2011 Fiscal Year Research-status Report
免疫応答の制御に関与するプロモータの網羅的な構造特徴の抽出とモデル化
Project/Area Number |
23710234
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
VANDENBON ALEXIS 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任研究員(常勤) (60570140)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 自然免疫 / バイオインフォマティクス / 配列解析 / 転写制御 / エピジェネティクス / 転写因子 / マクロファージ / 樹状細胞 |
Research Abstract |
本年度はヒストン修飾などの網羅的、経時的データの取得およびデータ解析手法の開発を目指した。まず、RNA polymerase IIの染色体上での分布を調べるために、クロマチン免疫沈降法(ChIP)の条件の最適化を行った。基本的にはYoungらの方法に従い、細胞数などに基づいてformaldehydeによる固定時間、超音波処理の強度、回数などの検討を行い、良好な条件を得ることができた。一方、H3K4me1, H3K4me3, H3K27me3, H3K27Acなどに関しても予備実験を行い、同様に最適化された方法を確立した。一方、予算的な制約を克服するべく、シーケンシングのmultiplex化を目指し、種々のキットの条件の最適化を行った。これにより予算内でより多くのヒストン修飾データをより短期間に得ることができると期待される。一方、データ解析手法の確立を目指し、既存のChIP-seqデータと未発表の転写開始点シーケンシング(TSS-seq)データを用いて種々のクロマチン構造、すなわち活性および非活性プロモータ、エンハンサー、または閉じたクロマチンなどの構造を決定する配列の特徴抽出を試みた。まずTSS-seqピークの有無、すなわち転写活性の有無およびH3K4me1, H3K4me3, H3K27me3といったヒストン修飾によってゲノム配列を分類した。その後各クラスタについてDNA配列の特徴抽出を行った。結果、転写因子PU.1がプロモータおよびエンハンサーを決定するのに重要であることを確認できた。一方AP-1モチーフがエンハンサー配列において有意に多く存在し、プロモータにおいては有意には存在しないことが判明した。さらなる解析から、全ゲノムのエンハンサー配列はPU.1とAP-1がともにあるもの、もしくはPU.1またはAP-1しか持たないものに分類できることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は1)ヒストン修飾などの網羅的、経時的データの取得および2)データ解析手法の開発を行うことを予定していた。1)については未だデータを得ていないものの、クロマチン免疫沈降法(ChIP)の条件の最適化を行い、細胞数などに基づいてformaldehydeによる固定時間、超音波処理の強度、回数などの検討を行い、PolII, H3K4me1, H3K4me3, H3K27me3, H3K27Acなどに関して良好な条件を得ることができた。さらに、予算的な制約を克服するべくシーケンシングのmultiplex化を目指し、種々のキットの条件の最適化を行うことで、予算内でより多くのヒストン修飾データをより短期間に得ることができる方法を確立した。2)については、既存のChIP-seqデータと未発表の転写開始点シーケンシング(TSS-seq)データを用いて種々のクロマチン構造、すなわち活性および非活性プロモータ、エンハンサー、または閉じたクロマチンなどの構造を決定する配列の特徴抽出を試みることで、今後得られるデータを用いた解析の基礎を確立した。ゲノム配列をヒストン修飾やTSSの有無によってクラスタリングしし、各クラスタについてDNA配列の特徴抽出を行うことで、転写因子PU.1がプロモータおよびエンハンサーを決定するのに重要な役割を持っていることを確認できた。一方、AP-1モチーフがエンハンサー配列において有意に多く存在し、プロモータにおいては存在しないことが判明した。さらなる解析から、全ゲノムのエンハンサー配列はPU.1とAP-1の組み合わせがあるもの、もしくはPU.1またはAP-1しか持たないものに分類できることが示唆された。これらの結果から、一定の方法論の確立に成功したと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は実データの取得のための大規模な細胞培養、ChIP、およびmultiplex化した次世代シーケンシングの実施を行う。マウスから大量の骨髄細胞を調製し、GM-CSF存在下で一週間培養することで樹状細胞を調製する。前年度に決定した条件を用いてChIP-seqに供する。さらに、DNase hypersensitive regionをsequencingで決定する方法(DHS-seq)を行うため、条件検討と実データの取得を行う。また、実験の進捗に応じて、nucleosomeの位置情報を取る実験の条件検討とデータ取得を行う。得られたデータについて、前年度に確立した方法を用いて解析を進める。さらに、すでに取得したRNA-seqデータとTSS-seqデータを用いてプロモータ活性、エンハンサー活性を定義し、それに付随するクロマチン構造変化を同定、確率モデルやその他の機械学習的パターン認識手法を用いて、どのクロマチン構造変化がプロモータをプロモータたらしめ、エンハンサーをエンハンサーとして特定するかを同定することを目標とする。前年度の解析結果から、刺激前後という二点のデータの比較のみでもH3K4me3で数100箇所以上、H3K27me3で1000箇所程度変化のある領域を同定することができ、本年度取得するデータはより詳細な時系列データであることから、免疫応答時のより多くのクロマチン構造変化が同定されると考えられる。このデータを用いることで、プロモータ、エンハンサーの制御機構をより明確にすることができると期待される。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に実験に使用する。細胞培養に必要な試薬、器具(サイトカインGM-CSF (Peprotech)、血清、メディウム、シャーレ等)を購入する。ChIPに必要な試薬としては、固定液、抗体、Protein G結合ビーズ(Dynabeads Protein G, Invitrogen)、洗浄用バッファーなどがあり、キットやこれらを作製するのに必要な試薬を購入する費用を計上する。次世代シーケンシングは必要なキット(TruSeq SR Cluster Kit v3, cBot-HS (1 flowcell), TruSeq SBS Kit v3 - HS (50 cycle))、およびマルチプレックス化に必要なキット(NEXTflex ChIP-seq Barcodes-12)を購入する。また、データ量が膨大になるので、ストレージデバイスの購入する必要が生じる。前年度においては条件検討用の抗体を購入したが、繰越分をシーケンシング試薬の購入に当てる。
|