2011 Fiscal Year Research-status Report
器官再生における遺伝子発現のエピジェネティックな制御
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23710217
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
板東 哲哉 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 研究員 (60423422)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 再生 / エピジェネティクス / ヒストンH3K27メチル化 / ポリコーム |
Research Abstract |
不完全変態昆虫の幼虫の付属肢を切断すると、数回の脱皮を経て失われた部分を付加的に再生することが出来る。フタホシコオロギでは触角や尾葉のような単純な構造だけでなく、脚のように関節から成り複雑な形態をしている構造も未切断の脚と同様の形態に完全に再生することが出来る。脚が切断されると、切断面が瘡蓋に覆われた後に傷上皮によって傷口が閉じる、次に傷上皮の直下に再生芽が形成される。再生芽は分化細胞が脱分化した細胞の集団と考えられており、高い増殖能と多分化能を持つ。パターン形成遺伝子の働きにより再生芽細胞の細胞運命が決定されると細胞は分化を起こし、失われた部分の構造を再生させる。分化細胞、脱分化した再生芽細胞、再分化した細胞のゲノムは変化しないため、脱分化過程や再分化過程はエピジェネティックな遺伝子発現制御により調節されていると考えられた。そこで我々はコオロギの切断直後の脚と切断後24時間の脚からRNAを抽出し、合成したcDNAを次世代シーケンサーを用いて解読し比較を行った。トランスクリプトーム解析の結果、14種類のヒストンメチル化/脱メチル化酵素、6種類のヒストンアセチル化/脱アセチル化酵素、5種類のクロマチンリモデリング因子、1種類のDNAメチル化酵素をコードする遺伝子の発現が再生脚で2倍以上に上昇していた。ヒストンH3K4、H3K9、H3K27のメチル化に関連する遺伝子の発現がよく変動していたことから、それら遺伝子に対するRNAiを行い脚の再生プロセスを調べた。H3K9やH3K27のメチル化状態を制御する遺伝子に対するRNAiを行うと再生脚の形態が異常になった。形態異常を示したRNAi個体の再生脚ではパターン形成遺伝子が異所的な発現をしていたことから、H3K9やH3K27のメチル化を介したパターン形成遺伝子の発現制御機構が再生芽細胞の再分化を制御すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスクリプトーム解析から同定されたヒストン修飾酵素の情報を元に、多数のエピジェネティック遺伝子についてRNAiを用いた機能的スクリーニングを行った。RNAi個体の再生脚でのパターン形成遺伝子の発現についても解析を進め、エピジェネティック因子の機能低下により幾つかのパターン形成遺伝子の発現が変化していることが分かった。これらの再生脚でのヒストン修飾を抗体を用いて調べている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒストンH3K9およびH3K27を修飾する酵素の機能をより詳細に解析する。既知のパターン形成遺伝子の発現を網羅的に解析し、エピジェネティック因子が再生過程でパターン形成遺伝子の発現を制御する機構を明らかにしたい。また再生脚のトランスクリプトーム解析から多数の転写因子が同定出来ているので、それらについてもRNAiを行い、エピジェネティック因子と共役する転写因子の同定を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ベクターの構築が予定通りに進まず繰越金が生じた。繰越金は、次年度に他のベクターを構築する目的に使用したい。
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Research Products
(12 results)