2012 Fiscal Year Research-status Report
免疫応答の制御に関与するプロモータの網羅的な構造特徴の抽出とモデル化
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23710234
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
VANDENBON ALEXIS 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教 (60570140)
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Keywords | 自然免疫 / バイオインフォマティクス / 配列解析 / 転写制御 / エピジェネティクス / 転写因子 / マクロファージ / 樹状細胞 |
Research Abstract |
平成24年度はLPS刺激時の樹状細胞内におけるクロマチンの経時的状態変化を調べることを目的とし、次世代シーケンサを用いたChIP-seqを大規模に行った。インデックス付加によるマルチプレックス化および免疫沈降ステップ最適化により、多くの修飾について効率良くデータを得ることが可能となった。これを用いて、RNA Polymerase II, H3K4me1, H3K4me3, H3K27me3, H3K36me3についてのChIP-seqの計測を行った。 データ解析の面では新規実験データの解析に着手し、このデータと、以前同じ細胞種に対し同様の刺激を加えて取得しておいた別種の計測データ(RNA-seqおよびTSS-seq)、および25種の転写因子に対する公開データ(Chip-seq)とを統合した。この解析結果は興味深く、今後の解析に大きな示唆が得られた。一方、本研究でのデータ解析のための手法も整備し、論文として発表した。転写因子による組み合わせ依存的な制御の計算による予想方法を開発し、樹状細胞においてNK-κBおよびC/EBPαに組み合わせ依存的に制御されている遺伝子群を同定し、実験により検証した(BMC Genomics 2012、およびInCoB2012にて口頭発表)。また、転写開始点やヒストン修飾部位などの基準点に対し特定の距離に局在化した転写因子結合部位の予測を行う方法を開発し、免疫刺激後の樹状細胞において発現が変化する遺伝子群など、多くのデータセットに適用した(BMC Bioinformatics 2013)。さらに、新規公開された転写因子のChIP-seqデータを解析して、結合転写因子の違いによって定義されるエンハンサーとプロモーターのサブクラスを決定した。現在はこれらのサブクラスの機能の違いを解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予算内でより多くのサンプルに対するデータ取得を行うための条件検討を行ない、平成24年度より実験データ取得を開始したが、ヒストン修飾データにおいてS/N比不良の問題が発生した。このため、当初計画よりも実際のデータ取得に遅れが生じてしまったが、RNAPolymeraseII, H3K4me1, H3K4me3, H3K27me3, H3K36me3についてのシーケンス実験は完了させることができた。平成25年度に、残るH3K27Ac, H3K9K14acのChIP-seqおよびFAIRE-seqを実施する。 実験と並行して、予備的解析のために公開データを用いた新しい方法論の開発を行い、2つの研究成果を公表した。ひとつは、転写因子の組による組み合わせ依存的な転写制御を解析したものであり、もうひとつはゲノム内の基準点から特定の距離にある転写因子結合部位のエンリッチメント解析のための新しい方法の開発についてである。また、結合転写因子が異なるエンハンサーとプロモーターのサブクラスを解析している。 現在、我々は得られた実験データの解析に同様の手法の適用をすすめており、転写制御とエピジェネティクスによる制御との相互作用について明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、H3K27Ac, H3K9K14acについてのChIP-seqおよびFAIRE-seqを実施し、今までのデータと合わせて特徴抽出を行う。免疫刺激後の遺伝子発現、エピジェネティックマーカー、転写因子結合における変化について計算による解析を行う。転写因子結合とヒストン修飾変化の相互作用について特に考慮する必要がある。ChIP-seq経時変化データの利用によって、転写因子結合とヒストン修飾の間の因果関係、および、それらがどのように遺伝子刺激後の遺伝子発現を制御しているかを推定する。 具体的には、プロモーター領域およびエンハンサー領域の定義、および刺激後のこれらの領域のヒストン修飾変化の解析から始める。これをDNAモチーフ解析と公開されている転写因子結合データと統合することで、エピジェネティックな変化と転写因子結合の可能な相互作用を同定する。重要な変化をとらえ、エピジェネティックおよび転写による制御に基づく遺伝子発現を予想できるようなモデルを開発する。また、我々の研究成果を公表し、同分野の研究者が利用可能なデータベースの公開を準備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、公開済みのChIP-seqデータを利用したデータ解析アルゴリズムの開発と並行して、効率的により多くのサンプルデータを取得するための条件検討に時間を費やした。平成24年度に実験データ取得を開始したが、幾つかのヒストン修飾データ取得においてS/N比不良の問題が発生した。これらの理由により当初計画に比べ実験データ取得に遅れが生じたため、RNA PolymeraseII, H3K4me3, H3K27me3, H3K4me1, H3K36me3のデータ取得は完了したが、H3K27Ac, H3K9K14acのChIP-seqおよびFAIRE-seqの計測は未完了であり、研究計画を延長して平成25年度に行うこととなった。平成25年度においては、今までに得られた解析結果に基づく検証実験を行うための費用(283,386円)、および研究成果発表のための論文出版費用(200,000円)、旅費(100,000円)を支出する計画である。
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