2012 Fiscal Year Research-status Report
5’キャップ構造、アンチセンス、プロモーター近傍RNAの機能の解明
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23710222
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
DE・HOON MICHIEL 独立行政法人理化学研究所, LSA情報基盤施設, 研究員 (70525617)
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Keywords | CASPAR / RACE / anti-sense RNA / poly(A)-minus / genomic extent / subcellular localization / transfection |
Research Abstract |
今年度、私たちはCASPAR(キャッピングされたアンチセンス・プロモーター関連制御)転写物の正確な5’末端と3’末端を決定するためにRACEライブラリのハイスループット・シーケンシングを行った。RACEライブラリは酢酸ミリスチン酸ホルボールによる刺激を与える前および96時間後について、THP-1細胞から抽出した核内RNAと細胞質RNAを別々に用意した。両方の時点および核内RNAと細胞質RNAについて、RACEライブラリ内で13個のCASPAR転写物およびポジティブコントロールのヒストン転写物をすべて確認。このRACEライブラリから、CASPAR転写物には特異的な5'末端と3'末端があり、私たちの仮説通り、これらは機能的で、ランダムではなく、分離生成物でもないことが判明した。また、3'RACEデータから、CASPAR転写物にはポリA尾部がないことも確認された。 その後、私たちは発現ベクターを作成し、CASPARをTHP-1細胞にトランスフェクトしたが、ポリA尾部がないため、これは困難だった。テストとして、私たちはSPI1遺伝子とオーバーラップするCASPAR転写物を選択し、THP-1細胞へのトランスフェクトを試みた。私たちはqPCRによる発現測定により、トランスフェクションが成功したこと、およびCASPAR転写物配列を含む発現ベクターがTHP-1細胞内で転写されていることを確認した。これまでのところ、SPI1センス遺伝子の発現レベルの測定結果は、トランスではCASPAR転写物が機能しないことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本プロジェクト開始後まもなく、研究実施計画に記載されている実験担当者がほかの研究所の仕事を得て、理研を離れることになった。私たちは当研究室のほかのメンバーの手を借りて実験を行うことができたため、当プロジェクトの遅れを限定的なものに抑えることができた。2013年度には、当研究室のポスドクが彼の時間の50%を本プロジェクトに費やせるようになる。これは本プロジェクトを成功裏に完了するのに十分であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
CASPAR転写物1個をトランスフェクトした当初の実験結果は、CASPAR転写物による制御はトランスでは機能しないことを示唆している。しかしながら、既にクローンは用意されているため、当初の計画通り残り12個のCASPAR転写物についてもトランスフェクション実験を行い、センス遺伝子の発現レベルを測定することで、制御効果を評価する。センス遺伝子の発現レベルに対する制御効果が一切確認されなかった場合、鎖特異的siRNAを用いたCASPAR転写物のノックダウンを試みる。センス遺伝子の発現に差異が認められたCASPARについては、CAGE発現プロファイリングを行い、CASPAR転写物による下流の制御効果およびセンス遺伝子のプロモーター領域上の転写開始点の位置の変化を評価する。どのCASPAR転写物にもセンス遺伝子の発現レベルに対する制御効果が認められなかった場合は、トランスフェクトした細胞から抽出したRNAについてマイクロアレイによるプロファイリングを行い、先日、SINE B2を持つ長鎖ノンコーディング・アンチセンスRNAで観察されたように(Carrieri et al., Nature, 2012)、CASPAR転写物に転写後の制御効果があるか評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当プロジェクトの執行中、提案書で説明した実験を行っていた研究所員が理化学研究所を退所したため、プロジェクト自体に遅れが生じた。残りの予算の大部分は、トランスクリプトーム・シーケエンシングに充てる予定である。現在プロジェクトの最終ステップであり、当シーケエンシングは群を抜いて最も高額なものであることが、プロジェクトの最終年度に多額の予算が残されている理由である。 当初の科研費申請の際に記載したとおり、私たちは次にこれらの転写物の生物学的機能を調査する。私たちはCASPAR転写物を最大4個まで選択し、ハイスループット・シーケンシングを活用したCAGE(キャップによる遺伝子発現解析)実験によってゲノムワイドな制御効果を測定する。陰性対象条件1つを含む合計5つのサンプルに対するCAGEライブラリの準備に約90万円かかり、HiSeq 2000 V3シーケンサーの2レーンを使用したハイスループット・シーケンシングには47万4000円かかる。当初の科研費申請書に記載したとおり、出版費用として30万円割り当てる。残りの21万5000円は、CASPAR転写物の準備および、そのTHP-1細胞へのトランスフェクションのために確保しておく。
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