2012 Fiscal Year Annual Research Report
栄養環境依存性ヒストン脱メチル化酵素による肥満エピゲノム形成機序の研究
Project/Area Number |
23710226
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
日野 信次朗 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (00448523)
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Keywords | エピジェネティクス / エネルギー代謝 / 肥満 / ヒストン脱メチル化 |
Research Abstract |
本研究は、栄養環境依存的な代謝エピゲノム形成機序を解析し、肥満病態との関連性を明らかにすることを目的として実施された。これまでにヒストン脱メチル化酵素LSD1がエネルギー消費遺伝子の抑制に関わることを明らかにしており、今年度はLSD1の分子機能を解明する目的で、以下の研究を実施し、成果を得た。 ① 肥満環境におけるLSD1分子機能の解析 LSD1が肥満環境においてどのように機能するかを検討する目的で、肥満関連刺激を施した脂肪細胞におけるLSD1のmRNA/タンパク質発現変化を検討した。LSD1発現は高グルコース負荷時に低グルコース負荷時と比較して有意に上昇したが、炎症性サイトカイン(TNFα、IL-6)処理では変化はなかった。一方、LSD1の抑制標的であるエネルギー消費遺伝子群は、インスリン刺激下で発現が低下したが、LSD1阻害下ではその効果は認められなかった。以前に見出した、肥満マウス由来の脂肪組織でLSDがエネルギー消費遺伝子の発現を抑制する点と合わせて考えると、LSD1は過栄養負荷・取り込みに応答して発現上昇、活性化され、エネルギー消費を抑えることが示唆された。 ② 細胞内FAD合成とLSD1機能の解析 GAL4-LSD1融合タンパク質を用いたレポーター遺伝子試験において、LSD1依存的転写抑制作用が、FAD合成を阻害する化合物lumiflavin処理によって消失した。また、lumiflavin処理下において、LSD1 mRNA発現は変化しなかったが、タンパク質量は減少した。これらの点から、LSD1による遺伝子制御機能は細胞内FAD合成に強く依存しており、低FAD濃度下ではLSD1タンパク質の不安定化または翻訳抑制が惹起される可能性が示唆された。 これらの成果は、環境とエピジェネティクス機構の相互作用や、生活習慣関連疾患の分子機序を考える上で重要な知見であると考えられる。
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