2011 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエpiRNA生合成経路におけるTudorの機能解析
Project/Area Number |
23710219
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西田 知訓 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (10598436)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | piRNA生合成 / TUDORドメインタンパク質 / PIWIタンパク質 |
Research Abstract |
Tudor(Tud)のpiRNA生合成経路における詳細な作用機序の解明を目的とする。Tudの詳細な作用機序を明らかにするため、Tudと特異的に結合する新規因子の同定を試みた。ショウジョウバエTudのN末150アミノ酸を抗原にしてモノクローナル抗体を作製し、この抗体を用いて免疫沈降を行ったが新規因子の同定には至らなかった。同時期に作製したカイコTud(BmTud)に対するモノクローナル抗体を用いて、カイコ生殖細胞由来の培養細胞であるBmN4から免疫沈降を行ったところ、他の生物においてpiRNA生合成経路で関与するSpindle-E(Spn-E)のホモログ(BmSpn-E)を同定した。しかし、Spn-EのpiRNA生合成経路における詳細な機能については不明である。BmTud免疫沈降物には、カイコのPIWIタンパク質であるSiwiも含まれることから、BmTud、BmSpn-E及びSiwiは、複合体を形成すると考えられる。BmN4を用いてBmSpn-EのRNAiを行うとpiRNAが減少することから,カイコにおいてもBmSpn-EはpiRNA生合成経路に関与すると考えられる。BmTudと相互作用を確認するため、BmSpn-Eに対するモノクローナル抗体を作製した。この抗体を用いて、BmTud免疫沈降物のウェスタンブロット解析を行うとBmSpn-Eのバンドが検出された。この結果より、BmTudとBmSpn-Eの相互作用を確認できた。TUDORドメインタンパク質であるKrimperが卵巣と精巣において機能している段階が異なっていることを明らかにした論文に関わった(Frontiers in GENETICS, 2011)(第三著者)。この論文の中で、卵巣と精巣におけてpiRNA生合成経路関連因子が蓄積するNuage形成の階層関係が異なっていることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショウジョウバエ個体を用いてTudのpiRNA生合成経路における詳細な作用機序の解明を試みていたが、新規因子の同定には至らなかった。しかし、BmN4細胞及びBmTudに対するモノクローナル抗体を用いた解析により、Tudと特異的に結合する因子としてBmSpn-Eを新たに同定することができた。さらにBmSpn-Eに対するモノクローナル抗体を作製することに成功した。BmSpn-Eは、RNAへリカーゼドメインを有していることからpiRNA前駆体との結合または成熟型piRNAのPIWIへのloadingに関与すると考えられる。今後、BmSpn-Eの詳細な解析を進めることにより、本研究の目的であるpiRNA生合成経路の解明に近づけると考える。本研究は、おおむね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度、BmTudの新規結合因子としてBmSpn-Eを同定した。カイコにおいてもBmSpn-EはpiRNA生合成経路に関与することが判った。BmSpn-Eは、RNAへリカーゼドメインを有していることからpiRNA前駆体との結合及びloading、または成熟型piRNAのPIWIへのloadingに関与すると考えられる。また、BmSpn-EはTUDORドメインを持っているため、SiwiとsDMA修飾を介して結合する可能性がある。現在、BmSpn-EのRNAiによるSiwiへのpiRNA loadingの影響の有無を確認する予定である。BmSpn-EのRNAヘリカーゼドメインとTUDORドメインの変異体によるrescue実験を行うことによりBmSpn-Eがどの様にpiRNA生合成経路で機能しているのかを明らかにできると考える。in vitroにおけるpiRNA生合成経路の確立を試みる。この系を確立することによりpiRNA生合成経路に関与する因子の詳細な分子機序を明らかにできると考える。最終的に、得られた結果を総合的に考えることでpiRNA生合成経路がどのような順序で反応しているのかを明らかにしてできることを目標とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
BmSpn-EのRNAiによるSiwiへのpiRNA loadingの影響の有無の解析及びpiRNA生合成経路関連因子の解析には、RNAiを効率的に行う必要がある。BmN4細胞では、精製度の高いsiRNA duplexesを使用することにより、効率的に遺伝子を抑制することが可能である。siRNA duplexesは、高価であるとともに合成、精製を簡単にできるものではない。そのため、業者にRNAを委託する以外方法がない。また、BmN4細胞のRNAiのためにsiRNA duplexesを効率的に導入する試薬も必要とされる。BmSpn-Eに対するモノクローナル抗体を用いて免疫沈降を行うことで特異的な因子が結合することが判明した。その因子を同定するには、業者に委託したほうが迅速かつ正確な同定結果が得られる。これらの因子を同定することで、更にpiRNA生合成経路を明らかにすることができる。in vitroにおけるpiRNA生合成経路を確立するために、精製度の高いRNAを必要とする。piRNAの受け渡しを調べるために、高価であるとともに合成、精製を簡単にできるものではない。そのため、業者にRNAを委託する以外方法がない。未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
|
Research Products
(6 results)