2012 Fiscal Year Annual Research Report
代謝制御の理解に向けた試験管内代謝経路の構築と動態解析
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23710236
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎藤 菜摘 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任講師 (50287546)
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Keywords | 酵素エフェクター / メタボローム解析 / アロステリック制御 / 代謝フィードバック |
Research Abstract |
代謝フィードバックやアロステリック制御など酵素活性レベルの調節は重要な代謝調節機構の一つである。しかし、酵素活性変化に由来する代謝調節を、細胞内で同様に起こるタンパク質の量的変化と区別して解析することは難しい。本研究は、代謝調節機構をシステマティックに解析可能な手法構築を目指した。 手法は、代謝経路の機能ユニットを試験管内で構築し、その中の代謝物質動態をメタボローム解析することを基盤とした。試験管内代謝経路は、大腸菌由来の細胞抽出物、および対象代謝経路を駆動可能な最少の基質と補因子を混合して作成した。前年度までに、解糖系、ペントースリン酸経路、TCA回路、およびアミノ酸(セリン、トレオニン)合成経路を試験管内で駆動させることに成功した。また、アミノ酸合成経路の代謝フィードバックによる代謝摂動を解析し、手法の有効性評価を終えている。 最終年度では、構築した試験管内代謝経路を、酵素活性化分子や阻害分子などの代謝調節物質(酵素エフェクター)を探索・機能同定することに応用した。代謝物質標準物質を酵素エフェクター候補物質として未知酵素エフェクターの探索を行い、ヌクレオチド合成の中間体物質(5-amino-4-imidazole carboxamide ribotide ;AICAR)が大腸菌糖新生の鍵酵素(fructose-1,6-bisphosphate ;F1,6BP)を阻害することを発見した。AICARは様々な生物で細胞機能調節分子として知られるが、大腸菌の糖代謝への関与は新しい機構である。大腸菌が細胞内でAICARを蓄積するメカニズムの詳細は解明されていないが、栄養条件の変化などストレス条件下で糖の利用を切り替えるための機構であることが示唆された。 本研究で開発した手法は、酵素活性調節による代謝摂動解析や酵素エフェクター探索に有効なことが示された。
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