2012 Fiscal Year Research-status Report
サンゴ-海草混合群落の形成に関与する活性物質の解明
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23710258
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
照屋 俊明 琉球大学, 教育学部, 准教授 (90375428)
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Keywords | リュウキュウスガモ / エダコモンサンゴ幼生 / カフェ酸 / 褐虫藻 |
Research Abstract |
昨年度の研究から、リュウキュウスガモ抽出物にはサンゴ幼生に対して毒性を示す化合物が含まれることが明らかとなり、各種クロマトグラフィーを用いて分離、精製を進めた結果、毒性物質としてカフェ酸を単離した。リュウキュウスガモから単離したカフェ酸は0.4 mg/mlでエダコモンサンゴ幼生に対して致死活性を示し、それより低い濃度ではエダコモンサンゴ幼生に影響を示さないことが明らかとなった。また、Acropora sp. 1 幼生を用いて同様の実験を行ったところ、カフェ酸は0.0018 mg/ml~0.18 mg/mlの濃度でA. sp. 1幼生の形態を変化させることが明らかとなった。カフェ酸はエダコモンサンゴ幼生に対して、0.4 mg/ml 以下の濃度でサンゴ幼生に対して影響を示さないのに対し、A. sp. 1幼生に対しては、その形態を変化させる作用を示すことから、異なる種のサンゴ幼生に対するカフェ酸の作用が顕著に異なることが明らかとなった。今回用いたエダコモンサンゴ幼生は褐虫藻を有し、A. sp. 1幼生は褐虫藻を持たないことから、カフェ酸の幼生に対する作用の違いは褐虫藻の有無に関係している可能性があるため、今後はさらに多くのサンゴ幼生に対してカフェ酸の影響を調べる予定である。 また、リュウキュウスガモに含まれるカフェ酸の定量を行った。備瀬海岸で定期的にリュウキュウスガモを採集し、カフェ酸を定量したところ、サンゴの産卵期である5月から9月の間はカフェ酸の含有量が少ないことが明らかとなった。さらに、カフェ酸の含有量が最も多い月と少ない月では約200倍の差があることが明らかとなった。今後は、カフェ酸がサンゴ幼生、又は他の付着生物に対してどのような影響を与えているか詳細に検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンゴ幼生とリュウキュウスガモの生物間相互作用に関与する化学物質を解明するためにはサンゴ幼生の確保が重要な課題となる。本年度の実験では、成体サンゴ飼育施設を琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設とし、その特徴を活かした飼育方法を考案することで、エダコモンサンゴ幼生と、A. sp. 1 幼生を大量に確保する事に成功した。また、得られたサンゴ幼生に対するリュウキュウスガモ抽出物の作用を調べたところ、リュウキュウスガモ抽出物にはサンゴ幼生に対する毒性物質が含まれることが明らかとなり、各種クロマトグラフィーを用いて分離、精製を進めたところ、エダコモンサンゴ幼生に対する毒性物質としてカフェ酸を単離した。カフェ酸はサンゴ幼生に対して低濃度で毒性を示すことから付着生物の付着阻害物質として機能している可能性がある。また、リュウキュウスガモが生産するカフェ酸は季節により大きく異なることが明らかとなり、サンゴの産卵期である5月から9月の間はカフェ酸の含有量が少ないという興味深い結果が得られた。今後はカフェ酸がエダコモンサンゴ幼生、A. sp. 1幼生以外のサンゴ幼生や他の付着生物の幼生に対してどのような影響があるのか調べることで、リュウキュウスガモとエダコモンサンゴ幼生の混合群落の形成について新しい知見を得る事が出来ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
リュウキュウスガモ抽出物からサンゴ幼生に対して毒性を示す化合物としてカフェ酸を単離した。エダコモンサンゴ幼生やA. sp. 1幼生に対するカフェ酸の作用を検討したところ、カフェ酸のサンゴ幼生に対する作用は、サンゴの種の違いによって、顕著に異なることが明らかとなったことから、今後は他のサンゴ幼生に対するカフェ酸の作用について検討する予定である。その際用いる生物としては、腸性ホヤ目の Phallusia nigra を用いる予定である。またエダコモンサンゴ幼生に対するカフェ酸の影響については、カフェ酸の濃度を細かく設定してエダコモンサンゴ幼生に対するカフェ酸の影響を確認していないので、本年度は大量のエダコモンサンゴ幼生を確保し、エダコモンサンゴ幼生に対する詳細な毒性について検討する予定である。また、リュウキュウスガモにはサンゴ幼生に対して毒性を示す化合物が含まれることが明らかとなっているが、今後はリュウキュウスガモ表面に付着する微生物がサンゴ幼生に対する毒性物質を生産しているか確認する予定である。方法としては、リュウキュウスガモに付着する微生物を分離、培養し、得られた微生物のアルコール抽出物がエダコモンサンゴ幼生に対してどのような影響を与えるのか検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究を遂行するためには、リュウキュウスガモと成体サンゴの採集、また瀬底研究施設を使用する必要があるので国内旅費を計上した。また、次年度はリュウキュウスガモに付着する微生物の分離、培養を検討していることから、本年度の研究費の一部を次年度に繰り越した。微生物の培養については、微生物を培養するための各種培地が必要になる。また、分離した微生物を培養するために振とう培養器が必要なので今年度導入する。培養した微生物が生産する活性物質については、各種クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを用いて分離・精製を行うが、その際クロマト用担体および充填剤、有機溶媒を必要とする。活性物質の構造解析はNMR,MSなどを用いて決定する。構造決定の際は特にNMRが不可欠であるが、サンプル量が微量であることが予想されるため高純度の重水素化溶媒が必要である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Effects of veraguensin and galgravin on osteoclast differentiation and function2012
Author(s)
Asai, M.; Lee, J-W.; Itakura, Y.; Choi, B-K.; Yonezawa, T.; Teruya, T.; Cha, B-Y.; Ohnishi, M.; Yamaguchi, A.; Woo, J-T.
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Journal Title
Cytotechnology
Volume: 64
Pages: 315-322
Peer Reviewed
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[Journal Article] Biselyngbyaside, isolated from marine cyanobacteria, inhibits osteoclastogenesis and induces apoptosis in mature osteoclasts2012
Author(s)
Yonezawa, T.; Mase, N.; Sasaki, H.; Teruya, T.; Hasegawa, S-. Cha, B-Y. Yagasaki, K. Suenaga, K. Nagai, K. Woo, J-T.
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Journal Title
Journal of Cellular Biochemistry
Volume: 113
Pages: 440-448
Peer Reviewed
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