2012 Fiscal Year Annual Research Report
器官再生における遺伝子発現のエピジェネティックな制御
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23710217
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
板東 哲哉 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60423422)
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Keywords | エピジェネティクス / 器官再生 / 脱分化 |
Research Abstract |
コオロギなど不完全変態昆虫は高い再生能を持ち、幼虫の脚を切断すると数回の脱皮を経て未切断の脚と同様の大きさと形態に再生することができる。再生される領域は、切断後すぐに断端近くに形成される再生芽に由来する。再生芽細胞は分化細胞が脱分化した細胞で増殖能が高い。分化細胞と再生芽細胞で発現が変化する遺伝子を同定するため比較トランスクリプトーム解析を行ったところ、再生芽でJAK/STATシグナル関連因子の発現が上昇していた。そこでJAK/STATシグナル因子に対するRNAiを行ったところ、コオロギは再生不全の表現型を示したことから、比較トランスクリプトーム解析により再生に必須の因子が単離できることが分かった。再生芽で発現が上昇する因子としてエピジェネティクスに関連する因子も多数単離され、特にヒストンH3の27番目のリジン残基(H3K27)をメチル化するEnhancer of zeste(E(z))、脱メチル化するUtxの発現が顕著に上昇していた。E(z)やUtxに対するRNAiを行ったところ、再生脚の形態に異常が見られた。抗メチル化ヒストンH3K27抗体を用いた免疫染色から、E(z)(RNAi)個体ではヒストンH3K27のメチル化は著しく減少しており、Utx(RNAi)個体ではメチル化が亢進していた。これらRNAi個体の再生脚では、形態異常を示した領域において脚のパターン形成を制御する遺伝子群の異所的発現や発現の消失が観察され、脚再生過程においてパターン形成遺伝子群の再発現にヒストンH3K27のメチル化を介したエピジェネティックな発現制御機構が働いていることを明らかにした。これらエピジェネティック因子の遺伝子破壊やパターン形成遺伝子の発現の可視化のため、人工制限酵素ZFNやTALENを用いたゲノム編集の実験系を構築した。
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