2011 Fiscal Year Research-status Report
代謝制御の理解に向けた試験管内代謝経路の構築と動態解析
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23710236
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎藤 菜摘 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任講師 (50287546)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | メタボローム / アロステリック制御 / フィードバック制御 |
Research Abstract |
低分子によるフィードバック制御やアロステリック制御は、酵素活性を直接的に調節して代謝を制御する機構として重要である。本研究は、試験管内(in vitro)代謝経路による代謝解析手法を確立し、未知の代謝メカニズムを明らかにするものである。今期間では、構築した試験管内代謝経路を酵素エフェクターの探索に利用することに成功した。 試験管内代謝経路は、細胞抽出液から低分子画分を取り除いた酵素画分、および対象代謝経路を駆動させるために最少の基質と補因子を混合して作成した。これまでに、解糖系、ペントースリン酸経路、TCA回路、および2つのアミノ酸合成経路の試験管内代謝経路を構築した。最初に、すでに知見があるセリン合成系のフィードバック効果によって構築した手法を評価した。試験管内セリン合成系において、セリン添加後の経路内中間体代謝物質の時系列濃度変化を解析することで、セリンが合成系の最初のステップの酵素活性を阻害することを検証できた。トレオニン合成系のフィードバック効果についても同様に検証することができた。以上の評価より、構築した試験管内代謝経路が低分子による代謝制御機構の解明に有効であることを示した。 次に、試験管内代謝経路を利用して、未知酵素エフェクターの探索を試みた。10個程度の代謝物質を含む化合物カクテルを中心炭素代謝の試験管内代謝経路に作用させ、経路内の中間体代謝物質の挙動に変動を来すエフェクター分子を探索した。この結果、イソクエン酸からTCA回路の酵素反応を介して生成したNADPHがペントースリン酸経路に作用することを見いだし、TCA回路とペントースリン酸経路の制御関係を説明することができた。NADPHのペントースリン酸経路の酵素への作用は既知であるが、この結果は試験管内代謝経路が未知酵素エフェクターの探索と代謝メカニズム解明に有効な手法であることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試験管内代謝経路の構築の際、当初計画していた精製酵素の代わりに細胞抽出物を用いた。この変更により、操作をルーチン化するとともに、多くの代謝経路や生物種に適応可能な汎用性が高いシステムを確立できた。また、構築した試験管内代謝経路の評価には酵素阻害剤を利用する計画であったが、適当な阻害剤を複数入手することが困難と判明したので、これを生体代謝物質に変更した。代謝物質自体が酵素阻害剤として機能する例が多く知られることが理由である。 以上のように当初の計画からいくつか手法を変更したが、23年度に予定していた試験管内代謝経路の構築とその反応系の確立、および24年度に予定していた応用利用としてエフェクター分子の探索を開始したので、計画はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
試験管内代謝経路の応用利用を中心に推進する。すでに開始している代謝物質からの酵素エフェクター探索をさらに複数の代謝経路を対象に行い、未知酵素エフェクター作用を発掘する。24年度では、試験管内代謝経路と細胞内の代謝応答の相互解析により試験管内経路の有効性を検証することを計画した。当初の計画どおり大腸菌を用いて行うが、細胞刺激方法として計画した薬剤利用を検討すると同時に、試験管内経路の探索で新たに代謝物質から酵素エフェクターが発見された場合、このエフェクターの代謝への作用を大腸菌細胞レベルで検証することも検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が生じた状況 年度当初の計画時よりも、研究に必要な物品等の調達を安価に行うことができたこと、および研究計画の手法に関する軽微な変更に伴い、購入予定の試薬等をより安価なもので補うことができたために次年度に使用する研究費が生じた。また、購入予定の備品のカスタマイズに期間がかかり、初年度の購入に間に合わなかった。翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画 初年度からカスタマイズ中の備品を購入する。試薬等消耗品は必要時に購入する。2012年6月にアメリカで開催予定の国際学会に本研究課題に関する内容で演題投稿したので、参加費、海外滞在費用等の使用が予定される。年度末の国内学会に参加予定なので、旅費等を使用する。本研究課題に関する論文を作成中であり、この英文校正料金として謝金等を使用する。
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[Presentation] Metabolic shifts under the stringent response in Escherichia coli2011
Author(s)
Saito, N., Nakahigashi, K., Masuda, T., Hirayama, A., Soga, T. and Tomita, M
Organizer
7th Annual International Conference of Metabolomics Society
Place of Presentation
Cairns Convention Centre (Cairns, Australia)
Year and Date
2011 – 629
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