2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710239
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 真也 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10399694)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 応用微生物 / 核酸 / ゲノム / バイオテクノロジー / 形質転換 |
Research Abstract |
当該年度(初年度)では、GFP遺伝子を有するプラスミドを用いたモデル実験系を基盤として供与菌(大腸菌)から受容菌(枯草菌)へ水平伝播により効率良くDNAを移行させるための詳細な条件検討を行った。 供与菌(温度感受性ラムダ溶源大腸菌株)について、溶菌させる温度を検討した結果、42℃における溶菌が最も効率が良いことが判明した。また溶菌開始後1~2時間での水平伝播が最も効率の良いことが示された。これは溶菌液中に放出されたプラスミドDNAの安定性に依存する結果だと推測される。80℃~100℃(ボイル)による溶菌では、コロニーがほとんど得られず、受容菌へのDNA移行(水平伝播)効率が低いことが判明し、ラムダによる溶菌が重要であることが示された。大腸菌の菌株については当初使用したRecA+株(LE392)以外に、一般に大腸菌宿主として用いられるRecA-株についても供与菌として水平伝播に使用できることを確認した。この結果は今後一般的なDNAのクローニング技術として本技術を利用する場合、想定外の組み換え反応を防げるという意味で汎用性拡大に繋がる成果である。 一方 受容菌(枯草菌)については、最も形質転換効率が上昇するタイミングを詳細に検討した。菌株や振等速度、温度にもよるが、37℃の場合、培養開始後4~5時間でピークに達し、その後急速に低下する。安定した水平伝播を実現するため、同一条件下で大量の高効率コンピテントセルを作成、凍結保存し、水平伝播に用いる系を構築した。制限修飾系酵素欠損株RM125株を使用することで移行させるDNAの汎用性を上げることを可能にした。以上、今年度の研究により供与菌、受容菌ともに効率向上、汎用性拡大に繋がる培養条件を確立することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は既に構築されたモデル実験系を用い、クローニング技術の効率向上、汎用性を広げるための詳細な条件検討を目標にしている。結果として、供与菌を溶菌させるために最も効率の良い温度やタイミングが判明しただけでなく、一般にクローニング操作で用いるRecA-の大腸菌株でも利用できることが明らかとなった。RecA-株では相同組み換えが抑えられるため、繰り返し配列などの相同配列を含むDNA(特に巨大DNAなど)において安定して使用することが可能となる。この結果はクローニング技術として利用する上で様々なDNA配列に対応するための汎用性拡大に繋がる重要な成果だと評価できる。 また受容菌についてモデル実験系において最も効率よく自然形質転換を行える条件が判明し、安定して受容菌(枯草菌)へ水平伝播させるシステムを構築することができた。受容菌として制限修飾系酵素欠損株においても同システムが適用できることを確認した。このことから枯草菌の制限酵素切断部位(XhoIサイト)によらず様々なDNAを移動させることが可能となり、汎用性拡大に繋がる成果が上げられた。クローニング技術としては更なる改良が必要と予想されるが、それらについては次年度以降の計画で一般的なプラスミドDNA(巨大DNA:BACクローンなど)を用いた実験を行う過程で実践的な改良を試みる予定である。従って当該年度における達成度としては当初計画していた通りであり、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度(平成23年度)は予定通り、かつ効率的に研究費の使用ができた。繰越金の半分は会計上の都合で3月分の人件費の支払が4月に生じることによる。その他の当該年度で生じた繰越金については作業の効率化を踏まえ、以下に示すように今後の実践的な条件検討において使用するものとする。 初年度のモデル実験系ではDNAの水平伝播をモニターしやくするためGFP遺伝子を有するプラスミドDNAを用いていたが、今後は汎用性を広げる目的で様々なDNAを用いた実践的な水平伝播によるクローニング技術の確立を目指す。まずサイズの大きなDNAの水平伝播実験を実施する。移行させる対象として以前の研究で使用した100kb以上のサイズを有するBAC(Bacterial Artificial Chromosome)クローンなどを使用する。物理的ダメージを受けやすいDNAの精製過程を省略して、如何に簡便で効率良く受容菌へDNAを移行させることができるか検証する。また本研究を遂行するために、受容菌(枯草菌)においてマーカーのないDNAを効率良く組み込むためのセレクション法(ポジティブセレクション法の改良など)を検討する。本研究を通じて100kb以上のDNAを精製せず効率良く枯草菌へ移行させる条件を検討する。 その後(予定では25年度)、異なるプラスミドを持つ供与菌(大腸菌)を用いて、繰り返し受容菌への水平伝播を行った場合と、複数の供与菌を同時に混合した場合を比較し、受容菌へ複数の遺伝子領域 (DNA断片) を効率良くクローニングする技術を構築する。当面は初年度(平成23年度)同様に供与菌として大腸菌を、受容菌として枯草菌を使用して上述の条件検討を行い、一定の効率が得られるか検証する。本システムの更なる改良を経て、他の菌株の組み合わせによる水平伝播クローニング技術の確立もめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を遂行するにあたり、供与菌、受容菌の培養に必要な培養試薬類、培養資材類、また水平伝播に用いるプラスミドDNAの構築、改良と受容菌へDNAが水平伝播されたことを確認するため、さらにセレクション効率を改良するためなどに遺伝子工学用試薬類、遺伝子工学資材類、プライマー合成費などの消耗品費が必要と予想される。 この他、単純な試薬の調整、培地の操作、データの取りまとめを補佐する研究補佐(技術員1名)の人件費、及び情報収集、成果報告(学会発表、論文発表など)のための旅費、謝金(論文校閲料を含む)などが必要と考えている。 当該年度(平成23年度)もほぼ予定通りの研究費で予定された研究が遂行しており、次年度以降も当初の計画通りの予算で必要充分であると見込まれる。
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Research Products
(1 results)