地震活動および海底圧力計で捉えられる地殻変動量を数値的に評価する. 計算コードの高速化が進んだ後に,十勝沖地震で解析した手法を東北地方太平洋沖地震へ適用し,地震発生前後の期間における長期的な地殻変動について,現在設置が進められている海底観測網による検知の可能性を議論する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は,概要で述べたとおり,本研究対象となっていた2005年宮城県沖地震震源域よりもはるかに巨大な東北地方太平洋沖地震が発生したことを受けて,本研究の計画予定であった宮城県沖・十勝沖地震のモデル化を取り止め,従来のモデルの問題点を精査した関係で,大型計算機の購入を延期することにした. その対応策として,モデルの見直しを進めると共に,3次元プレート境界面の離散化およびグリーン関数の計算について,現在は分解能を粗くしたものを試験的に行っている状態である. それを平成24年度は多数のコアをもつPCかWSを使って大規模なモデルの構築を行う予定である.プログラムコードについては,大規模計算に向けた解析用プログラムの最適化を進めるに当たり,業者にチューニングやソフト開発の依頼を行う.研究を進めるに当たり,研究協力者や研究集会の参加者と議論を円滑に進めるために,現地で打ち合わせを行う.また,学会発表や学術雑誌などを通じた研究成果を公表するため,投稿代や旅費などにも充てる.
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