2012 Fiscal Year Research-status Report
新規同定されたNH細胞におけるサイトカイン産生を制御する転写ネットワークの解明
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23710238
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
BERTIN nicolas 独立行政法人理化学研究所, LSA情報基盤施設, 研究員 (30525861)
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Keywords | natural helper cell / sytokine / transcriptional network / CAGE / immune system |
Research Abstract |
慶応大学小安教授との共同研究により、1)無処置、IL-2とIL-25で活性化、IL-33で活性化したNH細胞の転写の全体像の解明と2)アレルギー性免疫反応に関わる主要なサイトカイン、IL-5とIL-13がIL-33、IL-2とIL-25によるNH細胞誘導で生成される際の転写ネットワークの解明を提案した。 流動細胞計測法で細胞選択後、無処置と刺激NH細胞からRNAを抽出し、HelicosCAGEで成功裏に配列を決定。複製された試料ごとに200~1000万CAGEタグを入手した。それをマウスゲノム上にマッピングし、5’末端が下流のRefSeq転写モデルと関連する転写開始現象を示すCAGEタグをクラスター化した。 無処置と刺激NH細胞とで異なる発現をするプロモーターを測定し、サイトカイン産生に関与する転写物を発見。また、モチーフ活性の応答解析の枠組みを用いて当該プロモーター領域内に位置する調節部位(TFBS)の包括的調査を行い、転写因子、その調節部位、それらを内部に持つプロモーター、標的転写物からなるグラフにしたことで、全体的、状態特異的な転写ネットワークの位相的性質の分析が可能になった。 本研究と並行して共同研究者が、IL-33が誘発する情報伝達増幅経路を調査し、転写因子GATA3の主要な役割を発見したため、GATA3を含む転写ネットワークに注目し、より特化した分析に焦点を絞った。当該モチーフの活性は、刺激が長引くほど増加し、GATA3は48時間以内の刺激でリン酸化するという観察結果と一致している。我々はGATA3の標的を36個発見。そのうち統計的に有意な割合がリン代謝プロセスとリン酸化反応(Csnk1g3カゼインキナーゼ、Pxn、Ptp4a3チロシンキナーゼ、Cdan1タウチューブリンキナーゼTrib、raf1発癌遺伝子)の機能的分類に関連していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
東日本大震災によりシーケンサーが停止したため、研究に必要な未処置NH細胞、IL-33で2時間または2日刺激したNH細胞、15日刺激後に採取したIL-2処置NH細胞からの新規ライブラリセットの準備とシーケンスが当初の予定よりも遅れた。しかしながら、遅れを取り戻すことができ、IL-33による未処置NH細胞の活性化に関する転写ネットワーク修正のバイオインフォマティクス分析を行い、異なる発現をするプロモーターとその発現を調節していると考えられる転写因子のセットを特定した。共同研究者、小安教授の有望な結果を踏まえ、GATA3が調節する転写物の特異的セットの分析にも大幅に時間を費やしたが、我々の確立した枠組みを活用した長距離の転写因子と標的の相互作用の分析には固有の問題があり、研究結果の発表を保証するほど強力な結論を導き出せなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に則り、我々がRavasi T, Suzuki H, et al. (2010 Cell)で開発した方法を用いてタンパク質間相互作用を統合し、当該転写因子の潜在的組合せ効果も明らかにする。 加えて、IL-33が誘発しNH細胞内のGATA3転写因子を活性化する情報伝達増幅経路に関する共同研究者小安教授の成果を踏まえ、この分析を試みる。Th2細胞に関連するナチュラルヘルパーにおけるGATA3の役割を研究した最近の論文でGang Wei et al (Immunity 2011)は未処置およびGATA3ノックダウンTh2細胞内のゲノムワイドなGATA3のChIP-SeqとRNAショットガン・データを集めていた。これは理想的な包括的データセットであり、ここからGATA3標的遺伝子を推測することができる。文献から抽出したタンパク質間相互作用の統合は、これから解明する関連性を補強するのにも役立つだろう。 我々は、過剰発現またはGATA3パートナーのノックダウンにより、標的遺伝子の発現レベルが変化する様子をモニターすることで、主要な転写相互作用を実験的に立証する計画を立てている。活性化したNH細胞によるIL-5とIL-13の産生の根底にある主要な転写ネットワークの中規模調査と実験的証明を行うため、Fluidigmのシステムを採用する予定である。このシステムの利用はOSCで最近確立したもので、我々はこの専門技術を活用し、GATA3のパートナー転写因子の過剰発現またはノックダウンが転写物の大規模集団の発現レベルに及ぼす影響を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、異なる発現をするTSSクラスターの存在を実験的に確認することで、注釈を付けていないコード転写物、非コード転写物、アンチセンス転写、その他のTSSの用途について、専用のqRT-PCRを使って、その存在を明らかにしようとしていたが、代わりに最大96個の遺伝子を同時にシーケンスできる中程度のスループットのqPCRが行えるFluidigmのシステムを採用することにした。我々はこれらの調査に必要となる、プライマーを除く消耗品のほとんどを既に購入している。しかし、最も有望な標的遺伝子の選択は、研究最終年度の最後まで終わらないため、プライマー対の購入に充てる金額を次年度に残した。 さらにFluidigmのシステムによって、GATA3のパートナー転写因子の過剰発現またはノックダウンが小規模集団の転写物の発現レベルに及ぼす影響の測定も可能になる。 最後に、残っている金額については、これらの過剰発現やノックダウンの実験に必要な消耗品の購入および出版コストに充てる予定である。
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