2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中戸 隆一郎 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (60583044)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ゲノム機能解析 / ChIP-seq / 3C |
Research Abstract |
酵母については、ゲノム上で有意に増幅している領域を抽出し、任意の解像度・スケールで描画するプログラムをほぼ完成させた。本プログラムは、ChIP-seq・ChIP-chipデータに対して、遺伝子やセントロメア、複製開始点などの情報を含め、複数のサンプルでも同時に可視化することができる。本プログラムを用いた共同研究による成果は論文で発表された [Tanaka et al. 2011, Masumoto et al. 2011, De Piccoli et al. 2012]。一方ヒト細胞の場合、ゲノムに対して十分なタグ数を得ることが難しく、マッピングの難しいリピート領域、未解読のセントロメア領域などが存在するなど、困難な問題がある。本研究では数多くのサンプルを用いて実験を行い、ヒトにおいてはシーケンスするDNAサンプルの質が得られる配列データのクオリティに強く影響すること、その影響を考慮するためにゲノムのカバー率(1つ以上のリードがマップされる領域の割合)を考慮したタグ数正規化を行うことが精度の面で重要であることを発見した。これに基づき改良したプログラムでは、偽陽性が減少し、より良い精度のピーク抽出が可能となった。更に本プログラムを用いて、コルネリア・デ・ランゲ症候群と呼ばれるコヒーシン異常の病気の患者のB細胞中で、正常な細胞と比較してコヒーシンの結合がどう変化するかを調べた。その結果、患者の細胞では全てのコヒーシン結合部位において結合強度が2割程度減少していること、それにより得られるピーク数が3割程度減少することがわかった。更に、コヒーシンの大部分はCTCFと共局在することが知られているが、CTCFと独立なコヒーシン結合部位は患者の細胞では消えていること、その消えた部位がB細胞特異的な転写因子と共結合しているらしいことがわかった。これらの成果について、現在論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の最大の目的は、種々のDNA-タンパク相互作用によって制御されるゲノム機能を体系的に理解することである。様々な条件検討の末、本研究室のシークエンサを用いた3Cの実施環境を構築することができた。網羅的に3Cデータを得る段階までは進んでいないが、一方で平成24年度に予定していたタンパク結合部位抽出法の改良は進めており、より高精度なピーク抽出法を開発しただけでなく、そのプログラムを用いて酵母・ヒト共にいくつかの知見を得ることができ、酵母に関しては成果の一部が論文で発表された [Tanaka et al. 2011, Masumoto et al. 2011, De Piccoli et al. 2012]。ヒトにおけるコヒーシンによる転写制御メカニズムの解明は、ゲノム機能の体系的な理解に大きく寄与すると考えられる。本研究で開発・改良したピーク抽出プログラムは、高精度かつ既存手法よりも高速・省メモリに解析することが可能である。今後、実際のデータを解析する中でより多機能・頑健なプログラムへと改良していく。また、本科研費でWebサーバ用ワークステーションを購入した。Webサーバの設定も済ませており、発表した研究データを公開可能な状態にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノムの立体構造を考慮した解析について、本研究室のシークエンサを用いて3Cを実施するための系を構築した。今年度は、コヒーシンを足場として3次元空間上に近位に存在するDNA配列のデータを網羅的に収集し、染色体立体構造とコヒーシン局在部位との相関を探る。また、本研究で得られたコヒーシンの結合部位データを詳細に調べた結果、SWIと呼ばれる複合タンパクがコヒーシンと共局在することを示唆するデータを得た。SWIについては、3Cを用いて結合部位とDNAの立体構造との関連を局所的に調べた既存研究が存在するので、その3Cデータを利用し、コヒーシンの局在部位との相関を調べた。その結果、HeLa細胞において、SWIによって近接しているDNA領域にコヒーシン及びコヒーシンローディング因子も結合していることがわかってきた。これは、コヒーシンがSWIを介して転写制御を行っていることを示唆している。これらの転写制御の機構解明を目指す。SWIの因子をノックアウトした状態でコヒーシンやコヒーシンローディング因子の結合部位がどう変化するか、それらが遺伝子の発現量に直接影響するかを、新たなデータを生産しながら解析する。更に、コヒーシンと関連・共結合する他のタンパクとの機能の相関をdry・wetの実験両面で調べ(wetの実験に関しては本研究室の他の研究者に協力を依頼する)、コヒーシンが転写にどのように関連しているかを洗い出す。本申請で開発しているピーク抽出プログラムも更に改良し、より高精度かつ多機能なプログラムを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
より高性能な解析用ワークステーションの購入、学会での研究発表、論文投稿費として使用する予定である。また、本研究で必要となるChIP-seq実験のための試薬も必要に応じて購入する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Replisome stability at defective DNA replication forks is independent of S-phase checkpoint kinases2012
Author(s)
De Piccoli, G., Katou, Y., Itoh, T., Nakato, R., Shirahige, K., and Labib, K.
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Journal Title
Molecular Cell
Volume: 45
Pages: 696-704
Peer Reviewed
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